見出し画像

スタートアップとピッチ

『・・・参加者の前で提案する内容をピッチするとしたら、どんな内容がいいんですかね?パッと思いつくところだと「●●●●一つで▲▲▲▲▲」とか?』

『めちゃいいね。ワンフレーズで届く内容が明確だね。参加する対象者もイメージがしやすいと思うよ』

▶︎ピッチイベントを通じて


つい先日のこと、施設内で月毎の定例となっている「GROWTHPITCH(グロースピッチ)」というスタートアップと地場企業とのマッチング・協業を促進するピッチイベントが開催されていた。

ピッチはスタートアップにとって資金や協業先を見つけていく中では避けては通れない重要なプレゼンテーション機会。
ピッチが行われる環境というのも様々で50名を越える聴衆に対して行うものから、ベンチャーキャピタルに向けて投資依頼を行うような数名程度に対して数十分のうちに行うクローズなものまで開催形式も様々。

最小規模があるとすれば、寸分を刻んで相手の懐に滑り込むエレベーターピッチなる30秒ほどのものまで。
時間の差こそあれ、要は自分のサービスに興味を持って欲しい対象の心の隙間を自社サービスで埋め、かつ持続可能なワンチャンスを掴むためのPR活動の方法のこと。

ある会社のCEOはピッチ登壇前には、事前のデモを数十回行い、イメージの獲得のために先人たちの映像記録を漁りまくるのだそう。

スタートアップが置かれている資本獲得ステージにより、必要な頻度は異なるのだけれど、出会いをつなげてサービスの拡大を行う大事な場面となるので、登壇する数社の中でどう輝くか、関係性の高い事業者にきちんと伝わるかがとても重要だ。

日頃から入居している企業の事業内容を面談等を通じて聞いていけば、その会社のことがわかるし、サービスの成長をしていく様がピッチには現れるので、それを接点の少ない第三者にどのように伝えるのかが気になって聞いていることが多い。

今回のピッチイベントの中でほんの偶然に、ほんとに毛先で感じる程度に「ここのピッチは安定感があって、とてもいいな」と感じていたスタートアップCEOのピッチ内容というのが、全体が終わった後に会場では刺さっていない、ということを感じた。

なぜだろう。これまでの経験と会場の感じにギャップが生じている。
その点を同じ事務局のメンバーに簡単な質問を投げてみる。

『今回ピッチした中で一番良かったのどこだと思います?』
『●●●●は良かったですね。後、最後の■■■が良かったです。』
『●●●●も良かったんですが、■■■が良かったかもしれません。ピッチ後の名刺交換の列も多いですし。』

会場の最後尾からメインのステージを眺めてみると、そこにはイベント終了後の名刺交換会が行われているのだけれど、確かに交換を行う順番待ちの列は企業毎に異なっている。
わずか数分の間で交わされる一方的なコミュニケーションの結果が異なるその後を作っていると思うと、先ほど感じた違和感の中身が気になって仕方なかった。この時に言語化できたのは


「●●●●のピッチは良かったけれど何かがはまっていなかった。■■■ははまっていた」


ということ。

それから数時間ほどして色々と回ってきた入居しているスタートアップの担当に数分もらい、上のことを伝える。伝えられる範囲はとても限られていたのだけれど、何かもっとできることがあるんだと思う、ということと、次に会うときまでにもう少し言語化してみるということ。

『慣れてきている中でフィードバックがもらいづらくなっている状況ということもあり、フィードバックがもらえるのはありがたいです』

という風に言ってもらえたのは、とてもありがたかった。
いつでも何か自分から相手に意志を伝えるのは緊張ばかりだ。

そこから、僕自身が行なったことは以下

1.録画されたピッチイベント全体を見返す
2.ピッチ内容を頭から終わりまで言語化する
3.要素を抽出して、構造を把握する
4.登壇者それぞれの構造を比較する
5.参照可能な参考書や文献を読む
6.フィードバックを言語化する

