涅槃の迷走を読んで

最近、本を読む機会が多いのですが、赴くがままにアウトプットしたいなぁと思い、せっかくなので本の批評を書こうと思います。
今回ご紹介する本は垣根涼介さんの「涅槃」です。


なぜこの本をお勧めするのか

この本をお勧めする理由は2つあります。

主人公の人生を通して、生き方を学ぶことができる
戦国時代における当時の状況を知ることができる

主人公の人生を通して、生き方を学ぶことができる

この本の主人公はとある戦国大名を取り上げており、彼の人生を通して、周到に世の中を生き抜く術を学ぶことができます。
時には、主君を裏切ったり、敵対する大名と手を結んだりと今では考えられないようなことを行いますが、その過程での彼の葛藤や悩みにも触れながら生きることについて学ばせてくれる本です。

戦国時代における当時の状況を知ることができる

2つ目として、戦国時代の当時の状況を知ることができます。江戸時代とは異なり、下剋上(地位の低い人が上の人に代わって実権を握ること)が許さた時代であり、戦国時代だからこそ主人公が成り上がっていく描写がありありと記載されています。
現代と状況は異なるにせよ、戦国時代の状況を知ることで何か日々の生活に活かせる考え方が得られると思っています。

この本の筆者について

この本の著者は垣根涼介という方で、主に歴史・時代小説を中心に小説を書かれています。代表作として、2013年に出版された「光秀の定理」や2023年に出版され、直木賞を受賞した「極楽征夷大将軍」が有名です。今回紹介する「涅槃」は2021年に出版された本であり、主人公である宇喜多直家の魅了が詰まった本になっています。出版社は朝日新聞出版であり、最新刊として涅槃、上・下が2024年7月に出版されています。

要約

涅槃は、備前国の大名である宇喜多直家という歴史上の人物が主人公であり「歴史上最悪の武将」と呼ばれた男の一生涯を描いています。

この主人公は商屋と尼寺で育った異色の武将であり、策略を用いながら、備前国の大名となる過程が記載しています。

幼少期に宇喜多家は滅ぼされてしまい、両親ともに浪人として暮らしていたのですが、とあることがきっかけで、商屋の家で暮らすことになります。その後、母方の親戚筋である尼寺で生活することとなったため、大人になるまで、武士としての正規の教育も受けていませんでした。

やがて彼は、宇喜多家を滅ぼした武門で生活することになり、その後、自分の力で備前国(岡山県)を有する戦国大名となります。

しかし、その頃には西に毛利家、東に織田家という巨大勢力が迫ってきており、いつ攻められるのか分からない状況下で直家の孤独な戦いが始まります。

時には毛利家と手を結び、一方では織田家と結んだりと両家を手玉に取りながら、死の直前まで巧妙に戦い続けます。

見どころ

見どころとして、武士としての正規の教育を受けていない直家が備前国の大名にまでなれかのかであり、2つあると思っています。

幼少期に育った商屋での環境
直家の性格

幼少期に育った商屋での環境

幼少期に商家で暮らしていたものもあり、商業に関する需要性も認識しており、武士として暮らしていきながらも農業ではなく、商業がその地域を豊かにさせることは知っていました。
また、商業を通した情報網の構築にも力も入れており、常に新しい情報を仕入れることで、大きく勢力も拡大することができました。

直家の性格

主人公の性格も見どころの1つです。彼は幼少期に宇喜多家が滅びたせいで、両親ともに浪人の生活をしていました。友達は誰1人おらず、常に1人でいたため、内気な性格となりましたが、一方で思慮深く、疑いやすい人格形成がされました。
そのため、常に慎重で思慮深くありつつも、固定概念に囚われない方法で勢力を拡大しておきます。
時に手段を選ばない方法を用いて、敵に殺意を向けられることもあるますが、それは主人公の性格によるものです。

感想と共感

この本を読んで感じたことは主に2つあります。

1つ目は、固定概念に囚われない考え方です。
主人公である宇喜多直家は時には後悔しながらも手段を選ばず、勢力を拡大していきます。武士であればこうあるべき、こうしなければならないという考えがないからこそ、浪人から戦国大名に成り上がることができました。
似た例として、織田信長が挙げられます。彼も楽市楽座で商業を発達させ、その地域を豊かにすることで、勢力を拡大しました。また、彼は直属の軍隊を持つことで軍を素早く動かすことで他の勢力を圧倒していきます。このような考えは固定的な考えを持ち合わせていなかったからこそ、できたことであり、常に常識を疑い、何が正しいのか考えることの大切さを学ぶことができます。

2つ目は生きることの大切さを教えてもらいました。
弱肉強食の戦国時代において、どんな逆境でも止まらず前に進ことで自然と周りに人が集まり、より大きなことができる。時には運命に左右されながらも諦めないことを学ぶことができたと思います。

独自の視点

気になる点として、主人公である直家は幸せだったのでしょうか。時には親戚を殺害し、仕えていた一族をも滅ぼし、常に苦闘と不安を抱えながら日々を過ごす主人公にとって、人生は幸せだったのかと言われると私はそうですとは言えないです。
しかし、最後まで宇喜多家のこと、自分の家臣や子供たちのことを考え行動した彼にとって、人生は辛くもあり、充実したものだったと思います。
時に彼が亡くなる最後は、妻を見送られながらこの世を去っていくことは、彼にとって、この上ない喜びだったのかもしれません。

まとめ

この本を読むことで、異色の武将である宇喜多直家の生涯を知ることができます。彼の人生を通して、生き方を学ぶことができ、戦国時代における当時の状況を知ることもできます。
彼の人生は苦悩と困難の日々でしたが、前を向いて取り組むこと、生きることの大切さを学ぶこともできます。
彼は幸せと言える人生ではなかったかもしれませんが、充実した人生を歩むことができたと思っています。
私も彼の人生を通して、何か生活の一部に生かしていけたらと思いました。

お勧め

この本の作者である垣根涼介はいくつも面白い本を書かれています。
その中で私が特にお勧めする本を紹介します。

1. 極楽征夷大将軍
この本は室町幕府を作った足利尊氏とその弟の直義の生涯が描かれています。自堕落な兄とその兄を支える弟の友情を描いた作品であり、是非面白いので読んでみてください。

2. 信長の原理
この本は織田信長の生涯を描いた本であり、信長がなぜ天下統一を成し遂げる一歩手前まで勢力を伸ばすことができたのか彼の考え方を知ることができる本です。


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