育児いろはカルタ~ちりぬるを~
ち…チキンレース
体の大きさの割に、息子は食が細い。食べないのに何故こんなにでかいのか。質量保存の法則はどうした。食べないのに加え、離乳食の吐き戻しに一時期ひどく悩まされた。一匙を3として、20匙食べさせたとする。と、息子の腹には60収まっていることになる。だが21匙目を飲み込んだ途端……10吐く。ここで止めれば、まだ53の成果が残る。しかし、息子の腹のポテンシャルは60のはず。生じた-7の埋め合わせがしたくて、せめてあと2匙食べてくれよと、よせばいいのについ強行してしまう。しかし一度吐くとスイッチが入るのか、46、39、32と、かつて60あったはずの成果は見るまに減ってゆく。特に夕飯時にこの現象は起きやすく、仕事に疲れた夫が帰宅してまず目にするのは、ゲロまみれになってご機嫌な息子(汚れるのが楽しいらしい)と、その横で真っ白に燃え尽きた私だ。……さて、つい愚痴が長くなったが、チキンレースとは何のことかというと、この例でいうところの20匙と21匙の境目ギリギリまで攻める緊張感のことをいう。今少しえずいたか? いや、もう少しいけるんじゃないか? やめとくか? せめてこのおかずだけでも食べてくれないか? ……今はマシになったとはいえ、息子の食事は、未だ緊迫感と共にある。
り…龍が如く
息子を寝かしつけた後は、夫婦でキャバクラ経営に明け暮れるのが最近の日課となっている。ウチの家業はキャバクラですとかいう話ではない。龍が如く0のミニゲームの話だ。なかなか楽しくてゲーム本筋そっちのけで夜な夜な弱小キャバクラ・サンシャインを蒼天堀のトップにするため精を出している。とはいえ、早く本筋に戻ってクリアしなければならない。こんなに乳幼児にとって教育に悪いゲームはないのだ。現代日本をおそろしくリアルに再現した画面のなか、我々の操るキャラは車道に飛び出し車にはねられてはムクリと起き上がり、またスタスタと歩いていく。そして、喧嘩をふっかけられては相手をボコボコにする。殴るだけじゃない。ドスをヤンキーの肝臓あたりにねじ込む必殺技とか、バトルというより、いやこれ殺人ですよねと言いたくなる。息子の目に触れさせないためにも、早くクリアして押し入れに隠そう。
ぬ…ぬいぐるみ
昔から、人形の類を持つことにためらいがあった。顔のあるものを見ると、もしコレに感情があったらと考えてしまう。処分することになったら、悲しむんじゃないかと、余計な気を遣わなくてはならない。私はトイ・ストーリーシリーズがディズニーアニメのなかでも断トツで好きだが、この傾向を強化されたという意味ではこの作品を恨まなければならない。と、子どもが出来て人形は持ちませんとも言ってられなくなった。人形は今のところ持つ予定はないが、ぬいぐるみ系統は増える一方だ。……いや待て、トイ・ストーリーではミニカーや双眼鏡等、無機物を模した物にまで人格があった。そう考えると、気を遣わなくてはならない範囲が凄いことになる。大変だ。どうしよう。しかもその責任を負うのは私ではなく息子なのだ。なんとかしなくては。よし、メルカリでボニー※を探そう。息子よ、出来るだけ綺麗に使うんだ。慌てる私を尻目に、息子は今日も元気にしゃぶり噛みつき叩きつけている。
※トイ・ストーリー3参照
る…ループもの
夜、泣き声で目が覚める。隣で息子がバタバタしながら声をあげている。トントンしながら様子を見るが入眠しそうにない。眠い目を擦りながら起き上がり、抱っこして揺らす。のけぞって嫌がる。仕方なく授乳。満足したのか、眠り始める。ベッドの隅に息子を放り出し、その体勢のまま自分も寝てしまう。
泣き声で目が覚める。隣で息子がバタバタしながら声をあげている。トントンしながら様子を見るが入眠しそうにない。眠い目を擦りながら起き上がり、抱っこして揺らす。のけぞって嫌がる。仕方なく授乳しながら、前もこんなことがあった気がするとぼんやり思うが、そんなはずはないと打ち消す。育児書には、この月齢になったら朝までまとまって寝てくれると書いていた。そう何度も起こされてたまるか。満足げに眠る息子をベッドの隅に放り出し、布団も被らず力尽きる。
泣き声で目が覚める。隣で息子が(ry
を…手をふる
「を」はこれでいいんだろうか。まあいいや。赤ちゃんが習得するお手振りとして、バイバイ、パチパチ(拍手)、ハーイ(挙手)等があるらしい。私は息子にバイバイを覚えて欲しい。水族館のアシカショーみたいな、どこ見てんのと言いたくなるようなバイバイではなく、ニコニコ笑顔を振りまきながらするバイバイだ。これが出来たら、道行く人や支援センター職員方、ママ友からの愛され度は段違いに違いない。そんな不純な動機から、息子の顔の前でバイバイをしつこく繰り返しているが、なかなか覚える気配がない。どこか道の行き止まり、もしくは子育て支援センターの空き部屋とかに、わざマシンでも落ちてないだろうか。……また怒られそうな発想をしてしまったところで、今回は終わり。
~多分続く~