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5分で虚しくなれる短編小説:26歳になって初めてタバコを吸いました。

26歳になって初めてタバコを吸いました。
今まであんなに毛嫌いしていたタバコは僕の心の健康を一時的に良くしてくれているような気がしてとても心地よかったです。

初めて味わったヤニクラは自分がやってきたことに対する懺悔をするにはちょうど良いとも思えました。

ちょうど3年前になります。
僕は愛していた彼女と別れました。フラれたんです。
なんとなくそんな予感はしていました。

仕事が忙しかった僕と大学生の彼女とは生きている時間が何もかも違っていたからです。

彼女とは僕が大学四年生のとき付き合い始めました。
当時彼女は大学一年生で僕が所属していた部活のマネージャーでした。

あの頃を思い出すとあんなにも甘美で素晴らしかった日々は無いと思います。
とても幼稚な表現になりますが所謂"魂の伴侶"とすら思えました。

そんな彼女と別れました。未だに引きずっては「あの時こうしていれば」とパラレルワールドの世界に想いを馳せています。

時間が何もかも解決してくれる特効薬だと信じていましたがいつまで経っても効いてはくれません。

「また彼女を作ればいいじゃん」

誰かに相談すると必ず言われる気休めみたいなアドバイスに辟易しながら

「マッチングアプリとか柄にもなくナンパなんかしてみたんですけど、なんかあんまりしっくりこなくて」
なんて答えてみる。

ほぼ本心だ。彼女の笑顔も声も僕を幸福にしてくれる彼女の体臭もマッチングアプリなんてやってるそこらの女には比較にもならないくらい良いんだから。

かといって忘れるのを待つか彼女を作るしか方法が無いのは事実である。

「そんなに未練があるなら連絡してみたら?向こうだってもしかしたら未練たらたらかもよ?」
最悪の女に二度もフラれる覚悟なんてあるわけなんてないだろと思いながら雑に

「そうっすね…」なんてテキトーな相槌でかわすことしかできなかった。

「へぇタバコ吸うんだ。あんまりイメージなかったから驚いちゃったよ。電子タバコにしないの?」

「実は最近吸い始めまして…。電子タバコはなんとなくスッキリしなくって吸ってないです。」

「どうして吸ってみようと思ったの?」

「いや…なんとなく…です…」
引きずってる失恋の虚さを誤魔化すためとは口が裂けても言えなかった。

言えば憐れんだ顔でありきたりな言葉で慰められるだけだし、僕のちっぽけなプライドが許さない。

新小岩にある自宅に帰宅しました。
夜はお風呂に入ったあと四階のベランダで一服することが日課になりました。

彼女を想いながら…。

煙を上階へ灰を下の階へ。

虚しい気持ちをタバコの煙で肺にいっぱいにして夜空に向かって吐き出す。

タバコを嫌っていた当時の僕と彼女に対しての精一杯のの反抗と心が軽くなる高揚感わ味わうために。

恥ずかしながら未だにヤニクラをします。
彼女への想いが薄れ消え去れば、このヤニクラは治ると信じて生きていこうと思います。

あとがき
タバコ代ください

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