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おせっかいかもしれないと思いつつ、おせっかいを置いていこうと思う。

私のコルクラボ文化祭の思い出は、小さな宣伝マンにもらったやさしさと、考える、行動するを楽しむ姿だった。

小さな宣伝マン(以下、彼)とは、私はコルクラボ文化祭の喫茶部の出店場所で初めて出会った。

彼は、お客さんに珈琲や紅茶を運ぶ手伝いに来てくれたのだけど、お客さんがちょっと途切れると、「もっと宣伝したほうがいいよ!紙ちょうだい!」と言って、自分で宣伝文を考えて、彼の字で書き上げたチラシを手に飛び出していった。

そして、しばらくして「お客さん来た!?」と聞きながら戻った彼に、まだあまり来ていないんだ、と告げると、喫茶部がある部屋にいた大人たちに声をかけ始めた。

彼の声に応えて、お客さんが注文しに来てくれた。

珈琲も紅茶も注文を貰ってから一杯ずつ淹れていたので、お渡しできるまでは少し時間がかかる。そのまま、珈琲を淹れるところを見ていかれる方もいれば、他の出店を見に行っている方もいる。

彼は、淹れたての珈琲や紅茶のカップに蓋がされると、しっかりと手に持って、注文してくれた人を探しに行く。「オレ、顔覚えてるよ!」と言って、たくさんの大人たちの中から見つけて、ちょっと照れくさそうに手渡している姿が、とてもかわいくて、とてもかっこよかった。

午後、一番慌ただしい時間に、私はちょっとヘマをして、やけどをしてしまった。たいしたことはないと思っていたのだけど、意外と痛い。
ちゃんと冷やさなければと思いつつ、お客さんが並んでいると気になってしまう性分が発揮される。

そんな時、彼がふと「ミルクティーが飲みたいから、牛乳買ってくる!」と言うので、私は「氷を買ってきてほしい」と頼んだ。彼は、私が欲しいものを丁寧に確認してくれた。

その時私は、彼は近くのコンビニの場所を知っているのだと思っていた。

しかし、彼は、近くのコンビニの場所を知らず、文化祭の会場にいた大人に聞きコンビニへ行き、氷が溶けないように、走って帰って来てくれた。「喫茶部のためにーーーー!」と言いながら、走ってくれていたと後で知った。

彼は氷をたくさん買ってきてくれた。重いし冷たい上に、思いのほか距離のある場所から走らせてしまって申し訳ないと思いつつ、本当にありがたかった。
お客さんの対応をしながらも、やけどを冷やすことができて本当に助かった。

おまけに、彼が買ってきてくれた氷でアイスコーヒーも作れたし、ミルクティーも作れた。そして、新たなメニューも、彼は宣伝してくれた。

「ミルクティーが出来るって、小さな男の子に聞いたんだけど」
「アイスコーヒーあるよって、教えてもらったんだけど」
彼の声に応えてくれる人が、買いにきてくれた。

子供が頑張っているから、という理由で買ってくれる人もいるだろう、という考えもできる。
でも私は、そんな「子供だから」という飾りなんて必要ない一日だったと思っている。
彼は、文化祭を、喫茶部を楽しんでいた。
初めての経験を楽しんで、自分で考えて工夫することで、さらに楽しんでいた。

私のコルクラボ文化祭は喫茶部の中だけで過ぎていった。
トークショーも展示も見ることはなく、文化祭は終わった。
だから、文化祭の雰囲気もよくわからないままだったし、楽しかったー!と言うより、終わったな~、という感覚が強かった。

そんな中、彼の母であるとっちーがこんなnoteを書いてくれた。

そうか。彼は楽しい時間を過ごしてくれていたのか、と思うと、とても嬉しくなった。
文化祭楽しかったねっ! とテンション高めの会話はできそうになくてちょっと困っていたけれど、あぁよかったなぁと、心がのびていった。

私は、文化祭で出会うまで、とっちーのnoteでしか彼に会ったことがなかった。
初めましての状況で、私も喫茶部も彼も初めての文化祭という状況でうまくやれるのかちょっと心配だった。でも、そんな心配はすぐに消えていた。
うまくやろうというより、「楽しもう」でよかったんだね。

しかし、改めて思うけど、私が彼と同い年の頃、たくさんの大人がいる場所で、自分の意思を持って行動することなどなかったし、自分で考えて、動くという経験はおそらくないに等しかったんじゃないかな。あの日の彼の行動は、思い出しても、かっこよい。

コルクラボ文化祭のテーマは「好きのおすそ分け、どうぞ。」だった。
私は、彼に「楽しむこと」をおすそ分けしてもらった。
私は、何かおすそ分けできただろうか?と、ふと思い、このnoteを書くことにした。
彼がいたから、私に文化祭の思い出ができたことを、記しておきたくなった。

そして、もしかしたら、ほんの少し、ほんのほんの少しだけかもしれないけど、彼が感じているものを、私もこどもの頃に感じていたように思う。

私がそれに押しつぶされないで、今ここまでこれたのは、私を支えた好きがあったから、わたしの出会いを、そっとおすそ分けしておこうと思った。音楽との出会いが、支えになることを私は身を持って知っている。

余計なお世話かな~という気持ちは十二分に持っているのだけど、何かの出会いの扉が開けばいいな~という、おせっかいを置いていこうと思う。

喫茶部のために運んでくれた氷の御礼に。

ありがとうございます。ロックンロールと生クリームとマンガと物語に使いながら、自分の中のことばを探っていきまます。