比較から見えたこととしては以下でした。

▶︎ピッチに含まれている要素

1.非言語的な要素

 ∟ 直感的アピール
   ∟ 声、表情やジェスチャー
   ∟ 視覚表現
     ∟ 服装や見た目的なもの
     ∟ プレゼンテーション資料のデザイン

音声やその人の見た目を駆使して提案していく内容であり、ある意味では変えることができない。一方でその人だけが出すことができるニュアンスをアピールすることができる部分。話し始める前からすでに始まっている内容。

心待ちオープンで会場全体に響かせれるような状況をイメージしておく。

2.言語・論理の構造要素

 ∟ 論理的アピール
   ∟ 提案事項の骨子・構造
     アピール( ワンフレーズのサブリミナル )
     誰もが知ってる領域からはじめる
     課題がある
     だからこうする
     コアな技術や強みはこれ
     私は今これを求めている
     一緒にやりませんか

『いかに聞いた人に対して自分ごととして認識させることができるか。そのアイデアを入れる』

と話されたのは、澤さんのPRに関する講演においての内容でしたが、それらは冒頭においての工夫で取り込む内容となる。そして、いかに自社のサービスのことを記憶してもらえるか
そのためのワンフレーズを冒頭に仕込むことができるのかが大事だと、この構造をまとめた時に理解できた。
ピッチの時間は短い。だから、要素をコンパクトにまとめて適所に配置していけるか。
そして最後には、自分の求めるものとその提供可能な仲間となるような提携先の担当の心を捕まえておくことができるのかという、ピッチの終わりに得るものを捕まえておく必要がある。

▶︎比較から見えたこと

●●●●社には無い特徴が■■■社には含まれていた

スクリーンショット 2020-02-21 21.07.19

1.同じ時間配分の中で含まれているコンテンツが多い
 ∟ 資本ステージが異なることにより含めることができるコンテンツが多いのかも( 柱がいくつか立っている )
2.ワンフレーズのメッセージが定期的に繰り返される
3.一連の流れが1つのサービス内容を補足していく構造を作っており、ブレない

これらのうち特に自然すぎて素通りしてしまっていたのが「2.」であり、これがピッチを視聴した後の印象に残る残らないという差異を生じさせているのだろうと腑に落ちた。
そして、今後の展望まで含めるというのもお代わりありそうな感じでとてもいい。

▶︎ピッチを受ける対象者属性における考慮事項

 ∟ B(企業・事業者・自治体) or C(消費者)
 ∟ 定量 or 定性

最後に、ターゲットの領域を考慮しておくのもとても大事。

これがずれている場合ピッチで話していく順番や重点的に話をするべき内容も異なってくる。
極端な話、コンテンツの順序はB向けC向けで真逆となる可能性もある。
結果として全体を通じて伝わるならいいじゃないか、と思われるところもあるかもしれないけれど、僕個人はここまで分析していった流れと、これまでの経験から冒頭の時点で核心を披露しておかないと、その後の話は誰も聞いてくれないんじゃないかと思っている。

それは、今回のようなピッチイベントでは通常多くの登壇者が出場することとなり、それらを見る視聴者はしんどい。たまに寝てる人もいる。だから、コンパクトに冒頭でパフォーマンスでもなんでも構わないから、心をつかむ必要がある。ワンフレーズ、そしてエモーショナルな個人が伝わることが必要なんだと思う。

▶︎おそらく全ての人に

今回は施設内のイベントを通じて、スタートアップのピッチに関する文章をまとめたのだけれど、これは大きな絵図を広げるのだとすれば人生の話なんだと思えた。

僕はどんな人も表現者であると思っている。
そう思っていようがいまいが、個人の意志は関係なく、社会の中では皆が何かしらのコミュニケーションで互いを発信し合っている。
その視点からすれば、ここに含まれている内容は自分がどう人生を生きているのかを表現する方法に関する話なんだと思う。
たまたま、自分で会社を起こして、そして関係性を作る必要がある人のことを僕がその側で観察しているだけ。

いつもそうだけど、何かを発信しようとする人が大好きだ。
これからも応援したいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?