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海援隊の「スタートライン」から知る“孤独の価値”

 前回、宮沢賢治の『告別』を紹介し、“創作における孤独の大切さ”というものを書いたと思いますが、今回は海援隊の『スタートライン』という歌の歌詞から知ることのできる“孤独の価値”について紹介したいと思います。
 みなさん、もちろん海援隊はご存知ですよね?(いまの学生は微妙かしら)あの俳優の武田鉄也さんが1970年代に組んでいたフォークソンググループの名前です。武田鉄矢さんはもともと歌手からデビューした、というのももしかしたらいまは知らない方もいるかもしれませんね。


 
 海援隊には名曲がたくさんあるのですが、なかでもわたしがいちばんすきな歌が『スタートライン』です。
 まずは聞いてみてほしいと思います。


 ほんとうは歌詞がぜんぶいいので、すべて紹介したいところなのですが、全文をここにのせるのは著作権的にどうなのかなと思ったので、わたしがすきな一部分だけを抜粋して紹介したいと思います。




 まず、はじめの歌詞のこの部分
町は眠っている曇り空の朝に/
 自分の汗で自分を暖めて/
 寂しさ目指して走るひとがいる

 


 そしてサビの部分、
今私たちに大切なものは/
 恋や夢を語り合うことじゃなく/
 ひとりぼっちになるためのスタートライン




 このサビの部分を聞いたときに、わたしは衝撃にもちかい感動をおぼえました。
 なぜなら多くの歌詞で、「恋の楽しさ」や「友情のたいせつさ」は腐るほど語られていますが、そうして誰かと語り合うことじゃなく「ひとりぼっちになることこそが大切なのだ」、とここまではっきりといっている歌に出会ったことがいままでほとんどなかったからです。

 

さらに
「素直なやつほど傷ついてしまう/
 みんな上手にふざけて生きるのに/
 たったひとつの別れのために/
 まっすぐ涙を流すひとがいる」



 そしてわたしがいちばんすきな部分が、いちばん最後の
「向こう岸辺はあんなに明るく/
 町の灯が夜を焦がすのに/
 微かな星の光をさがして/
 闇をえらんで走るひとがいる/
 今私たちに必要なものは/
 光溢れる明るい場所じゃなく/
 闇にむかって走りだすためのスタートライン」
 です。

 



 「スタートライン」なんていうタイトルだから、てっきりただのあかるい曲かと思いきや、最後には「闇をむかって走りだすためのスタートライン」としめられている。
 こんな曲ほかにないな、と思います。


 いや、孤独について語られた歌というのは他にたくさんあると思います。
 だけどそういう曲はどこか暗い曲調や歌詞になりがちで、こんなにもポジティブに孤独を肯定し、やさしいフォークソングにのせてうたっている曲はなかなかないと思うのです。
 どうやらこの曲はかの有名なドラマ「金八先生」の主題歌にもなっていたそうです。いやー、このドラマでこの曲が流れてたら泣くなあ。












 
 

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