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#24 お礼奉公で苦しまないための奨学金の選び方

 学生のときもらっていた奨学金が、就職後の足かせになってしまっていることも多いです。

 今回は、看護師を目指す学生が手にできる奨学金についてと、その選ぶポイントについてまとめました。

1.看護学生と奨学金

 看護師を目指す学生を対象にした特殊な奨学金があります。

 それは、看護師を必要とする病院・施設・団体などが、人材確保のために、学生に貸与する奨学金です。

 看護学生が病院などから奨学金をもらい、お礼奉公でその施設で数年働くことで返済は不要という制度は昔からあります。これは、金銭的な援助が必要な学生にとっては、とても助けになりますし、就職先が自分に合っていれば、とてもお得な制度です。

 しかし現実は、学生時代、助けてもらっていたはずの奨学金が、いざその施設に就職したら、足かせになってしまう可能性がります。

 足かせとは、まず、その施設がブラックだったり、自分のやりたいことと、そこでの業務内容が違うため、退職したいと思うことから始まります。そして、退職したい旨を伝えたところ、残金を一括で返済するよう上司に言われ、一括返済が困難なので辞められないということが少なからずあります。

 そのようにならないよう、奨学金選びは慎重に行いましょう。

2.奨学金について

 種類
  ・施設(医療・介護など全般)独自のもの (以下、施設奨学金)
  ・各都道府県・市町村の「看護師等修学資金貸与事業」 
   (以下、自治体の奨学金)
  ・日本看護協会の奨学金、各県の看護協会の奨学金
  ・日本学生支援機構(JASSO)の奨学金

 上記2つが、主に一般的な看護学生が対象になる奨学金になりますので、これらについてお伝えしていきます。

 日本看護協会、各県の看護協会の奨学金は、対象や、受給期間が限定されていたりします。
 日本学生支援機構は、看護以外の学生も含めた奨学金となっています。
この2種類に興味がある方は、各団体のホームページを参照してください。

3.奨学金の選び方

 施設・自治体のどれを選ぶのか、施設の場合は何を考慮したらいいかをお伝えします。

 ⅰ.各奨学金の特徴

金額・返済期間
 どちらも、施設・自治体によって貸与額やお礼奉公の年数が異なります。

 一般的に、自治体の方が低額です。自治体の場合、金額は数千円〜数万円、施設によっては数万円〜多いところでは十数万円のところもあるようです。

就職先
 両者の奨学金の大きな違いは、就職先の選択肢の数になります。

 施設の奨学金は、就職先はその施設(団体だったらその系列)一択です。それ以外の選択肢はありません。

 自治体の場合、その自治体で指定された施設の就職が可能です。基本的にその自治体に施設がひとつしかないということは稀だと思いますので、就職先の選択の幅が広がります。

 *自治体によって、種類や金額が異なります。詳細は各自治体のホームページを参考にしてください。

 ⅱ.選択の注意点

 絶対に貸与額の高さだけで決めてはいけません‼︎

免許取得後に始めた働く職場が、あなたの看護師人生のベースになります。ですから、慎重に選択しましょう。

施設奨学金の場合
 必ず、その施設の特徴をしっかり確認してから決めることが必要です。

 看護師免許取得後、あなたは数年間、そこで働くことが前提になります。

 「就職が約束されている」というと聞こえはいいですが、「簡単には辞められない状況になる」ことを意味していることを覚えておきましょう。

 後悔しない選択をするために、目先のお金に囚われてはいけません。この奨学金は、事前にあなたに支払われる身代金のようなものです。
 考えてみてください。人気のある施設だったら、応募してくる看護師はたくさんいて、まだ看護師になっていない学生に高額の投資をするでしょうか。もちろん全てがそうではありませんが、うまい話には何かしらの意図が隠れていることも多い、ということを忘れてはいけません。

