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ゲームの恨みは一生モノ 〜ポケモンをめぐる、父と、私と、長男坊〜

ポケモン、よくできてる。

動物、恐竜、生き物全般をこよなく愛す長男坊の心に、今クリーンヒットしているのがポケットモンスターだ。

マックのハッピーセットのおもちゃに「メザスタ」と呼ばれるゲームのカードがついてきたところから、さらに関心が高まっている。

おまけに、最近私は自宅でポケモン最新作・アルセウスをプレイ中。

「これはなんて名前?あれは?これは?」

昔のポケモンならスラスラ答えられるが、新しい子たちは「わからん…」と言いながら、変なニックネームをつける。

初めて捕まえたポケモンに長男とニックネームをつけるのが、親子のちょっとした楽しみだ。

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私がポケモンをプレイしていたのは、いわゆる初代赤。5歳のときのことである。

電器屋さんで予約していたポケモンを、父が運転する車で受け取りに行ったときの記憶が、今でもはっきりと残っている。

ワクワクしながら箱を胸に抱き、帰路。

家について、さあ、ゲームボーイに差し込んで遊ぼう!という私に、家で待っていた母は言った。

「宿題やってからね!」

5歳の私、公文式に通っていたので宿題があったのである!

いやいやもう先にゲームさせてあげてよ、と私なんぞは思うのだが、かくして私はおあずけ状態で宿題に黙々と取り組んだ。

これが終わったらゲーム。
これが終わったらポケモン。

そわそわそわそわそわ

……できた!さあ!ポケモンやるぞ!!!

私が振り返ると、そこには

私より先に、ポケモンの箱を開け、カートリッジをゲームボーイに差し込み、プレイしている父の姿があった。

?!?!


しかも父は、「最初の3匹」を勝手に選び、ニックネームまで付けていた!

信じられます?!?!
めちゃくちゃ泣いた。

今はニックネームその場でいつでも変えられるけど、昔のポケモンってニックネームつけたらおいそれとは変えられなかったのよ!

まぁもう怒るよね!

「リセット」や「データを消す」という概念がなかった私は、泣きながらそのままゲームを進めたのだった……。

その後、父は自分の分のゲームボーイと初代緑を購入。夜な夜なプレイしていた。おかげで私も通信交換できて嬉しかったよ。

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「ママ!このポケモンなに?!」

「ゼニガメだよ」

「カメ?かわいいね!ママはゼニガメ好き?」

「好きだよ〜。ゼニガメは、ママが初めて買ってもらったポケモンのゲームに出てきてたんだけど、じいじが勝手に選んでスタートしちゃったんだよね〜。名前も別のやつに変えられちゃっててさ…」

「名前、どうしたの?なおした?」

「結局ね、直さなかったの。最初は早く最初の名前に戻したいって思ってたんだけど、一緒に旅をするうちに、じいじが付けた名前以外はこの子に合わないなって思うようになったんだよね……」

実は、これは理由のひとつめ。

ふたつめは……父がゼニガメにつけていたのは、「私が男の子だったらつけようと思っていた」名付けの候補の名前だった。それを知って、私は子どもながらに、名前を変えたくなくなってしまったんだ。

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それ以来、長男はゼニガメを見るたびに「じいじが勝手に選んじゃったやつだー!」と叫び、私たちはそれを聞いてはドッと湧く。

私も、何かにつけて「お父さんが勝手にゼニガメ選んだ」「ニックネームも勝手につけた」と話に出す。

母は「よく覚えてるね」「またその話してる」と笑うけれど、私は多分一生言い続けるだろう。

ポケモンは、よくできている。

じいじも、私も、息子たちも、みんな巻き込んだコンテンツ。私が歩んできた道を、長男も歩き出す……のかもしれない。

「ママ!"おばっち"いたよ!つかまえよう!」と、じいじが大好きなゲンガーを指差す孫っちが、大人顔負けにゲームに興ずるようになる日は、親が思っているより近そうだ。

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