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体の痛み心の傷②

警察署に着くと
私服の刑事がやって来た

ジムの帰り?と思う程にカジュアルな服装
刑事とはトレンチコートを着て襟を立てると相場が決まってるんだと思っている太陽にほえろ世代。

取り調べ室と言ったらカツ丼。とマジカルバナナのテンポで脳みそが勝手にカツ丼を思い浮かべる
いや、あれは犯人に自供させるためのアイテム
カツ丼だけで素直に自供するとは思えないけども
丼ものの中では群を抜いて美味い。現実問題
カツ丼ってほんとに注文出来るのだろうか?
そんなあれやこれやと脳内で勝手に喋り出す。
せっかくならこの状況を楽しんでしまえ。
そんな心持ちだったのだ。あの時は

写真撮らせて下さいね。殴られた右目フラッシュが沁みる。
一体何枚撮られるのだろうか?

現場でも相当な枚数撮ったと思う。
女性警察官に、これって加工してもらえますかね?せめて、シワとか、シミとか消して欲しいんだけど。
ははは。加工アプリは何を使ってるんですか?
数十分前の会話を思い出したりしていた。

これからどんな流れになるのか?と思っていた所に
数人の警察官が集まって来た。何やら段取りを決めてる模様。

すみません。もう一度現場へ戻って実況見分します。

えっーーー!!!
なんであの時やらなかったの?二度手間じゃん!とは言えるはずもなく
はいはい。わかりました。事件現場へ戻った

ここに加害者が座っていて
私はここに座っていて
と、指差した私と共に写真撮影が始まる

こんなにも写真を撮られることは初めての体験だ
あのぉー加工して,,,と言いかけそうになるが
そんなつまらない事を言う必要があるのか?と自分を戒めた。やめておけ。

そしてまた警察署へ

こちらへどうぞ。と8畳程の部屋に通された
部屋にはキャスター付きの座り心地の良さそうな椅子と、パイプ椅子が机を挟んで向かいあって用意されている

最低でも2時間かかるのなら座り心地の良さを重視
迷わずキャスター付きの椅子に腰掛けた。

(言うても、この時点で実況見分にて既に1時間は経過してる)

ああああ。そこは僕が座るのでそちらへお願いします。と、どこからともなく制服を着た警察官が現れパイプ椅子を指差した

えっ?この椅子????
長時間となるとお尻が爆発しそうなんだが。

ちなみになんですけど
加害者も同じ部屋で同じ椅子に座るんですか?

は?あっ。そうですね。

なんで被害者の私が同じ扱いなのかとピリッとする。なんなら応接室のソファーくらいの椅子が用意されてるんじゃ?と思っていた自分が恥ずかしい。

警察官と対面し、自己紹介
僕、供述調書慣れてなくって
出来る人は2時間程で終わらせられるんですけど、時間がかかると思うんです。でも出来る限り頑張りますから。と調書の見本の様な分厚いファイルを見ながら自信なさげに話し出す。

ここから1時間で終わる事を期待したけれど
無理な様だ。

しかし、この自信無さげの警察官になんとか自信を持って欲しい思いも湧いて来た。

初めから上手く出来る人なんていないですよね
これって場数だと思うので。

(って,励ましてる場合かっ!)

励まさずにはいられない警察官のお陰でほろっと緩んだのも事実。

何人もの警察官と刑事に同じ事を話しただろうか
テーブルを挟んでその時の状況を録音したかの様に話す。

そーすると
加害者は〇〇の〇〇の〇〇の〜で良いですか?

『の』が多すぎるので、そこの部分は
加害者は〇〇の〇〇に〇〇していた。だと読んだ人が想像しやすいと思うのですがどーでしょ?

確かに、そうですね。勉強になります!

(なんで?文章の指南してるんだよっ)と己に突っ込まずにはいられない。

こうなると、友達達と飲みに行き、先に酔っ払った友達を見て酔えなくなるのと同じ構図だ。私がしっかりとしなきゃ。そんな気持ちになる

ぶつぶつと加害者が何か言ってたんですね?
いや、ぶつぶつと怒鳴っていた。全くイメージ変わりませんか?
支離滅裂な事を怒鳴り散らかしてたんです。
そこ直して下さい。

ああ。すまません。書き直します。

どれだけ時間がかかったのか分からないが既にお尻と喉が限界だ。

あの。何か飲みたいんですが良いですか?
あっ。喉乾きましたよね?部屋を出て右手に曲がって行くと左に自販機があります。

買って来るので、ここまで話した事書き上げて置いて下さいね。

あの、そう言う訳にはいかなくって,僕も一緒に同行しなければならない規則なんです。

嘘でしょ?逃げませんよ?私

ほんとすみません。わかってますけど
一緒に行きます。

あーもー!
小走りで買いに行く。席で飲もうとした時
あのー。ここでは飲食禁止なんです。なので廊下で飲んで貰えますか?

嘘でしょ?
規則なんです。

グビグビと飲み干してまた席に戻り調書を再開。

何だか被害者のつもりでいたけれど
扱いがなんか悲しい。

こんな感じでかかった時間はご、ご、、5時間っ!

W杯で本田圭佑氏が解説中に思わず言い放った
アディショナルタイムが7分だった時の
なっなっふぅん???に匹敵するくらいのテンション

被害届け、供述調書に母印を押すのだが
右手の人差し指に朱肉?いや黒いインクを付けて
押した。
ああああああああ!!右手じゃなくて
左手の人差し指なんですぅ!
ええええええ!
もう一度やり直しますけど、しますけど
何で右手じゃダメなんですか?
素朴な質問ですけど。

あの。すみません。僕にも分からないんです。

コントよろしく椅子から転げ落ちそうになった

やっと終焉に向かう。

出来上がりました!!
けど,大丈夫かな。なんか忘れてないかな。
と、何度も見直している警察官
一つでも忘れてたらまたこちらへ来てもらう事になっちゃうんで、、

わかった!もし何か抜かりがあったなら
また来ますから。ええ、来ます!
なので、帰らせて下さい!!笑笑

ですよね。お疲れですよね。すみません。
下までお送りします。

エレベーターに乗り込む

ほんと、僕、ポンコツでこんなに時間かかってしまってすみませんでした。と謝る警察官

警察官の口から『僕、ポンコツなんで』と聞く事になるとはビックリだ。

初めにも言ったけれど
最初から上手く書ける人なんて居ないでしょ?
こなして行くしかない。それの積み重ねだと思うのよ。
そして、私もこんな事がなかったら知り得なかった事ばかりです。勉強になりました。と頭を下げた。
僕も勉強になりました。ありがとうございます
と、警察署を後にする。

5時間かかったけれど、対応してくれた警察官には
有難い気持ちになった。警察官と対面で話をするって緊張する場面だけど
ポンコツ。とか言っちゃう人だったけれど、それもなんか楽しかった

ここから3時間かけて家に帰る。
大きく深呼吸した。疲れた。まじで疲れた。
痛みと、はれぼったい右目を触りつつ
乗り継ぐ電車に揺られ、一時でも早く家に帰りたかったのでここは特急に乗る事にした座れるし人混みも避けれる。

指定席を取り自分の座席に座った
そこへ身長の高い男性が近寄って来て
私の前の席に座った。

続く























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