ポケモンと、息子と、わたし。

いてもたってもいられなくて、学校から走って帰った。

続きが気になって仕方なくて、布団をかぶって一睡もしないで冒険した。

ラストまで早くクリアしたくて、途中のギミックは無視してガンガン先に進めて、挫折して……手持ちのポケモンたちに「ごめんね」と謝る。

そんな日が私にもあった。

「宿題が終わってから!」「はやくご飯食べに降りてきなさい!」という母が、ゲームをしているとき以上に疎ましいことがあるだろうか。

発売日をワクワク待ち、はやる思いを押さえてパッケージを開け、スイッチを入れるあの瞬間の興奮は、何度思い出してもめちゃくちゃに甘美だ。

社会人になって、親になって、私はゲームから少し離れていた。たまに戻ってきても、思ったよりプレイできないことも、最後までクリアできないことも増えた。

だから、ここ数年は面白そうだと思っても、「ああでもない」「こうでもない」と理由をつけて、発売日にはなかなか買わない。

大好きなスプラトゥーンも、発売から数週間経ってから。そして今回買ったのポケモンスカーレットも、発売から1ヶ月ほど経ってから、ようやく覚悟を決めた。

散々それまで悩んでいたのに、買うと決めたらすぐにでも欲しい。近所のおもちゃ売り場でパッケージ版を買ってから、子供たちのお迎えへと急いだ。

かつての私なら、帰宅して即開封していただろうが、子供達の手前、お風呂やご飯、諸々のことを全て終わらせてから、カバンを開ける。

👩🏻「長男くん…見て…」

👦🏻「?! わあ!スカーレット…?!🥺」

ふふふ、いいリアクションだ。
私がプレイしているのを、兄弟2人も一緒に楽しんで見て盛り上がったくれたらいいなと思っていたので、心が弾む。しかし……

👦🏻「長男くんのために買ってくれたの?ありがとう!」

👩🏻「えっ」

👦🏻「長男くんはバイオレットがよかったけど、スカーレットでもいいよ☺️」

👩🏻「ちょっ」

👦🏻「最初の1匹はニャオハにしよう」

👩🏻「待って〜〜〜〜!」

そう、わたしは、4歳を舐めていた。

私がなにも教えなくても、長男は家から旅立ち、はじめの一匹を選ぶ画面まで進んでいた。ゲームをほぼ触らせてこなかったはずなのになぜ???
しかし思えば、私が自分のゲームボーイポケットでポケモン初代赤をプレイしていたのも5歳の時だった。むむむ……

かといって4歳をゲーム漬けにするのも(自分の過去は棚に上げる)とも思うし、なによりスカーレットは私がやりたくて買ったし……

「わかった。一緒に遊ぼう」

そう取り決めることとあいなった。

しかしこれが、案外ちょうどいい。
ジムリーダー戦などの大きなイベントは長男といる時に…と思うので、長男が不在の時はレベリングやアイテム回収、細かいやりこみ要素などを堪能しておく。
長男は長男で、ライドしてガンガン草原を走り回ったり、ポケモンを丁寧にゲットしていく。

進度こそゆっくりだが、楽しみながらプレイできている実感がある……!

ポケモンの好みが違うので、手持ちに誰を加えるかだけちょっと揉めるけれど、今のところ、親子で仲良くポケモンを進めている。

こんな楽しみ方があるなんて、今までの私は全く予想していなかった。

かつての私は、少しでも早くクリアしたい、少しでもたくさんプレイしたい、全ての時間をゲームに費やしたいと思ってソワソワしていた。
そんな時間も体力もなくなって、ゲームをやり込めなくなった、楽しめなくなってしまったと思っていた。

でもちがった。

誰かとゆっくり、味わうように、楽しむ方法もある。それを、子どもたちと、ポケモンたちが、教えてくれているような気がする。

「めざせポケモンマスター」を、電動自転車の後ろに乗った長男が歌い、前に乗った次男が「そら、さうじゃ〜!」と合いの手を入れる。「ぴかちゅー!」のところは、3人で。

大人になっても、楽しみ方が変わっても、ポケモンがそこにいてくれる幸せ。

「今日も帰ったら、一緒にポケモンしようね」と約束できる幸せ。

いつか別々のゲーム機で遊ぶ日が来ても、一緒に楽しめる親子でありたい。そう願う母なのであった。





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