こゑを手に拾ふ日より - 31

こゑを手に拾ふ日より  二〇二四年七月


 型に沿ふ。型にこだはる。かへりみて、あらばあるものの向かふに表立つものとして、偏つてゐるとも思はづ、あへて悟られづにゐることの喩へのまま、今も身のあり方を分からなひままにしつつ、型といふ程と程の重なり方より身を隔たらせ、その為に心の休める暇を失はうとしてゐる。さうあらばさも、花や葉や風のあるのを、そのままに書けると思へて、また幾ら書かうと書き得なひと思へる。おほむねそれは、読むことを嫌ふことらしひ。

二〇二四年七月十八日


 かうしてこころの整はづにゐて、絶へてまで日のこはく明るみ、または日の光の差す窓のまはりをかげらふために、こころよりこのこころのうつとほしさを嫌がつてゐることが、かへつて朝も昼も夜も時の目にうつろふのを静かにし、うるさがらせ、日に増して暑くても身の程をしどけなくしてゐる。かう書ひて此の言ひ様をあへてほどひてしまふなら、此れらの物の思はれ方を、夏のからうじて前の日の夕立ちとして、したためられると思ふ。

二〇二四年七月二十日


 わづらはしひ夏のこころのあたらしさを目の当たりに、昼の頃にはあたたかすぎて、夜の更け前と朝のさはやかな頃ばかりに、さもことばとこゑの片はらにゐて、読むことを此れと為し、ただ何も語らはづにゐる。時に増して目もふさはしく霞み、人とも余り集はづにあつて、あたたかに過ぎる日ばかり、朝に起き、服をかはかし、物を購ひ、夜に眠る。

二〇二四年七月二十九日

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