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カレーですよ4334(鴨川江見吉浦 ライバック)コース料理と同じ感覚を覚えるこの楽しさと完成度。

ちょっとロケハンで千葉の奥までやってきた。最近いろいろ歩き回っているのは仕事の撮影などで便利な場所探し。そんな理由で内房にいたのだが、カレーの虫が騒いでたまらずに、楽しい峠道を飛ばして外房へ移動。

外房、太平洋がすぐそばというロケーションでカレーとなった。

カレーですよ。

Google mapを使って気になったカレー店にピンを打つ。打ったまま忘れていることも多いがそうやって気になる店をチェックしているとあとで助かることも多い。

鴨川の江見吉浦という港のそば、128号線沿いにその店はあった。 そんなピンの中から打った記憶のない店が浮かび上がった。

ちょっと背伸びをすれば太平洋が見えるというロケーション。日も落ちていたが、ガラスの大きな窓が明るい店内を浮かび上がらせよく目立つ店。

「ライバック」

という。

店に入ると入り口に黄色いタンクのハーレーデヴィッドスンが置いてある。カウンターに腰掛け、気取っていない手書きのメニュー表を眺める。値段帯は600円台から1100円ほどとお手軽だ。

ジビエを推しているようで、猪のカツカレーなどがあるようで心が動く。鯨カツのカレーやハチノスカレーも捨て難い。そんな中、数量限定という、メニュー名もシンプルな

「エゾシカのカツカレー」

が面白そうで気になって、頼んでみることに決めた。
若いシェフが一人で回していらっしゃると思ったが、そのお父上であろうか、もうお一方奥から出てきて調理が始まった。

始めにサラダとスープが出てきた。おや、そうなのか。これはうれしい。スープはミネストローネの様子。洒落ている。そしてこれがどちらも旨いのに驚いた。

サラダは大きくカットしたトマトが乗ったグリーンサラダ。ドレッシングは濃厚、優しい、ちょい酸っぱいというフレンチドレッシングの白。手作りなのがすぐにわかるいいものである。
白菜を入れるところなどもおもしろく、ちゃんと手を入れて作っている感が伝わる。

ミネストローネスープ、これが大変に秀逸で感激。野菜の甘味とトマトの酸味のバランスで軽やかに仕上がったもの。野菜の味が踊っているようだ。目が覚めるとはこのこと。いいスープだ。これはちょっとカップ一杯では足りぬ。うれしくなる。

さて、カレー。

これがまたカレーに真剣に取り組んでいらっしゃるのが強くわかる素晴らしいカレーソースであった。

タマネギ焙煎の楽しさとスパイスの強さのバランスで見事に欧風側に抑え込んだ味の着地点がまた素晴らしい。欧風と大雑把に言ったが辛さはきっちり、骨のある辛さとして土台を作っている。あまあまふっくらなだけの重いばかりの欧風では決してない。
辛く、香り高く、奥行き深い味だ。

具材は一切なし、カレーをソースとして考えるフレンチ的な立ち位置からのカレー作りが垣間見える。その証拠に仕上がりは濃厚で、スプーンで切れるような濃度のソース。ソースだから皿に敷くイメージでの盛り付け。そのソースで食べるためにソースに寄り添わせるような配置のライスとカットレット。すべてに理由が見える。

ソース、滑らかだが溶け込んだ素材のつぶつぶ感が感じられる。油で作る嘘の滑らかさではない手をかけた艶やかな滑らかさがある。 そういうことにどんどん気づき、興奮してくる。

ソースで後入れの具材とライスを食べるという考え方。カレーライスを食べるのではなく、ライスをソースで食べるわけである。ここがとても大事な部分であることが容易に想像できる。そして後入れの旨い具材、いろいろ選べるようだが、選んだエゾシカのカットレットにもう一度うれしくなる。

何度も繰り返すが、これはフレンチのひと皿にも似た「メインディッシュであり、ソースで料理を食べるもの」なのだ。食べているうちにそれが確信に変わった。

スープがあってアミューズのサラダがあって、ヴィヤンド、レギュームがたまたま同じ皿で供されるだけのことなのだ。(エゾシカのカットレットの下には生キャベツが敷いてあった)デセールを別で頼めば(ないかもしれない)簡易ではあるがコースと考えられる。それくらい、そういうコースを思わせるくらい楽しかったのだ。

エゾシカのカットレットはトンカツではなくきちんとカットレットになっており、薄く仕上げてある。

淡白な赤身肉で、味わいもさらり。しかし確実な旨味と食べ終わった後にほんのりと何かいつもとは違う香りが口中に残るのが大変楽しい。カレーソース、大変に凝った、強い味とキャラクターを持つものであったが、淡白な味なのに鹿肉が負けていない。 思わず唸る。

食べ終わってカウンターの中を見ればシェフお二人が手を動かしている。若いシェフはハチノスの下ごしらえ。オーナーシェフはひと抱えもある大きな肉の塊をフライパンで火を入れては滲み出た脂を肉の背中にもどすという繰り返しをされていた。

伺えばその肉は猪のあばら肉。素晴らしいものだった。
ジビエ肉のルートや下処理などのお話を少し聞いて、後ろ髪惹かれる思いで店を出た。
本当に素晴らしい味だったことをお伝えした。

近くの道の駅にクルマを止め、このメモをあらかた書き終わり「店の所在はどこになっていたか」など呟きながら調べると。思わず震えが走った。そして納得がいった。

あの店のシェフはホテルニューオータニに40年もいらっしゃった方であった。全て合点がいった。そういうことであったか。そうか、だからか。だからあんなふうに感じたか。

あんな値段で出してはいけないと言いたいくらい素晴らしい手のかかったカレー、なのに気楽に寄れる値段帯。まったく素晴らしくもありがたい店だった。

外房まで足を伸ばす理由ができた。
こちら方面に仕事も作らねばいけない。もう少しロケハンを続けよう。

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