理解せよ、バースト加工
バースト加工がレーザパルスの時間的間隔を短くすることで、昇華による加工対象の除去量を増やせると分かった。
好奇心溢れる諸氏は、この理由を当然知りたいと思うだろうが、まだ謎に包まれた部分が多く、学会でも論戦が交わされている。
分かっていることは、最初のレーザパルスによって照射部分が励起状態から戻る前に次のレーザパルスが当たることで、2発目以降のレーザパルスは加工対象を励起することにあまりエネルギを使うことなく昇華に至らせられること。
もうひとつは最初のレーザパルスによる熱が照射部に残ることで加工対象のレーザ光の吸収率が常温時から上がることで、2発目以降のレーザパルスは加工対象に当たる際の反射によるエネルギロスを小さくでき昇華に多くのエネルギを使えるようになること。
実際のレーザ加工では、上記現象のどちらかのみを選択することはできないので、少なくとも両方の現象が同時に起きて加工対象の除去量を増やしていると言える可能性がある。
まあ結果として、レーザ発振器の最高出力も最大パルスエネルギも同じままバースト発振することで加工量を増やせるのだ。
エアマスターをエアマスターバーストとして使えると言えなくもない。
だがしかし、バースト加工は奥が深い、というか意図した加工結果を得るためにはレーザ発振器と加工対象の深い理解が必要になる。
はじめにレーザ発振器に目を向けよう。
繰り返しになるがバースト発振しようとも、レーザ発振器の仕様は何も変わらない。
どういう意味かというと、レーザ発振器内部の光学素子が耐えられるエネルギと、作ることができるレーザパルスの数とエネルギの大きさには上限がある。
それはバースト発振に対して、最短の照射時間間隔とバーストによる連続発振するレーザパルスの合計パルスエネルギとして制限が発生する。
その制限のうちバースト発振する際の合計パルスエネルギから換算される1パルスのパルスエネルギは、通常の一定周波での発振時と比べて小さくなる。
少し考えると当たり前なのだが、加工対象の除去量を増やすバースト発振は、当然レーザ発振器内部の光学系にもダメージを与えやすくなるから、というのが理由になる。
そのためバースト加工は、バースト発振する際の時間的間隔、バースト発振時のパルス数、その合計パルスエネルギを、加工対象と加工目的に合わせて最適化しないとならない。
しかも1パルスが持つエネルギは通常の加工時から下げた上でである。
ここがバースト加工の最難関となる。
加工に影響を与えるパラメータが通常の加工に加えて、バースト発振間隔、バースト発振パルス数、合計パルスエネルギ、が追加される。
少なく見積もっても上記3パラメータだけでもそれぞれ8個はあるから、加工の最適化の評価は一気に512倍になる。
しかも前提条件に、いつもより低いパルスエネルギが加わり、最適な加工を実現する難しさはバイバインを使ったかのようにさらに上がる。
それでもバーストを使いたいなら使うがいい。
はねいぬだってバーストを使わざるを得ない状況になることもあるし、バーストの方が目的を実現しやすい場合には、覚悟を決めて使う。
バースト加工を使う時は心を燃やすほどの覚悟が必要なのだ。