見出し画像

松岡正剛さんゆく メタに期待



松岡正剛さんが亡くなりました。「編集工学」関連本があるかと探しましたが、いつの間に蔵書から消えていて、近年の雑誌がチラホラ。

既存の知を組み立て直すだけ、という20世紀後半の知的状況を背景に、編集工学というのがあったかと思います。
本や映像の編集だけでなく、料理や会話、日常のあらゆるものが編集であり、
それはいくつかの「型」からなる「わざ」であり、
そうなると、「アート」の語源、「アルス」や「テクネー」とほぼ同じ。

いつ松岡さんを知ったかとなると、本や雑誌だったか、

大きいのは、
丸善本店にあった、
松岡さんプロデュースの「松丸本舗」。
いくつかのキーワードで、
ジャンルを横断して膨大な本が並ぶ。もはやジャングル。

あんなに本を読んでるかと思えば、水曜日のカンパネルラ(当時)のコムアイと対談し、動画もかなりチェックしていたことに驚く。

お世話になったことといえば、
漢字博士で知られる白川静さんへの見解。松岡さんは、白川字学を強力にプッシュしていました。
その字学のベースにあるのが、

「口」(くち、でなく祭器)

この「口」の上に、呪術的儀礼的な手段としての「字」たちが積み上がり、あの広大な字学ができたと。
あの分厚い字書たちの原理をスパッと見抜いたのはすごかった。
そして漢字学だけではなく、そもそも白川さんが「詩経」と「万葉集」の比較から出発していたことも知っていた。
学会では、白川学は「実証的ではない」と、一部を除きあまり相手にされてはいないけれども、松岡さんは、「構わない。面白いから」と。
呪術や祖霊をいう白川さんの論文は、実は仮説的前提以外は、モダニズム、合理主義的。様式史的に古代人の思想を解剖していく。そのあり方は、Metaphysicalよりは、Physical。
松岡さんも、編集史的なところがあり、古今の書物の組み立てを見抜いてしまうから、思想書や神学書についても知力をつくし、Physicalな読みが展開されます。

それでも
「にもかかわらず」
の一線が残されていて、
晩年、どこに到達したか、到達点をこえたのか、気になるところ。

佐藤優さんが、立花隆さんへの追悼文で、「すれ違い」を述べていたけれども、最晩年のMetaphysicalに期待していたことも明らかにしました。
これから、新聞、雑誌などでは、佐藤さんをはじめ、各界の人による追悼文、特集が続出するでしょう。楽しみです。
粗っぽく記憶で素描しましたが、松岡さんの残した仕事、本をたどっていけば、様々な気づきや誤解の解消があるかと思います。

やはりフィジカルに大きな遺産は、角川武蔵野ミュージアムにある、「本棚劇場」ですから、その本たちのジャングルをまた散策したいですね。

つらつら思いつきで書きながら編集工学ということを改めて学びたい

好音本棚については


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?