誘いを断った

 肯定感を爆上げしてくれた男性が、「屋久杉って興味ある?行ってみたいと思わない?」と誘ってきた。彼から恋人のように、付き合っても無いのに、ましてや彼の奥さんでもないのにハイキングに行った画像をガンガン送ってくることに辟易していた。そう、辟易していた自分を認めたのだ。嫌になっていた。彼には奥さんがいる。しかし彼曰く、「奥さんから離婚して欲しいと言われていて、突然子供が、それなら検診に行って欲しいと言い出し、行ったところガンが見つかって、ガンが治るまで離婚は保留になった」そして「ガンは治った」と。家庭内別居していて友達が欲しいとハイキングに行った先で、私と知り合った。私もその時は警戒心無く、というかどさくさに紛れてLINEを交換していた。彼から勝手にガンガン画像が送られてきて、最初は「なんだろうこの人?」という感じだったが、スピリチュアルなことなど話せたので、それが新鮮で、どんどんやりとりに夢中になった。一度浮気の定義の話になり、私は二人きりでデートするのはアウトだと思うと言ったが、彼から「妻からハイキングに行ってくれと言われている」と言われ、自分の中のアウトラインがボヤけて、その後二人きりでハイキングに行った。
 山登りをして、辿り着いた先は素晴らしくのんびりした場所でそこで缶チューハイを飲み、帰りは道に迷い歩き回り、彼の以前の仕事の自慢話を聞かされ、ヘロヘロに疲れた。もう二度と行きたくないと思った。しかし彼は違った。とても楽しくて疲れなかったこんなのは不思議だと。…いや、それ私がだいぶ気を使っていたからなんですけど…となったが言うのはやめといた。
 どうも境界線をズカズカ乗り越えてくるタイプの人間らしく、どこか大事な線がぶっ飛んでいるような感じの印象があった。
 友達が欲しくてハイキングに行っているのに、男友達すら作らず、女性と話しているのに独身男性に遠慮して突然話さなくなったりして女性に睨まれたと報告してきたり、矛盾に付き合って話を聞いているのが正直面倒にもなっていた。
 それでも我慢していたが、もう我慢をすることをやめた。
 関係をすっきりしてから誘ってくれと断った。
 とてもすっきりした。

 これができたのは、恋愛依存の自助グループに入ったからだと思う。不適切な関係を持たないという誓いを読んでいるうちに、そうだこれって不適切な関係だよなと感じ、それを断ちたくなったのだ。

 そして、それができた。一歩前進できた。

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