見出し画像

今年も、Jリーグが始まった


電車を乗り継いで、平塚駅に向かう。

車内には、緑と青の服を着た人。赤のタオルを首に巻く人もいる。

家族と和やかに話す人がいれば、強張った表情でうつむく人もいる。



今年も、Jリーグが始まる。



去年の僕も、同じ場所へ向かっていた。

そのときは、同級生の坂圭祐を観に行くという明確な理由があった。

だけど、今年は大それた理由はない。そんなものは必要なかった。

しいて言えば、ベルマーレが好きだから。

Jリーグの開幕戦は、ベルマーレと決めていた。


昨シーズン初めてベルマーレに出会ってから、平塚に足を運ぶ度に、心を掴まれた。

ピッチ上では、「湘南スタイル」と呼ばれる攻守にアグレッシブなサッカーが体現されている。

華麗なサッカー、とは言えないかもしれない。

でも、彼らの泥臭く闘い続けるプレーには、僕の心を奮い起たせるパワーがある。自然と拳に力が入るような。

意識せずとも応援したくなる、不思議なパワーが。


心を掴まれた理由は、プレーだけじゃない。

平塚の人たちは、初心者の僕に温かく接してくれた。

ご当地グルメをご馳走してくれたり、グッズをプレゼントしてもらったり。

与えてもらってばかりで、申し訳なるくらい。

サッカーのサポーターは過激なイメージがあったけど、全くそんなことは無かった。

温かい。とにかく温かい。

僕はチームのファンであるのと同時に、サポーターのファンにもなった。


去年は、たくさんの話題がチームを取り巻いた。

世紀の大誤審と呼ばれた試合の逆転劇。そして、指揮官の退任。

歓喜に包まれることもあれば、悲壮感が漂うこともあった。

チームが苦しいときには、目に見えない相手から石を投げられ、謂れのない言葉を吐かれることもあっただろう。

でも、彼らは闘い続けた。


ベルマーレを愛する人の奥底にある「湘南スタイル」が、バラバラになりかけた彼らを繋ぎ止めた。

降格してもおかしくない状況を耐え抜き、J1の椅子を守った。

一人のファンとして、ますます彼らが好きになった。



激動の一年を遠い昔のように感じながら、平塚駅を降りた。

初めて来たときに、Google Mapを見ながらスタジアムへ向かったのが懐かしい。

今はもう、必要ない。

たくさんの旗が風に揺らめく商店街を抜け、スタジアムへ進む。去年と変わらない光景。

画像1

緑と青、そして赤に囲まれながら歩いていく。

着いた、平塚市総合公園。多くの人で賑わっている。

開幕を祝うかのように、桜が咲いていた。

画像2

広場では、子どもたちがボールを蹴っている。

ベルマーレの、Jリーグの未来を考えさせられる。気がする。

画像3

スタジアムへ続くフードパークは、大盛況だ。

老若男女、国籍は関係ない。敵味方も関係ない。それぞれの色を身に纏った人たちが、笑顔でお腹を満たす。

買う人だけじゃなくて、売ってる人の笑顔も印象的。

スタグルって、いいよね。

画像4

僕は餃子と茅ヶ崎メンチカツを買って、そのままスタジアムへ。

Shonan BMWスタジアム平塚。

また今年も、この場所に来れた。

サッカー専用ではないし、屋根もない。昔ながらで、決して良い設備とは言えない。

でも、愛着を感じる。まだ5回しか来てないけど。

照明に照らされたピッチは青々しく、美しかった。

画像5

選手がピッチに入ってきた。

同時に、スタジアムには歌声が響き始める。

ゴール裏では人が跳び、手を掲げ、大旗がうねる。

ベルマーレの声援も気持ちが入っていたけど、レッズも同じくらいか、それ以上に迫力があった。

今年は、彼らのホームスタジアムにも行ってみよう。

画像6

ピッチでウォーミングアップが行われている間、ベルマーレサポーターはチャントを歌い続けていた。

登録された全員分を歌ったのだろうか。途切れることなく、歌い続けていた。

選手は自分のチャントが聞こえると手を叩き、一礼。

選手はサポーターにとっての誇り。同様に、サポーターは選手にとっての誇りなのだ。

目の前の光景を見て、僕はそう感じた。


アップが終わり、あとは試合が始まるのを待つだけ。

スタジアムDJ、三村ロンドさんの声が耳に入ってくる。

実は一度だけ、お酒を共にしたことがある。

顔つきと同じく、とても優しい方だった。

そして、サポーターと親しく話す姿を見て、彼がどれほど愛されている人間かがわかった。

今までたくさんのスポーツを観戦したけど、僕はロンドさんのDJが一番好きだ。

サポーターや選手の気持ちを煽るコールはもちろん、ファンの気持ちに寄り添ったアナウンスも魅力的。

ロンドさんの声を聞けることも、ベルマーレ観戦の楽しみの一つだ。


大型ビジョンには、20周年を向かえたベルマーレの特別映像が流れ始める。

サポーターの声が文字に、そして映像になり映し出される。

目には見えない想いの集合体、それこそがチームなんだと、訴えかけられた気がする。

そして、選手紹介。

今年はどんなキャッチフレーズが付けられているか、実は前日からとても楽しみにしていた。

ロンドさんとサポーターのコール&レスポンス。圧巻だった。

コール&レスポンスの文化を創るのが、どれほど大変なことだろうか。

