しかく

日曜にはNHK将棋が流れる。

わが家のテレビのことだ。わたしがつけているわけではないので、もっぱら流し見をしている。

先の日曜も例にもれず、NHK杯トーナメントの一戦が流れていた。女流でよく名を聞く里見女流四冠と、今泉五段の対局。NHK杯のことは、早指しであることくらいしかわかっていない状態で見ていたのだけれど、かなり、そうかなり面白かった。

わたしにとっての将棋は「たぶん面白いんだけどあんまりわからないもの」で、3月のライオンは大好きで単行本も買っているし、2回くらい駒の動き方を読んでみたけれど、よくわからないものであることに変わりはなかった。面白くなるまでに時間が必要なんだろうな、といった印象だ。

それがどうして、里見さんと今泉さんの対局は、かなりエキサイティングなエンタメだったし、なにより盤がすごく視覚的に見えた。盤面をちゃんと見たのは、中盤「里見さんはブルドーザーみたい」というのを聞いて顔を上げたら、金と銀でできた“物理戦車”がそこにあったからだ。「ほんとだブルドーザーに見える!」。

そこから怒涛の形勢逆転に次ぐ逆転。AIがくるくる変わるのも流し見ながらにめずらしく思ったし、逆転劇のスピードにもエキサイトしていたけれど、なにより、盤面が視覚的になったことで、突然「なにを思って指しているのか」の片鱗が見えるようになったのに興奮していた。駒の動き方はわからなくても、解説の言わんとしていることがわかる。今泉五段の「一3飛」がどうして効いているのか、わからないなりに仮説が立てられる。そうか、こういうのを楽しむのか、とすんなり腑に落ちた。もっと知りたいな、の段に上ったような。来週が楽しみになった、と思う。

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