音もなく尿嚢膨らむ速度など眠れぬ夜を耐へて見てゐる
橋本俊明
ほつほつと雪の浄土を歩みゆく小さくなつた歩幅を残し
臼井良夫
心地よき目覚めとなるを疑わずホットココア胃の腑に落とす
山口美加代
戴きし西瓜の玉を爺さんと婆さんで割る童話みたいに
永田賢之助
来年の大会目差し頑張ろう老いという文字封印をして
奥井満由美
庭に咲く花たのしみて今すこし日々の草とり続けゆかんか
藤峰タケ子
足すくみ渡らずにをり天龍の吊り橋少しも揺れはせざれど
佐田公子
この里を出でてゆきたき日のありき空の真ん中飛行機がゆく
髙橋律子