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「非認知能力」獲得のために意識したいこと。~教師、家庭の両面から~

僕の学校では、「非認知能力」が専ら話題の的となっています。来年度から小学校のカリキュラムが大きく変わります。プログラミング教育の導入や英語の教科化などに注目が集まりがちですが、それと同じくらい大きな変化は、「学習評価」です。通知表の評価の観点が、3観点になるのです。

小学校において「学習評価」がどう変わるのか。

例えば、今年度まで国語科の評価の観点は、

国語への関心・意欲・態度
話す・聞く能力
書く能力
読む能力
言語についての知識・理解・技能

という5観点についてそれぞれ、A、B、Cのような評価をつけていました。社会科では、

社会的事象への関心・意欲・態度
社会的な思考・判断・表現
資料活用の技能
社会的事象についての知識・理解

という4観点について評価していました。しかし、来年度からは、どの教科においても、

知識及び技能
思考力・判断力・表現力
主体的に学習に取り組む態度

の3観点に統一されます。この大きな転換により、教師も新しい授業づくりを試行錯誤しています。「新しい」といっても、子どもたちに新しいことを求めるということではなく、「教師がこの3観点を、具体的な子どもの姿として授業を計画し、ねらいとした資質・能力が身についているのかを評価できるよう意識して授業改善していかなければならない。」という教師の課題が大きいと思われれます。

新しくなった3観点の中でも特に話題になっているのは、「主体的に学習に取り組む態度」です。ここで、重要なポイントとなってくる力が「粘り強さ」と「自己調整力」です。以前の記事でも書いたのですが、国語で「お気に入りの本を紹介するポスター作を作ろう!」という授業を例にすると、

「粘り強さ」を発揮している子どもの姿とは、
ポスターの構成について複数考え、「どの構成にすれば、自分の伝えたいことが分かりやすく伝わるか。」を試行錯誤しているような姿や、「一度書いた下書きを読み直し、分かりやすい文章になっているのか検討して、必要でああれば書き直す。」ような姿が考えられます。簡単に言うと、自分の目標を達成するために「こだわって」活動しているかということです。

また、「自己調整力」を働かせている子どもの姿とは、
事前に立てた計画を意識して、「計画では、ポスターの下書きを2時間で終える予定だったけれど3時間かかっているから、推敲の時間を計画よりペースアップして終わらそう。」と自分の学びを振り返りながら見通しを修正したり、「あらすじを書き出してみたけど、うまくまとまらないから、今日はもう一度じっくり本を読み直してみよう。」と、自分の学び方を調整するような姿が考えられます。簡単に言うと、「自分の学び方を客観的に振り返り、どのように進んでいけば目標を達成できるのか。」自分自身で学び方をデザインしていくようなイメージです。

そして、「粘り強さ」と「自己調整力」という2つのキーワードは、深く関わり合っています。「自己調整力」を発揮できる子は、「粘り強さ」を持ち合わせていると言ってもいいでしょう。ポスターをさらっと書いて、誤字脱字や記事の分かりやすさもチェックせずに提出して「1番だぜ!」と言っている子どもには、「粘り強さ」や「自己調整力」を発揮していないとみとられてしいまうかもしれません。

「主体的に学習に向かう態度」こそ「非認知能力」。

話題としている「粘り強さ」と「自己調整力」についてですが、実は、これこそ、「非認知能力」が深く関わっているのです。

「非認知能力」というのは、テストの点数に表されないような能力のことを言います。評価のキーワードとして挙げた「粘り強さ」を発揮するためには、「最後までやり抜く力」であったり、自分の感情をコントロールする「自制心」、ときには、「思いやり」が必要となることもあるでしょう。これらは、点数化して計ることはできませんが、学習場面に影響を及ぼすことは間違いありません。

「非認知能力」獲得のために、家庭でもできること。

では、この「非認知能力」は、どのようにすれば身につくのでしょう。それは、幼児期後半から、「自分で決定したことを実行する。」「成功体験や失敗体験を積み重ねる。」「仲間と協働的に活動する。」ことを通して獲得されていきます。ここで、重要になってくるのが、「環境要因」です。子どもが、「子ども自身が選択して決定し、納得して活動に向かえる。」環境になっているでしょうか。子どもは、様々なことに興味・関心があります。大人から見ると「危険」に感じても、興味が勝って行動してしまうこともあるでしょう。大人から見ると「失敗」の可能性が高そうなことでも、進んで挑戦していくでしょう。自分も含めて「親」としては。つい「注意」して止めてしまったり、「成功」が確実な方向へ誘導してしまったりするものではないでしょうか。そのようなときこそ、大人が非認知能力を働かせ、子どもが選んだことを尊重してあげたいものです。そして、大人から見た「成功」や「失敗」と判断せず、その体験から感じたこと、気付きを共有してあげることが大切です。

「非認知能力」は、小学校生活の充実度を左右する。

小学校に入学すると、当たり前ですが、日々授業があります。そこで、「非認知能力」がどれだけ獲得されているかで学習効果に大きな差が出てきます。もっと具体的に言うと、最後までやり抜く力があり、自分が「今」すべきことに集中して取り組むことができる。そして、課題を丁寧に仕上げようとする力があれば、教科に関係なく成果を残すことができるのです。これは、成績あるあるですが、最高評価Aの分布を見ていくと、どうしても偏りがちになることがあります。それは、「主体的に学習に取り組む態度」がAの子どもは、他の観点もAになる確率が高いからです。やはり、学習に対する意欲が高い子どもほど、テストの結果も高くなることが多いです。

「非認知能力」の獲得は、幼児期が大切ということを書きましたが、小学校生活の中でも身に付けることができます。僕たち教師は、この事実を胸に刻み、テストで100点が取ることを目的とした直線的な授業をするのではなく、子どもの興味・関心を高めながら知識を吸収することができ、さらに追究意欲を掻き立てるような授業をつくりあげていかなくてはならないのです!さらに、学校で得た知識を家庭生活に結び付けることも大切です。ぜひ、学校での様子を家庭でも共有することにより、子どもたちの学びへの意欲を高めることにつなげてください!

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