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こんにちは

それは、花を買った帰り道だった。

コンビニも、本屋も、コーヒー屋も華麗にスルーしたわたしは
最後に、花屋に吸い込まれる。
そうして、ひとつかふたつ花を選んで
すっかり顔見知りになったお姉さんたちと、少し話をする。

天気のはなしとか
ときどき洋服を褒めてもらえたり
最近は、かばんにぶら下がっているポケモンのはなしだったりする。

「いつもありがとうございます」に
「また来ます」と返す。

花は、袋に入れない。
花屋と自宅が近いこともあるけれど、抱えて帰りたい、と思う。
花は、抱えて帰りたい。
お姉さんから直接受け取って
さっき選んだ花が、茶色いやさしい紙に包まれて並んでいるところを見ると「ああ、よかった」と思う。
やっぱり、買ってよかったんだ。今日もかわいいお花を選べてよかった。

今日は、反対側から歩いてくる人が目についた。
その人も大きな花を持っていたからだ。
そうしてすぐ、「もしかして」と思った。
「花屋は、外の仕事も多い」って、聞いたことがあったから。

近づいてきたのは、花屋のお姉さんだった。
そして、すれ違う前から用意されていたみたいに「こんにちは」と声を掛け合った。
笑って、いつもみたいに。

「こんにちは」という挨拶を使う機会はあまりない。
会社に行けば「おはようございます」と「おつかれさま」で
友達にも言わない。

「こんにちは」は、「会えて嬉しい」とか「ごきげんいかが」みたいな
ひだまりの匂いがすると言ったら、言い過ぎだろうか。
好きな挨拶だなあ、と思う。

そして、道行くあなたに「こんにちは」を言えるということは
借りぐらしだったこの街に
居場所ができる、ということのような
そんな気がして
やっぱり、良いあいさつだなあ。などと思ってしまう。



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