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私たちが楽器がうまくなる理由には2つあってだな(2)

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(1)ではジャズを続ける動機にはプッシュ型とプル型があると述べました。
実は上達の過程においてもプッシュ型とプル型の二つのモチベーション(向上心)があります。

プッシュ型のモチベーション

うまい演奏を聴いて感動する。
「ああいう演奏をしたいな」という動機で音楽に向かう。
上達の動機は、多くの場合感動が根底にあります。

「うまくなりたい」という動機は基本的にはこれだけのはずで、上手くなった人に言わせると「え?他の要素とかあるの?」って感じだと思う。

ただ、現実の僕らは純粋な音楽に対する情熱だけではなかなか動けない。
もっと我々はしょうもない存在です。
音楽を実際にする「場」=環境の力は大きく我々に影響を与えます。

プル型のモチベーション

場=環境に依存したモチベーションがあります。
あるコミュニティに所属し、コミュニティ内の相対評価のため上達が大きなモチベーションにつながる。
あくまでコミュニティの中限定だが、上達によりコミュニティの中での相対評価が上がり、それによるインセンティブを受け取る。
それは金銭的なものではなく、満足感とか達成感とか、優越感や周りの人間からの羨望や賞賛など。
それが上達の動機になる。

コミュニティに要求されるレベルまでは上達する

例えば軽音なりジャズ研なりに入部します。
なんとなくその軽音に標準的な演奏能力ってもんが存在するわけです。

以前に書いた「ジャズ研換算」は、プレイヤーの演奏能力の絶対的な尺度を平均的なジャズ研の学年毎の成長過程に対応して示せないかという試みでした。
もちろん、本当はジャズ研毎のレベル差は存在します(傾向として、大都市の有名大学のジャズ研のレベルは高く、地方都市のレベルは高くない)。

それはともかくとして、大事なことは、所属するジャズ研というコミュニティにおいてはコミュニティ内の相対評価で評価されるということです。

水準を満たさない場合には淘汰圧が働きます(居心地が悪い)し、水準を上回った人間には何らかのインセンティブが働きます(居心地がよい)。

コミュニティの技術水準を全体的に上げたければ、このコミュニティが持つ淘汰圧を、上手に利用することです。

ただ、それって、コミュニティ内の構成員の幸福にはつながらない。

ジャズ研というコミュニティでは、プレイヤー視点の評価軸だけではなく評価軸の複線化をして、多様な人材の受け皿になったほうがいいんじゃないかと考え、以前にこれを書きました。

しかし「居心地の悪さ」という淘汰圧は、コミュニティの技術水準を担保する源泉でもあるが、排除にもつながっているということです。
難しいですね。

ジャズ研を卒業しコミュニティ内の相対評価から開放された人の多くが、その後上達もせず楽器からも「卒業」する事実は、いかに「プル型の向上意欲」が有効であるかを物語っていると思います。

ま、これジャズ研ムラだけの話ではなく、吹奏楽部ムラも全く同じ図式だと思います(まだジャズの方が絶対的な評価軸がある分ましなのかも…)

社会人

社会人でも、状況はかわりません。
ありとあらゆる場所に、コミュニティは存在します。

  • ジャズのプロが主催するグループレッスン(『発表会』あり)。

  • お店が主催する初心者セッションと銘打ったゆるやかなコミュニティ。

  • ジュニア・ビッグバンドのような子供と親世代のビッグバンド。

  • 地方によくあるプレイヤーが集まるお店のコミュニティ。

  • すべてのバンド。

純粋にジャズを目指して人間関係なしにジャズを練習してプロになる人はやっぱり少数です。
特にジャズを始めてすぐ(いわゆる揺籃期)は、こういうコミュニティの中のやや低めの相対評価でジャズに親しみ、自信をつけることが、上達のきっかけとして重要だと思います。逆にいくらジャズというものが個人の音楽と言っても、コミュニティに一切所属しないでうまくなったジャズマンはほとんどいないと思います。
田植えの前の苗代といいますか、稚魚の放流といいますか。そういう環境が初期の段階では必要だと思う。個人として力を持ちえない状態では、守ってくれるコミュニティが必要です。

「ジャズ始めよう」と思った社会人の初心者も、そういう観点で何らかのコミュニティを探すことをおすすめします。
『blue giant』読んでジャズサックス始めようと思った人は沢山いると思いますが、あれはめっちゃハードモードだかんね。

バンドという少人数のコミュニティでも、この集団の斥力は働きます。『Blue Giant』におけるバンドJassの玉田、必死で練習しますよね。あれはジャズの崇高さに打たれて、というよりは集団に帰属するための必死さです。教室に通ったりもします。
『ぼっち・ざ・ロック』とかでも、演奏で足を引っ張っているかもと思ったメンバーが必死で練習したりするわけです。

まとめ

  • コミュニティという環境依存型のモチベーションは存在する。

  • コミュニティ内の相対評価が生み出す上達へのインセンティブは案外馬鹿にできない(特に初期段階では)

  • ジャズ初学の段階では何らかのコミュニティに所属した方がうまくいく可能性が高い

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