15　ダムの穴

私は保険の外交の仕事をしながら弟と妹を引取り、一緒に暮らし始めました。

本家の伯父さんに保証人になってもらい、３人で暮らせるアパートを借りることができました。

３人揃っての生活。そうなることを望んでいたはずなのですが、実際にそうなってみると、色々な問題が出てくることが分かりました。

私達は３人とも、それぞれ心に傷を抱えています。

それらはトラウマとなり、何かのきっかけがあると、噴水のように吹き出しました。

営業で伺った先のお客様や、上司から大声を出されると、酒に酔った父を思い出し、身体が震えました。

弟や妹は、手を上げる動作をしただけで首をすくめたり、何かが割れる音を聞くと「ビクッ」としておびえ始めます。

それがきっかけとなって貝のように黙ってしまったり、パニックになったり、ガタガタと震えだしたりするのです。

ダムの壁に所々に穴が開いていて、そこから水が噴出する。塞いでも塞いでもまたどこからか水が噴出する。

私達の生活は、常に問題を抱えながらの生活でした。

そんな私達の唯一の楽しみといえば、休日のアニメ上映会でした。

３人でレンタルビデオ店に行き、それぞれ好きな作品を借りて来ては上映会を行うのです。それが唯一の娯楽でした。

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