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10年とわたし

少し時間があるから、遠回りをしようと思った。
あんまり来ない、駅のこちら側は少し景色が変わっていた。

「思ったより暗くなくてよかったねえ」
すれ違いざま、そんな声が聞こえてきた。

もう夜だったし、駅の近くといえどここはそんなに明るくない。

明るくない。
だけどわたしは道を渡っていった。

そうだ、わたしにとっては暗くない。
あまり来ないと言っても、住んでいるところの最寄の駅近く
もう、目的地まで迷わず歩けるし、特に暗さは感じない。

そうだ、わたしはこの街に住むことを選んだ。
そうしてすべてを選ぶようになってから、
大学を出てから10年が経ったことに気づいた。

自分の人生については、すべて自分で選んだとだ断言できる。
それが誰かや何かの導きであっても、すべて自分で決めてきた。
もちろん、東京の大学に来ることも、そのときひとり暮らししていた柿生の家も、
わたしは自分で選んできた。

特にここ10年は、とおもう。
住むところ、仕事やお金、時間の使い方、大切にしたもの
家族、友達、生き方、
特に人生のすべてを、
そりゃあ、関わる人に左右されることもあったけど、そんなのもすべてひっくるめて
ああ、自分で決めてきたなあ。

10年前と違うこともある。
10年前は歩くことなんて好きじゃなかったし、
煙草はキャスターマイルドだった、
リュックを背負うようになったのは最近で、音楽活動のメインを弾き語りにしてから(楽器を背負わなくなったので)

腕時計をする習慣があるのは10年間変わらないし、
10年前もいまもコーヒーはやっぱり好きだ。
髪は黒いままで、ピアスは最近あけた。

自分的にはたくさんのことがあって、
そりゃもうもりだくさんの人生で、
もう1回やりたいかとか、
やり直したいだとか、
そんなことは絶対に思わない。
しんどすぎる

まあで悪くないかな、とおもった。
うん、わるくない。

10年間、何人かと音楽をやって、
ぜんぶやめて、
わたしはうたい始めることで、音楽と鍵盤を続けることにした。
たぶん何度でも、伝えることをやめなかったと思う。
何度ダメだと思っても、わたしはこうして文章を書いてみるし、やっぱりピアノを弾いてみる。

大いに失った、変わった、もう会えないものもたくさんある。
あのとき住んでた部屋、骨折をする前のわたしの手、働いていたライブハウス、
はじめてステージに乗ったあの感動にも、もう出会えないけれど

確かに持ってる、
だいじなもの、
形が変わっても、鮮明さの姿を変えても、わたしが大事にしたいもの。
きっと10年間ずっと
どうやって大切にするか、こねくりまわしてきたものたち。

世界でいちばんおいしいコーヒーに出会ったのも、ここ数ヶ月の出来事だ。

わたしはこうして、
いつかもコーヒーを飲みながら煙草を吸って、
あなたに話したいことを書き留めながら
留められない部分を音に任せながら、
まだ、

懲りずに、わるくない毎日を生きている。


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