見出し画像

【第4回】匠大塚会長が“父娘げんか”を経て語る「事業承継ここを誤った」 を読んで

~大塚家具創業の地から徒歩3分に住むMBAデザイナーnakayanさんが読み解く~

2018年1月10日公開:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ
https://ameblo.jp/naka-yan/entry-12343335014.html


▼2018年1月9日付 ダイヤモンド・オンライン掲載記事

(以下記事内一部転載)
大塚家具を創業、かつて「家具業界の風雲児」と呼ばれた大塚勝久氏。創業者である父と長女の経営権をめぐる争いは記憶に新しいが、大塚家具を去った2015年に新会社「匠大塚」を立ち上げ、70歳を過ぎての「第2の創業」に挑んでいる。その大塚勝久氏が、第2の創業に掛ける意気込みと、多くの同族経営企業が抱える事業承継の難しさについて、自身の経験を踏まえて語った。

私が「大塚家具」から身を退いて2年半、「匠大塚」東京日本橋(2016年4月)、春日部本店(2016年6月)の開業で家具小売業に復帰して1年半たった。匠大塚は、70を過ぎての第2創業であり、私がこれまで家具の小売業界で学び、培ってきた経営の集大成となるものだ。私を慕って大塚家具から匠大塚に移ってきてくれた社員たちのためにも絶対に成功させなければならないプロジェクトである。…

大塚家具の事業承継に関しては、「カリスマ経営者の後を継ぐ事業承継は、カリスマがカリスマであればあるほど難しいものであり、それは親子でも難しさが変わらない」と解釈した方が懸命ではないでしょうか。 

勝久匠大塚会長が記事内で仰っている「将来的には大塚家が大塚家具の経営から身を退き、いわゆる「資本と経営の分離」の体制をつくることが望ましいと考えていた」というお考えは正しいかったと私は考えますが、「将来的」を具体的な数値にしなかったことがその後の問題を大きくしてしまった1つ目の誤りだったのではないでしょうか。いついつまでに「資本と経営の分離」の体制をつくるのだということを、数値として明確化することは、親族のみならず社員や取引先、或いは株主というステークホルダーたちに将来のビジョンを示すことと同じであり、経営者としての重要な任務のひとつであると言えます。 

2つ目の誤りは、ご自身も仰っている親族保有の株式を5分割してしまったことではないでしょうか。その後の、大塚家具のお家騒動を招く要因になっただけではなく、仮に「資本と経営の分離」の体制をつくれたとしても、後継者の経営を困難にしてしまう要因になり得ます。 仮に、創業家以外の人間が大塚家具の経営を引き継いた際は、市場を経由した株主以外に経営側の意思決定に大きな影響を持つ創業家が存在することとなり、異なる意思を持つ創業家の5人からの承諾を得なければいけなくなります。市場変化の激しい時代においてはスピードある経営の意思決定が必要になりますが、経営の監査役のはずの資本が経営の足を引っ張る形になってしまいます。むしろ、市場を経由した株主が多くいてくれた方が、市場のニーズと変化のスピードにマッチした経営が可能になるとも言えます。 

「資本と経営の分離体制の構築」ということに関しては、ファストリの柳井正さんも、以前から同様のことを仰っています。数年前にソフトバンクアカデミアでの孫さんとの対談の際に伺ったお話では、柳井さんには2人の息子さんがおり、どちらもとても優秀で経営を引き継ぐ力は十分にあるそうです。 しかし、2人の息子さんには資産管理会社の方を任せ、ファストリの経営が正常に行われるように外部からの視点を持つ監視役としての役割を担ってもらうのだと、仰っていました。現状においては、ファストリの後継者が明確化されておらず、引き継ぎも完了していませんので、柳井さんの選択が正しいか否かという答えは出ていません。答えが出るのはこれからです。


ここから先は

1,321字
この記事のみ ¥ 100

頂いたサポートは、書籍化に向けての応援メッセージとして受け取らせていただき、準備資金等に使用させていただきます。