小学校英語をどうやって教える? ~科学的に考えた効果的な教え方~  第3回【どうやって小学生に英語を教えれば効果的なのか? その2】

 第3回目は「どうやって小学生に英語を教えれば効果的なのか? その2」です。
前回は言語を習得するための大原則が「インプット(聞く、読む)」であるという話でしたが、今回はその次に必要なものについてです。
 インプットだけでは不十分で、インプットの次に必要なものとは・・・ずばり「アウトプット(話す、書く)」です!!!
 
 実は第二言語習得の世界で「インプット仮説(インプットさえしていれば言語が習得されるという仮説)」が有力な時期があったのですが、インプットだけしている生徒たちが聞いて理解しているけれども、いつまでたっても話せない、というケースが多々出てきたのです。

 そこでアウトプットの重要性が重視されるようになったのですが、ここでポイントとなるのが、「大量のインプットと少量のアウトプット」です。インプットが足りない時期に無理やりアウトプットさせると変な言語の形が身についてしまうという危険性があるからです。「まずはインプットを大量に受けてから、アウトプットする」のが大切です。

 テニスに例えると、インプットとしてはたくさん試合を見ていた状態、アウトプットでいよいよラケットを持って実際にボールを打っていく練習するといった感じです。語学はどちらかというとスポーツに近く、まずは実際にボールを打つ=話す、書く練習をしていかなければ上達はしていきません。

 では、アウトプットとは具体的にどんな活動を指すのでしょうか。注意したいのが、音読やリーディングはアウトプットではないということです。音読やリーディングは音声化の練習です。アウトプットとは、「自分が言いたいことを言語表現すること」です。
 
 具体的には独り言、日記、会話が一番手軽に練習できるアウトプットになります。ですが、小学生段階では「書く」というのはハードルが高いので、「話す」ということに重点をおくべきでしょう。(インプットも「読む」のは「聞いて」からの次の段階です。絵本などをたくさん読み聞かせしてあげると効果的です。)

 例えば小学三年生の教科書「Let’s Try!」のWhat do you like?の単元だと以下のような授業の流れが考えられます。
 ①先生の好きなマンガのキャラクター3つについて視覚教材を利用しながら説明する。(インプット)
 ②先生の好きな3つのキャラクターが好きな人はいるかクラス全体に質問し、挙手して答えてもらう。(インプット)
 ③「What do you like?」「I like~.」のフォーマットを練習してから、マンガのキャラクターが5つ書かれた表を生徒に配り、好きかどうかを隣同士でインタビューさせる。(アウトプット)
 ④自分の好きなキャラクターについてクラスで発表する。(アウトプット)

 言語習得には繰り返しが大切ですので、その次の授業では先生の好きなもの、友達の好きなものについて覚えているか英語で確認するなどするといいと思います。

 そしてアウトプットする時にもう一つポイントとなるのが、「自分が言いたい、知りたい」ことを英語で伝えあうことです。わかりきったことが内容では記憶に残りません。このための教材づくりがなかなか大変なのですが、(生徒の英語レベルと興味関心に見合ったものを用意しないといけません。)私も試行錯誤しながら努力する毎日です。

 まとめると、言語習得のカギは「大量のインプット→少量のアウトプット」です。
 小学校段階でのインプットは①興味のある内容で ②8割程度は理解できる内容で ③明示的知識ではなく暗示的知識が蓄積できるように教えること。
 アウトプットは「自分が言いたい、知りたいこと」を英語で伝えあうことが大切です。

 この記事は白井泰弘さんの「英語はもっと科学的に学習しよう」(中経出版)、「外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か」(岩波新書)を参考文献とさせていただきました。第二言語習得の理論に基づいた英語学習についてもっと知りたい方にはおすすめの本です。

 ここまで読んで下さりありがとうございました!次回は小学生には少しハードルの高い、英語で「読む、書く」にどうアプローチするか、ということについて書いてみたいと思います。

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