志村けんも人見知りが激しく自身なさげにしゃべるらしい(ウラジオ日記3)

夢を見た。いろんな夢をいっぱい見た。眠っていると隣からマリリンモンローが覗いてきていて「あなたは志村けんね。」と言って僕にキスをする。僕が目を開けると「だましたのね。」と言って泣く。メイクが乱れている。

夢はこんな風には整合性がとれない。もっとわけのわからない夢だったろう。無意識に断片をつなぎ合わせて話にしている。こんなつまらない夢の断片をつなぎ合わせてどうするのだろう?それでも何かを理解できないというのはこわいことだ。だから必死に人は名前をつける。自分の見た夢を理解しようとする。

しかし夢を見るというのは、眠りが浅いということだ。なんだろう。いつもより緊張している。完全に一人の旅は久しぶりだ。その所為だろうか。気づくと胸が早く打つ。それとも昔から行きたかった場所にいけることにわくわくと胸打つのだろうか。

しかし異国で居眠りをするというのは気持ちのいいものだ。それである程度緊張も和らぐ。無防備に体を知らない土地に預ける。知らない言葉を耳に入れながら眠りにつく。そうすると緊張がほどけていく。(もちろんパスポートや財布には気をつけつつ)

眠る場所を探しているとき、スーツケースを積み上げている人を見かけた。あの大量のスーツケースを持って飛行機に乗るのだろうか。しばらくしてからふと思い至る。あれは確か仁川空港から出られないでいる家族だ。仁川空港には無料で使えるインターネットも用意されている。それで調べると、やはりあれはルレンドさん一家だ。何かを渡してあげたいと思った。調べると、欲しいもののリストが出てくる。トランジットの時間は22時間くらいあって韓国で買い物しようと思っていた。だからリストにある何かを買ってこようと思った。

いつもは海外旅行でも手ぶらで行く。パスポートと財布だけ持って家を出る。その方がわくわくする。足りないものはあっちで買えばいい。でも今回はリュックを持ってきていた。服を買おうと思っていたからだ。仁川空港はトランジット利用者が多い。そのために無料のツアーがいくつか組まれている。明洞まで無料で連れてってくれるツアーもあって、それで服を買いに行こうと思っていた。その次いでにルレンドさん一家にも何か買ってこよう。

明洞には好きな SELECT SHOP がある。A LAND というお店だ。着もしない服までついつい買いすぎてしまう。

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(かわいいショップカード)

デスクに行ってツアーを申し込む。思ったより小さなデスクで迷ってしまった。11時にここに集合。それまで時間がある。空港のお店を回る。

メモ用紙が欲しかったから本屋文具屋を探す。いいのが見つからない。案内を見るとコンコースというエリアにもある。行ってみると、思ったより小さな店舗でやはりない。まあ外で買えばいいかと戻ろうとすると、コンコースからターミナル1には絶対に戻れないと言う。やばい。やってしまった。後からよく見れば、ターミナル1には戻れないとしつこいくらいに書いてある。緊張がほどけすぎたか。

最悪だ。飛行機はコンコースのゲートから出るからどうにかなるが、こんな小さなお店しかない場所で飛行機を十時間も待たなければいけないのか。ツアーに予約してしまったのですが、と言うと、予約カードはありますか?と言う。そんなものは渡されていない。

そうこうしてる内に11時を過ぎる。いや、待て、そんなことよりチェックインの問題が解決していない。コンコースにもチェックインカウンターを見つけたが、イースタージェットのものはない。再びインフォメーションでそのことを話すと、少々お待ちくださいと言う。しばらく待っていると隣に日本人と思しき男性がやってくる。同じようなトラブルを話している。ぼそぼそとしゃべる日本人。とても自信なさげに。

私は英語が得意ではない。更に人見知りも手伝って自信なさげに見えるのだろう、何かを聞くとみな少し日本語を交えて教えてくれる。それはやさしさだ。でも素直には喜べない。大体日本語でしゃべっているときだって、自身ありげに堂々としゃべるようなことはない。だから英語でだって話は一緒だ。でも気を遣わせてしまっていることが情けない。というか海外に来てまで日本語を聞きたくない。でもこれを発させているのは自分なのだ。

そんなことを、ぼそぼそと自信なさげにしゃべる日本人を見て思った。

韓国行きの航空会社はエアソウル。しばらくするとエアソウルのスタッフがやってきて、一緒に一度出国しますと言う。それからイースタージェットにチェックインしてください。

ラッキーだ。

10時間を持て余さずにすむ。普通に韓国を旅行してから、空港に戻ってチェックインすればいいだけ。素晴らしい。そうしてターミナル1に戻って空港を出た。ターミナル1に戻る方法は残されていた。

結局ツアーには参加できなかった。けれどそれもラッキーだった。ツアーの時間内のギリギリの中で服を選んでいたら、焦って買い過ぎてしまったに違いない。冷静に三着に絞って買った。

前見かけた「やさ男かばん」というお店は、「イチローかばん」という名前に変わっていた。それから日本語が前よりも多く掲示されているような気がした。日本人も韓国人もみな普通に通りを行き交っている。日本製のシャンプーを韓国人が買っている。ニュースで感じるような反日の空気はまったく感じられなかった。
それから安売りしていたシアバターを買って空港に戻る。シアバターはルレンドさんに渡す用だ。

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