談話室No.4 「強さ」と「競争」を至上原理とする社会

効率的な社会、均質な社会、「弱さ」を排除し、「強さ」と「競争」を至上原理とする社会は、本質的な脆さを抱えている。       〜辻信一〜

 「成り上がり」の主人公たちが身にまとう、あの独特なオーラやカリスマ性は、多くの人を魅了するのでしょう。あの豊臣秀吉も、あの岩崎弥太郎も。

 今回の文春砲で話題になったM氏についても「成り上がり」をキーワードとしたネット記事が掲載されていました。才能もあって、有能で、ゆえにお金を稼ぐ力があるというのは、この社会では強者なのかもしれません。したがって、批判するのはいつも嫉妬している弱者側人間だとなるのでしょう。

 ただ、こういう「強さ」だとか「競争」だとかが注目されすぎる社会は、やはり本質的な脆さがあるのではと思ってしまいます。

 WBSSを制した井上尚弥選手は、パウンド・フォー・パウンドにおいても1位選出され、今後がますます楽しみなスーパースターです。ボクシングにおいて、世界タイトル戦という大舞台に立つことは至難だそうです。まさに「成り上がり」。

 井上尚弥選手と同階級、元世界チャンピオンで今は引退された山中慎介氏は、ルイス・ネリ選手との最後の一戦で、ファン共々怒りの敗戦を喫しました。その後、共に健闘を讃え合うことができなかったと悔しがるあの姿に感動しない人はいません。

 あの姿が本当の強さだとすれば、私たちの求める強さとは何なのか。そこに脆さや危うさはないのか、辻信一氏の言葉を通して考えさせられました。

                               合掌

             ※冒頭引用(辻信一『弱さの思想』大月書店)


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