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02.あまのさんへ

次の手紙はあなたに書こうって決めていたよ。
元気にしてる?
あなたは、頻繁に連絡をよこしてきたと思えば、しばらく消えてっていうのを、繰り返している。
また、何かの締切に追われているのでしょう。

あなたとの付き合いは、10年と言うと少し言い過ぎな気がするし
でも、5年じゃぜんぜん足りないよね。

あなたは気づいたら、わたしの人生にいた。

ワイルドサイドトーキョーで出会ったのを覚えている。
あなたはバンドマンとしてわたしの先輩であり、わたしたちの担当ブッカーだった。
最初は、ただそれだけだった。

比較的古い記憶をさぐってみたけど、
なんか、ふたりで車で出掛けたことあったよね。
いつのまに、そんなに親しくなったんだろう。

いま言えるのは、あなたはわたしのご近所さんで
家族のようなひとだと思っている。

なぜだか、わたしはあんまり、あまのさんに隠し事をしない。
なんでも話してしまう。
キミが、姉の下に生まれた末っ子だからだろうか…
なんだか妙に話しやすい。

わたしがいちばん苦しかったときに、何度も話を聞いてくれたね。
もう、あのときに話していたことはお互いほとんど覚えていないだろうけど
(少なくともわたしは忘れた)
どうでもいい話は、言いたかっただけのことは、家に帰ると忘れてる。
わたしたちは、それくらいでちょうどいいね。
王様の耳はロバの耳、みたいな。

あのときのね、最後に言ってくれたことは覚えているよ。
「最終的に、まっつんを引き取る覚悟と準備をしていた」と言ってくれていたこと。
そのときには、もう少しずつ状況はよくなっていたけれど
いちばん苦しいときに、そんな風に思ってくれていたことに
わたしはえらく、救われたんだ。
キミはもう、覚えていないかもしれないけれど。

あまのさんがしんどいとき、もうほとんど半泣きで電話してきたときのことは、わたし覚えてるよ!
キミはもう覚えていないといいな。
「生きてるだけでえらかったね」て言ってあげたのは、このわたしだ!
あなたは、乗り越えたね。

そうして、そう、あなたとは「支え合っている」という感じが、
妙に心地いいのだと思う。

こんなに絶対的な気持ちで「双方役に立っている」と思えることは、
なかなかの奇跡じゃないか? 自信があるよ。

最近の調子はどうだい?

あるときキミは、カメラを投げ出そうとしていたね。
もう忘れちゃったかな、忘れているといいな。
「捨てるのはよくない」と伝えたことを覚えている。
「休むのはいい、でも、あなたが時間とお金をかけて費やしたものを捨てるのはよくない」と。

カメラを捨てずに歩み続けた未来の景色はどうだい?
ギターもうたも、捨てずにきたね。

何かを捨てた未来っていうのは、捨てずにきたわたしたちは見ることができない。
全部捨てなかったことで、きっと苦しいことも多かったでしょう。
いまもきっと、その最中にいることは、わかっているつもりだよ。

でも、捨てときゃよかった、なんて思ってないでしょう?
それも、わかっているつもり。

キミとは支え合って生きてきた。
こんなに仲が良いのに、キミとは似ているところがあまり思い浮かばいのが不思議だよ。

ただキミは、わたしの買い物(化粧品であっても洋服であってもポケモンであっても)にすべて笑って付き合ってくれるし、
大して興味のない、ポケモンにも孤独のグルメにも付き合ってくれるね。
似ているとかじゃなくて、そういうのを受け止めてくれてきたんだろうと思う。
だからわたしは何も気を使っていないし、それはキミの確かに長所だ。
すごく感謝している。

支え合って生きていく、
そのことの大切さを教えてくれたのは、あまのさんだよ。

誰かの役に立てない、て思ったりすることはある。
でも、わたしたちは支え合っている、とわたしは思っているから
そういう不安はない。
不思議と、ぜんぜんない。

わたしたちは知り合ってからずうっと、人生の迷い子だね。
ここではない、ここでいいのか、
たぶんわたしたちの思う安定って、就職とか結婚だと思うんだ。
いや、あまのとは結婚しないけど。そうじゃなくて。

就職とか結婚が安定だ、と。どこかで定義づけている。
そういう自分がいる。見てみぬふりをしている。
そのくせ、それを選ぼうとしない。
それじゃあずっと、迷っているままだ。
ほんとうはもう、わたしたち気づいているよね。

わたしたちだけの未来があるんじゃないか。
そういういのをさ、わたしたち信じたいよね。

それを、あなたと支え合って信じていくことができる。と思っている。
あなたの後ろ姿に負けたくない、と思ったこともあった。
あなたもそう思ってくれたことがあったらいいな。ざまあみろ

なんか、信じたいものを手に入れるために
わたしたちはもう、体力や時間やお金や、そういうもののバランスが厳しい状態にある。
白黒はっきりできなかったりする。当然だよね。

そういうとき、あなたの手を借りて、わたしの手を貸して
一緒に何かを探したりする。
友達ってそういうものじゃないか。
キミにはすなおに、そんな風に思えるよ。

だいぶ話も逸れたし、長くなっちゃった(たぶん)

たまには立ち止まってね。
あなたが「培ってきたもの」を思い出してね。
わたしはあなたが、歌ったことのないときも、アコギを何買おうか悩んだときも
駆け出しで「カメラマン」といえなかったときのあなたのことも
ちゃあんと覚えているよ。
たまには、許してあげてね。

わたしたちが、どれだけ親しい間柄でも
「自分を許す」ということは、自分自身にしかできないことだから。

そしてまた、チカラを蓄えて
おいしいごはんを食べて、コーヒーを飲んで
新しい冒険にでかけよう。
わたしはずっと、キミをそばで見ている。
そして、何度でも手を取るよ。
キミがそれを、望んでいるあいだはね。

最後に、あなたの撮った写真が、わたしを導いてくれたことに、心からの感謝を。
ひとりだったら、ここまでこられなかった。
ここまで、作り続けることができなかった。

「べつにたいしたことしてないよ」と、キミは言うでしょうけど

あなたがわたしにしてくれたことには、価値がある。
そのことずっと、覚えていて。


あまのさんへ

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