自治体奨学金の場合
 種類が多いので、必ず、各種条件などを確認しましょう。

 その自治体が指定している施設ならどこでもOKとしているものから、各公立病院指定のものまであり、金額も異なったりします。
 また、無利子・有利子など、奨学金の幅が広いので、いざ就職する段階になって、こんなはずではなかった…とならないよう、きちんと調べましょう。

 施設奨学金とは異なり、就職を約束されているものではありません。就職試験で落ちる可能性もあります。落ちたら、返済義務が生じます。

4.奨学金の選び方

 あなたが、どんな看護師になりたいか、以下のチェックポイントを参考にをしっかり考えて選択しましょう。

 ・どんなことができる看護師になりたいか
 ・いくらくらいの奨学金が必要なのか
 ・どの地域で働きたいか

 それぞれについて、説明していきます。

 ⅰ.どんなことができる看護師になりたいか

 これは、施設の選択のための重要な質問になります。

 病院は医療施設なので、いろんな医療行為を習得します。施設は、入居者の生活の場なので、そこに付随した介助や処置をすることになります。
 病院を選んだ場合、施設によって、急性期〜慢性期と異なります。

 それぞれ習得する知識・技術・仕事に対する考え方が異なります。あなたが習得したいことが何かをしっかり考えましょう。

 ⅱ.いくらくらいの奨学金が必要なのか

 金額に釣られて決めると、失敗する可能性が高いことはすでにお伝えしています。

 学費の足しにする、生活費の足しにする、お小遣いにする、貯金しておく…。目的は色々あると思います。

 どのくらいの額が欲しいですか?本当に必要な額を考えてみましょう。

 経済的に必要な場合は、「4−ⅱ.施設奨学金の施設選び」を参照にしてください。

  *経済的窮地を救うひとつの案

 学費が安い国公立大学の大学・短大・専門学校を選ぶということです。 最近は大学化が進んできています。大学じゃないとイヤということでなければ、国公立の専門学校をお勧めします。

 その理由として、圧倒的に学費が少ないことです。また、その自治体の看護師保持のための教育機関ですので、教育もそこそこしっかりしています。入寮などできるところもあります。

 私の通った地方の公立看護学校は、入学時30万弱(教科書代・実習着・各種検査等)と、年間20万円弱(年2回の支払いでしたが、月額17,000円程度)でしたが、看護師国家試験の合格率はほぼ98〜100%(時々1人不合格者が出るかどうか)でした。
 普通にバイトするだけでも、月数万円は稼げますので、入学金は大きな額が動きますが、その後は自分でも支払うことも可能でした。

 ⅲ.どの地域で働きたいか

 数年過ごすことになるので、慎重に選びましょう。

 注意していただきたいのは、よく知らないけど憧れの土地だからとか、恋人がいるから、といった理由で自治体を選択する場合は、一度立ち止まって考えましょう。
 住んでみたら、その土地が肌に合わないとか、恋人と別れるといった可能性を考慮しましょう。
 たとえその状況になったとしても、新天地で絶対に頑張るという意気込みなら問題はないでしょう。

5.施設奨学金の施設選び

*注意
 あなたが奨学金を申し込んだタイミングと、就職をするタイミングでは、施設を取り巻く環境が大きく変わっている可能性もあります。
 その可能性があるということを念頭に置いておいて選んでください。

 もしあなたが、「絶対にここで働きたい!」と思う施設の募集があればそこを選択すればいいですが、そうではない場合は、以下のポイントを選択の参考に検討しましょう。

 ・異常に高額ではないか
 ・その施設と、そこの看護部について情報を集める
 ・ネットで、評判を確かめる 

 ⅰ.異常に高額ではないか

 これは、先にも伝えしたように、人気のあるところには人が集まります。相場より高額な奨学金を提示しているところは、それだけ人員確保が難しい可能性が大きいです。
 業務がとてもハード、人間関係がよくない、極端に田舎で周囲に何もないなど、理由はさまざまです。
 なぜ、そんなに高額なのかを疑ってみましょう。

