H a p p a n o U p d a t e s - No.269
□【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
アフリカ短編小説集 もくじ 巻頭エッセイ(ニイ・パークス)
7. わたしたちが失った記憶 リドゥドゥマリンガニ(南アフリカ)
南アフリカの片田舎に住む、統合失調症の姉と、その姉を深く愛する妹の物語です。
現代の話、でも背景には舞台になっている地域の、そしてアフリカの、古い因習(思想)や宗教観があって、そのために姉妹はそこで生きることが叶わなくなります。
リドゥドゥマリンガニのこの小説は、2016年ケイン賞受賞の『Memories We Lost』の日本語訳です。同賞の受賞者として日本ではチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(ナイジェリア)の名が知られていますが、アフリカ文学の賞としておそらく英語圏で最も影響力のあるものと思われます。
英語圏で、、、つまり作品は英語で書かれ、授賞式はオックスフォードで以前は行なわれていて(現在はロンドン大学)と、英国の息のかかった賞に見えます。現代における植民地主義の別の形? 善悪、賛否、いろいろな見方ができそうです。
ただ、アフリカ文学が、新しい世代の作家たちの作品が世に出ていくためには、広く地球上で読まれるためには、「英語で作品を書くこと」「英国などが関わっている文学賞で注目を浴びること」は大きな意味をもっています。
賞では欧米好みの題材が選ばれやすい、ということがあるかもしれませんが、そうであっても、垣間見える現代アフリカの人々の姿を小説で読む楽しみは、それなりに価値があると信じてこのプロジェクトをやっています。
(アフリカ発の文学マガジンや出版社も、近年活発化しているようです)
□ 最近思ったこと、考えたこと(happano journal)
12.06/24 note運営による非表示対処の本意とは? 李琴峰さんのケースを考察
12.19/24 動物と人間と性 : ⓵動物にも同性愛はあるの? ⓶動物をパートナーにする人たち
性にまつわるちょっとした「違い」は、人と人の間で憎しみや嫌悪を生むように見えます。12月6日の記事は、李琴峰さんが性的指向の違いから長年受けてきたヘイト被害が発端になっています。note運営の対処は正しかったと信じていますが、一方で同性愛やトランスといった生き方が一部の人に嫌われ、排除される理由はどこにあるのか、という疑問も強く残りました。
その直接の答えではありませんが、12 月19日の記事では、動物間の愛と性のあり方を探ってみました。そこには、人間以外の動物には、人間の同性愛のような「自然」に反する指向や行動はないだろうと信じられてきたことがあります。今回、動物に関して、進化による変化ではなく、「祖先条件」(共通祖先が持っていた元々の特徴)として同性愛行動が存在する、と知ったことは、ものを考える上での土台を広げてくれました。
□ 来年の企画プロジェクトは….
2025年の前半に出版・公開したいものが三つほどあって、ここ数ヶ月準備しています。三つ同時進行で、というのはあまりないことなのですが、今回はなぜかそういう流れになりました。
一つは日本の古い小説(by 江戸川乱歩)からの抜粋の英訳。これは「翻訳」というコンテクストの中で考え、実行(実験)しているものです。
もう一つはメキシコの新人作家の「新民話」的な書き下ろし作品を日本語訳します。著者はスペイン語話者で、統合失調症&ノンバイナリー。
最後の一つはパッケージ作品(紙の本、etc.)として出版する予定の小さな楽譜帳。えっナニソレ、という感じかもですが、フランス・バロックの全曲ラモーによるブックです。
Web Press 葉っぱの坑夫/エディター大黒和恵/editor@happano.org