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平井大臣「脅しておいた方がいい」発言の問題点

こんばんは、はんにんまえです。今日も晩御飯の話を記録して寝ようかと思ったのですが、IT業界の末席(3階出口付近の立見席)に身を置かせていただく立場として、どうしても記録せねばならないことがあります。

【今日のテーマ】
平井担当相「脅しておいた方がいい」 アプリ開発の減額交渉で

ざっくり言えば、本件の内容は『平井大臣が東京五輪・パラリンピックで導入予定の健康アプリの減額交渉をめぐり、受注した業者を「脅しておいた方がいい」などと政府内部に指示する発言をしていたこと。』に集約されます。詳細はググってください。

若干経緯を補足すると、オリンピック・パラリンピックで海外からの観光客らの健康管理に使うアプリの当初事業費は約73億円。国内向けの問題のアプリ「COCOA(ココア)」が約3億9千万円であることと比べて高すぎるなどと国会で批判され、5月末に約38億円に圧縮する契約に変更された。事業費削減のため、脅しちゃいました。的な話だそうです。

論点がぶれるので、今日はモラハラ&パワハラ、大臣としての資質に欠ける等の話はいったん脇に置くことにします。

私の考える本質的な問題点を以下に述べます。

今日、行政のありとあらゆる分野で、システムが利用されています。しかし、行政(官僚や職員等)は業務要件を仕様に落とすことができません。いや、そもそもそれらを仕事だと思っていないと思います。

そこで出番となるのが、大手メーカーです。彼らはとにかく大企業なので無理がききます。

行政マン
やりたいことはざっくりこんな感じ。詳細はよろしく。
行政マン
『あ、ごめん、やっぱ仕様変えるわ。よろしく。』
行政マン
『(どう考えても常識的には無理な案件で納期は来月ね。よろしく。
行政マン
『予算足りないんだけど、次の案件も頼むからさ。よろしく。』

この手の無茶な案件に対応できるのは超大手か次回以降の案件で回収を期待する中小ベンチャーだけです。日本のIT業界では、一昔前に赤字プロジェクトが乱発されたことがあり、その後大手メーカーでは採算にすごくうるさくなりました。その結果、大手メーカーはリスクヘッジのために、イケそうなときはすごーく価格を盛るようになりました。

そんなこんなで、官公庁と大手メーカーは、言葉を選ばずに言えば、べったりの蜜月関係であったわけです。行政からすれば、大手メーカーは便利な使いっ走り。大手メーカーからすれば、行政はドル箱、いやネギ鴨です。

筋の悪い客とぼったくりバーの組み合わせといえばわかりやすいかと。あるところにお金をたくさんもっている常連客がいました。しかし、その常連客は毎度無茶な注文や難癖をつけるので、店は通常の価格よりとっても割り増しして請求していました。しかし、ある日筋悪の常連客が言いました。『今度ぼったくったら2度といかねーぞ。』ってね。これが今回のざっくりとした話です。


こんな歪な関係が長いこと続くうちに、システムの価値そのものと適正価格が乖離してしまい、ニッチもサッチもいかなくなったというわけです。端的に言えば、行政は適正価格がわからないし、大手メーカーもお上の顔色をうかがうばかりで自分たちの商品の正価がよくわからなくなったのです。なんともお粗末な話です。

じゃあ、どうすればいいかって。答えはかんたん。
業者選定をオープンにすればいいんです。

【オープンな業者選定】
①調達仕様は行政が書く。
  行政が書けないなら、コンサル会社に委託する。もちろんコンサル会社も業者選定で選ぶ。
②調達はすべて公募。
 入札でもいいし、総合評価方式でもいい。もちろん調達仕様はwebで公開。そうすれば、行政側があとから仕様を追加してもその分の費用を『仕様にないのでお金払ってください。』って業者側はいいやすくなります。
③調達結果はすべて公開。
  入札業者と落札額はもちろん、総合評価方式の場合は評価結果を詳細に公開。価格点が何点で、技術点が何点といった内訳も明記する。
④最低入札価格と指名停止要件を明記する。
 実績のない企業が運用保守目当てで安値勝負に出る可能性があるので、最低入札価格の設定は必須。それでも不安なら、契約不履行の場合は指名停止にしますって書けば、この業界の業者はどこも無茶できません。
※指名停止なんて食らえば、マジで会社が傾きますから。
※この方法では急な案件に対応できなくなります。しかし、常識的な納期を無視するから、毎度粗製乱造なシステムになって問題になるのです。常識的なスケジュールを考えるのも仕事のうちですよ!

今回の大臣の発言におけるナンセンスな点は2点です。
①脅せば安くなると思っていること
 そんなことを言えば、『まともな価格もわからない、価格交渉ひとつできない、私はIT素人です。』って額にマジックペンで書いてるのと同じです。やるべきこと(=オープンな業者選定)をやっていないから、ぼったくられるんですよ!価格交渉したいなら、調達仕様や業務要件をしっかり読み込んで、どうやって工数を小さくするかに頭を使うべきです。アホな精神論(脅し)を振りかざす前に、足元をよくご確認あそばせ。
②税金だから安くなるのが当たり前だと思っていること
  システムを提供する側からすれば、原資が税金だろうがそうでなかろうが関係ありません。同じお金です。相手が民間企業でも同じお客様です。行政だけを特別扱いするなんてナンセンスです!システムを提供する側としては、提供する価値に見合った価格であれば仕事をするし、そうでなければ仕事をしません。税金を最大限有効活用するべき責務は行政側にはありますが、システム業者側にはそんな責務ありません。システム業者はただの民間企業です。ボランティアじゃねーっての。そんなことすらワカランとはアホの極みですね。

マジで、バッカジャネーノ!!!










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