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今日は、プリンも食べる

「じゃあ、ケーキ買って」と言ってみた。

同居人が捨ててしまった資料を、わたしは大切に取ってあった。
資料は、わたしのパソコンの奥深くで眠っていた。

資料を残していたわたしはえらい!
賞賛に値する!
だから、ケーキを買って、と言った。


散歩ついでに、近所のケーキ屋さんに連れて行ってもらった。
特別なときにだけ行く、魔法のケーキ屋さんだ。
だいたい、ケーキっていうのは魔法の存在なのだ。
どんなときだって、にんまりしてしまう。
ケーキ屋さんのケーキというのは、特別な魔法だ。

べつに、スーパーのケーキでもよかったのに。
ケーキじゃなくて、100円のシュークリームでもよかった。
ご褒美が欲しくて、ついつい「ケーキ」と言ってしまっただけなのに。
律儀に、ケーキ屋さんに連れてきてもらった。

桃のタルトを選んだ。
桃は好きだけど、ふだん食べることはない。

「ほかはいいの?」と訊かれたけど、
ケーキはひとつだから、特別な魔法なのだと思う。
純然たる強欲さを抱えられるときは、「ふたつ」と言ってみてもいいのだろうけれど
そもそも、100円のシュークリームだってよかった話だ。
「いらない」と答えた。


「プリンは? プリン、おいしそうじゃん」と言われた。
自分は甘いものなんか食べないくせに。

わたしは、スーパーのプリンで充分だったのだけれど
「じゃあ買って」と返事をした。


プリンを、どうしても食べたかったわけではない。
でもきっと、買ってもらうのがいいのだと思った。
食べる気が起きないとか、もったいない、という気持ちが先行するときは、むりしない、ちゃんと断るようにしているけれど
以前、ケーキ屋さんで「やっぱりいい」と言ってしまったとき、少し寂しそうな顔をさせてしまった。
そのことを、わたしは覚えていた。

だから今日は、プリンも食べる。

自分は甘いものなんか食べないくせに、
わたしがもしゃもしゃと甘いものを食べていると、同居人はなんだか嬉しそう。な気がする。

なんとなく、プレゼントを買ってあげたい気持ちというのは、わかる気がするのだ。
うまく言えないのだけれど。


今度はわたしが、お気に入りのカフェで、美味しいビールを買ってあげようと思う。
わたしは、ビールなんか飲まないけれど
あのお店には種類もたくさんあるし、店員さんも信頼できる。
同居人が「うまい」と言ってビールを飲んでいると、わたしも嬉しいような気がする。

そういう、連鎖するしあわせが、あるのだと思う。



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