別に海でもいいと思った


臓物を引きずり出せばちるちると空っぽたちがchill outする


涅槃ってこんな感じか美術館だったがらんどうの避難所でひとり


あゝすずめちーさきものよ汝らの罪はクーポン対象ならず


丹念に生地から現実感を抜く ふわふわのパンケーキのために


誰にでも祈りのための違和感が歯や舌先に埋め込まれてる


この国の言葉ばかりでお話を聞かせてひとつの嘘もつかずに


心地よい声と音声学的に正しい所作で、クチナシ、と言う


人間の上の方から落ちてくる小さい海にくらげを溶かす


骨という意味がくずれて砂になりさらさらという音だけでうれしい


とりあえず受け入れてみる夜もある おやすみなさい、湯呑み茶碗さん


バケモノが夜道を急ぐ明日から人間になるなれるなりたい


人体の骨の数だけ愛がある まだこそばゆい限りある愛


急に振り返って走った先にもう誰にも届かない風船


ねむるようにゆっくり閉じる団地の、中庭の、幼き子の声の


立つべきは鴨川の亀の飛び石 そこで見える全ては賛美歌


くだものをよく食べている人でした もう果実すら記憶のようで


橋よりも横断歩道を渡るとき小さく意識する、向こう側


どうしてもぷらすちっくがかたかなでいえないひとが散布するガス


もうすぐでここにも雪が降るだろう小指の爪が剥がれるように


遠いねえ 窓の外には幾億のページがあってどれも読めない


ディストーション仔猫魔法が鳴く声でクリーン(きれいな)さよならごっこ


降るのなら降れよ雨雪信号機避難速報あとは猫とか


完全に無防備マルボロ空の箱カーテンのない部屋みだれ髪


心臓や脳を害する可視光線夕方五時に人とかに降る


システムのように食するシリアルが甘いおいしい投げ出したくない


歩きつつコーヒーを飲む この街はただ居るためだけの場所がない


水平線の写真の中に紛れ込み異物としてしか生きていけない


結果的に孤独であればいつだって橋の下にも光が差すし


祈りとかみんな忘れる梅かをる春がくるってちょっと怖いね


ハニーハニーはちみつだって赤子には毒だし歌もそうってだけさ


今はまだ割れていないというだけのマグカップから朝を始める


古紙として結ばれた全ての活字が安堵の歌で雨を喜ぶ


電車から見える景色が明らかに夏だ だってアニメみたいだ


ありがちな廃墟の中でひゃくまんかい生きたねこの一部を担う


見えている水路より先は知らないし別に海でもいいと思った


対岸で煙草を吸いし老人が聖者だったらどうしようかな


宗教の施設の掲示板で見たシチューのレシピも祈りだろうか


領域を持たぬがゆえに無限国家 このパンあんまりおいしくないね


散弾銃構えないでね 引き算の美学はきっと正しいだろう


このような言葉で愛を語りたい あかるいままのねむった団欒


天才が海を広げるあいだにも男はゆっくり食器を洗う


バケモノが布団でねむる寝ぼけてる真善美とパン間違えて食む


金魚鉢で満月を飼う 丁寧に世話をしてれば増えたりもする


緑茶からルイボスティーに変えました カフェイン、君はいらない子だね


犬の尾の振れ幅のなかに完璧な休日があり、ほわあん、と鳴く


戦災で現存しない油絵か そういうこともたまにあるよね


争いと無縁の部屋でつるつるとうどんを食べて鐘が鳴るなり


役割を忘れた臓物のように雨の日には部屋で本を読む


夜桜の骨の部分を飲み込んだ女がとなりで大いにねむる


そして祈り足りない人たちは去り終わりは終わりじゃあさようなら

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