これも歴とした、クラブの積み重ねなのだろう。

タリクは下の名前が難しかった。早く覚えなきゃな。

画像7

両チーム、選手がピッチに入ってくる。

今年も、始まる。

ベルマーレのアンセムを掻き消すかのような、レッズサポーターの声援。

始まる前から好勝負を予感させる、この空気間を待っていた。

円陣が解かれ、一斉に散らばる選手たち。

審判が、笛を吹く。

今年も、始まった。

画像8


BMWで 共に闘う

おれらは歌うのさ 湘南のために


僕の好きな歌が聞こえてきた。

聞こえれば、自然と口ずさんでしまう。

覚えようとして覚えたわけじゃない。

気持ちをこめて歌っている姿を何度も目にして、気づけば僕も歌ってた。

そうして、他のチャントもたくさん歌えるようになった。

恐らく、今年中には全部歌えるようになってると思う。


開始まもなく、スタジアムは歓声に包まれた。

鈴木冬一のクロスに石原直樹の頭。

ベルマーレにしてみれば、理想的な展開だ。

だが、虎視眈々とゴールを狙い続けていた興梠慎三にやられてしまう。

続けてレオナルドにも。前半のうちに、逆転されてしまう。


これだ。

このハラハラドキドキの、空気感だ。

まさに一喜一憂。日常では味わうことのできない感情がスポーツには、サッカーにはある。

こんな試合を観戦できるなんて、僕は幸せだ。


後半、再び鈴木冬一のクロスに今度は山田直輝が合わせる。

これで2-2。Jリーグ最高じゃんか。

さらに、今シーズンから導入されたVARで、ベルマーレにPKが与えられる。

決めれば勝ち越しだったが、タリクのシュートはクロスバーに弾かれる。


タリクを責める気には全くならなかった。試合が終わったあとも。

新加入した彼は、よく走る選手だった。プレスを剥がされても、諦めずに追いかけるのが印象的だった。

チームのために走り回る選手を、責める気にはならない。

でも、おそらく彼の仕事は「ゴール」なのだろう。これからに期待している。

PKから10分後、逆にレッズに勝ち越しを許してしまう。

マルティノスの突破、関根の細かいタッチからのシュート。素晴らしいカウンターだった。

レッズサポーターからすれば、この上ない展開だろう。


試合時間は残りわずか。

また、僕の好きな歌が聞こえてきた。


緑と青の 勇者湘南

さぁ今日もゆこう 勝利めざして


勝負どころで始まる、このチャント。

ここまで手を叩いていなかった観客も手を叩き、口ずさみ始める。

何か起きるんじゃないか。

そんなことを感じさせてくれる。みんなを勇気づけてくれる。

きっと、何度もチームを救ってきた、特別なチャントなのだろう。

残念ながら、今回は数字に現れなかった。

でも、このチャントが試合の結末を変える日が、今年もあるに違いない。


2-3。

試合には負けてしまった。

レッズからしてみれば逆転勝利。さぞかし良い気分だろう。

勝つ日があれば、負ける日もある。どちらかが永遠に続くことはない。

勝って喜び、負けて悔しむ。それ以上はいらない。

悔しいと感じることができたことを、幸せに思いたい。

選手たちが、スタンドに挨拶に来た。

悔しさがひしひしと伝わってくる。

と同時に、すでに次を見据えていることも伝わってきた。

サポーターも、みんな分かってる。誰も悲観的なことは言わない。

ラインダンスは、すぐ見れるだろう。

頼むから、僕が行った日にやってほしい。

画像9


みんなと同じく、駅に向かう。

レッズのファンは、もちろん嬉しそう。これから一杯、なんて人もいるのだろうか。

ベルマーレのファンも、たくさんの人から笑顔がこぼれていた。

と思えば、帰りの電車では泣きじゃくる男の子がいた。

きっと、この試合に懸ける想いや、そこまでのストーリーがあったのだろう。

やっぱり、みんな待ちわびていた。この日を。

画像10


週末に、Jリーグがある。

みんな待っていた。

これから、いろんなドラマが生まれるだろう。

そこに行き着くまでのストーリーも注目されるだろう。

ベルマーレだけじゃない。

僕は今年も、いろんなスタジアムに行く。

去年行ったチームも、初めて行くチームも、全てが楽しみだ。

街の空気に触れ、人と出会い、クラブの色を感じる。

勝つ日も、負ける日もある。普段感じることのできない感情を、その場で味わう。

Jリーグは、僕たちにどんなものを見せてくれるのだろう。

僕が、あなたが、日本中のファンが、Jリーグに熱狂する。


今年も、Jリーグが始まった。




この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

興味を持っていただいた方は、サポートしていただけるととても嬉しいです。 いただいたサポートは、観戦記の旅費に使わせていただきます。

🙇🙇🙇
15
日本スポーツ協会(JSPO) /スポーツの観戦体験を書いてます / ハンドボール / 飴配ってます🍬 Twitter → https://twitter.com/shuki_saka?s=09
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。