 ⅱ.その施設と、そこの看護部について情報を集める

 インターネットでホームページを見てみましょう。

施設について
 施設の規模、看護師の募集要項は必ずチェックしましょう。

 なぜ規模のチェックが必要かというと、いくつか逃げ場を持っていた方がいいからです。
 つまり、施設内で異動ができたり、法人のグループ施設内での異動が可能だったりした方が、働ける期間が長くなり、お礼奉公の期間が稼げるということです。

 たとえば、あなたがお礼奉公先で配属になった部署に、ものすごく意地悪な人がいたり、業務がハードすぎて無理…となったとします。その部署しかない場合、あなたは、耐え忍ぶ、心身を病む、退職する、のどれかしか選択肢はありません。
 しかし、たくさん病棟があるとか、グループ内で異動が可能であれば、状況は違います。同じ施設内でも、雰囲気の良し悪しは、部署によってだいぶ変わるからです。部署が変わって、そこがしっくりこれば、あなたは辞める必要がない、つまり、返済する必要もなくなるのです。

 また、募集要項などで、就職後の収入や待遇を確認しましょう。施設によっていろいろ異なります。

看護部について
 あなたの初めての職場が、あなたの看護師人生を決定づけます。しっかり教育してくれるところを選んだ方が、看護師としては潰しがきくようになります。

 その施設で、看護部がどの程度アピールされているかで、その施設での看護部の立ち位置、教育体制の力の入れ具合などがわかります。

 ある程度の規模の病院でしたら、看護部についてのページが設置されていることがほとんどですが、小規模ですと、ホームページにあまり力を割いていないところがあります。

 卒後教育、離職率、看護部自体の活動内容などが活発にあるかどうかもポイントになります。
 たとえば、認定看護師などがいる病院でしたら、そのような教育にも力を入れているとも考えられます。

 ⅲ.ネットで評判を確かめる

 施設自体の評判と、職場の人間関係の評判の2点を確かめましょう。

 施設の評判は、利用者の口コミサイトを参考にしましょう。職場の人間関係に関しては、「〇〇病院 人間関係」で検索すると、看護系の就職サイト系の情報が出てきます。登録しないと全文は見られませんが、未登録でも見られる一部分でも、参考にはなると思います。

 参考にするときの注意点として、以下の3点をあげておきます。

 ・いつの評価か確認すること
 ・施設の評判と人間関係の評判が必ずしも比例するとは限らないこと
 ・看護系の口コミサイトの悪口は、鵜呑みにしすぎないこと

 近年、各施設を取り巻く環境は大きく変わってきています。よほどの大手でなければ、内部の状態が短期間に大きく変わります。数年前と今の状況は大きく異なりますので、何年の記載なのか確認しましょう。 
 また、看護系の口コミサイトは、退職者が記載しており、時には必要以上に感情的な表現になっていて、客観性に欠ける事もありますので、あくまで参考程度に留めておいてください。

6.奨学金の使い方

 経済的な理由でもらう場合は、もちろん、生活や学費のために使用することになると思いますが、そうでない場合、「一応貰っておいて、使わないで貯めておく」という手もあります。
 貯めておくことで、もし施設が合わなかったとき、一括返済で退職ができますし、その職場でお礼奉公がすんだら、丸々あなたのものになり、心置きなく、あなたの好きなように使えます。 

 一例としてお話ししますと、私の場合、県と市から奨学金をもらっていました。確か、3万円と5千円位(記憶が曖昧ですが)を3年間もらい、120万円くらいになりました。先にも書いたように、学費は低額で親が払ってくれていたのと、実家暮らしでバイトをしていたので、自由になるお金も十分ありました。
 そのため、退職するまでの丸4年間一切使用せず、退職後、そのお金で留学をしました。

7.あなたの看護師人生の糧になる奨学金を選びましょう

 何度も言いますが、「額」に踊らされてはいけません。

 職場によって、待遇や教育体制は大きく変わります。

 あなたの看護師としての考え方を培う、貴重な初めの数年間が、あなたの目指す看護師像に向かっていけるような奨学金制度を選択していってください。

 

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