あきらめゆび


ゆかりなき位牌に柑橘系爆弾の気配あり 齧ってみる


夜を火で埋め尽くしたい月光の息の根すらも愛と呼びたい


花束を抱えて乗りしこの人が墓石の化身であれば、うれしい


自販機で炭酸水を買うときの指先だけの砂漠 さびしい


水槽に漂っている観賞用植物状態詩集 静かだ


幾何学的美しさなき蜘蛛の巣に紋白蝶をくっつける ほら


鯉のぼり空いっせいに覆い尽くしそれぞれがゆっくりと落ちゆく


拠り所なき人の胸に降る明らかに間違った優しさ 雪


妹は巻きつけられた爆弾をあきらめゆびで静かに撫でた


アスファルトを水で犯したもう戻れないところから海が見たかった

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