さんたま

<演劇台本>「さんたま」
作 すがの公(2015年10月)
■あらすじ
山田「ナメ切ってたらすべり止め落ちた~~!」人生15年にして大ピンチ!中学完全卒業前にこの黒歴史を揉み消さなくちゃ!「玉を人にぶつけなさい」森の神みたいな奴がくれた三個の玉と小さな大人!「キモい!小さな大人はいらないんだけど!」嗚呼!元ヤン母が追ってくる!
全部ジャージ入れに詰め込んで、とりあえず家出だな!ほんとに大逆転できるのかな!

■登場人物

前説1+山田治+男
前説2+ヒゲダリ+おっさん
前説3+相原誠
前説4+母+姉
前説5+ヤクザ+父
前説6+ペルセポネー+綾小路麗子
馬鹿
通行人A

01■家出

 夜中の札幌市中央区南15条西14丁目電車通りマックスバリュ側を南へ急ぐ中学三年生がいる。奇妙な歩き方をしている。

北風「びゅううううううん」

治「北海道札幌2月下旬の最高気温は5度で、夜中はマイナス4度になるから、昼間に溶けた路面が夜に凍って基本つるつるの路面。だからいくら道産子っつったって急いでもロードヒーティングの場所以外は走れないからつまり、こういうもどかしい急ぎ方になる」

 治、後ろを振り返り、まだ母が追いついてきていないことを確認する。
 そして、雪国走法で急ぐ

治「足の裏を地面につけたらそのまま固定しずらさない。足の裏全体に重心がくるように面で支える。次の足が地面について固定され重心が移ったら、やっと地面から浮かせて一歩踏み出す。これの繰り返し。氷の上で歩かない人はこの雪国走法がうまく出来ないから出張で札幌に来たよっぱらいがすすきのの交差点でよく派手に転んでいる。
つまり僕は今急いでいる。札幌市中央区南15条西14丁目電車通りマックスバリュ側を南へ急いでいる」

 治、振り返り、母の影にきづく

治「あ」

 治、雪国走法で去る。
 少し経つ

 追ってくるのは元ヤンキー、今レジ打ちの母

母「ああ、もう死にそう」

 母、雪国走法で去る。

治「中学は皆勤賞。成績は学年のトップを1年からずっと2組の相原誠と争ってきて最後の期末試験では僕が学年一位で勝利をおさめ優秀の美をかざった。わが中学に悔い無し。相原誠も相当悔しかったに違いないが、ずっと教科書とノートしか見てこなかったから、そいつの顔なんて知らない。志望校のSランク公立高校間違いなしトップで合格する予定だ。学力テストじゃ全国でも常に上位、北海道の札幌じゃあ、僕も相当上にいるんだから仕方がない」

 治、雪国走法で去る。
 元ヤンキーの母

母「ああ、もう死にそう」

 母、雪国走法で去る。

治「滑り止めの私立受験当日。見るからにバカそうなのがうじゃうじゃまわりにいて、これは左手でも勝ったと思った。事実、自分の名前は左で書いた。あきらかに僕一人があっと言う間に答えを書き終わり、あとの時間は自分のまわりの、真っ黒な頭が上向いたり下向いたり、揺れたり傾いたりするのを眺めていた。こんな問題に必死になるようなレベルの低い高校から僕は早いところ出たかった。たぶん一生こんな教室にくることは無い。そう思って僕は一人窓から雪深い校庭をみていた」

 治、雪国走法で去る。
 母登場

母「ああ、もう死にそう」(退場)

 森にすむギリシャ人みたいなやつ、スキーウェアを羽織っている。
 走ってきてころぶ。

ペル「いて!ああ!ケルベロス!ふんじゃった」

 治登場

治「スキーウェア着て何してんですか」
ペル「一万円拾ったの」
治「大人はうそつきだ」
ペル「玉の他になんか居た?」
治「人形なら捨てました」
ペル「捨てた!?どこに!!!」
治「忘れました」
ペル「パパのペット!」
治「おっさんの人形が?」
ペル「ケルベロス!」

 退場する

治「僕は、、、」

 治、最後の玉を巾着袋から出す

治「、、最後」

 母、追いつく
 治、玉を隠す

母「止まれ」
治「元ヤン!」
母「中坊が出歩く時間じゃねえだろ!」
治「バイト中だろ」
母「馬鹿か」
治「僕は馬鹿じゃない!」
母「治!」
治「その名前で呼ぶな!勉強をすればすぐわかることなんだ。はっきりしてるのは、母さんは結婚相手を間違えて、子供を作るタイミングを失敗たからこの先の一生を24時間営業のスーパーのレジ打ちで過ごすことになったんだってことだよ。あの父親が本物の太宰と違ったのは女と逃げたけど心中しなかったことだ。 姉ちゃんは中三でぐれてレディースになって、今は高校も行かずにヤンキーの家で暮らしてる。これは中卒の元レディースの母さんの血だ。
母さんの口癖は『死にそう』で姉さんの口癖は『殺す』であの父親の書き置きは『死んでやる』だった」
母「どこいく気!」ぴょーんぴょーん
治「藻岩山!」
母「冬だよわかってんの?!」ぴょーんぴょーん
治「僕だけは違う人間になる。遺伝子なんて信じない。僕はヤンキーにも太宰治にもならない!ぴょんぴょん飛ぶなよ!」
母「わからん!トイレ!!」ぴょーんぴょーん
治「わかってたまるか」
母「寒い!」ぴょーんぴょーん
治「バイト戻れ!」
母「限界!死にそう!」ぴょーんぴょーん

 母、ぴょんぴょん退場

治「一生パートだ!一生だ!!!K-POPにハマっていればいい!!」

 雪国走法開始

治「滑り止めの私立受験は大本命の肩慣らし。軽く高校試験会場の雰囲気に馴れておくくらいのつもりだったから、ちっとも真剣に選んでいない。むしろ、絶対行かないんだからって、家からものすごく遠いところをわざわざ受けた。もう受験勉強も3ターン目、参考書の次のページの内容も覚えている。だから受験勉強の合間の小旅行、気分転換のつもりで、私(わたくし)立鬼尻高等学校、鬼の尻と書いてオニジリ高校Eランクのバカでも受かる私立を受けた。
絶対に行かないために。それが、、悲劇のはじまり」

 音楽があがる

02■群唱

全員「まだ、
 何ものでも無くて、
 まだ、
 何にだってなれた。
 どこか、
 ぼんやりとして、
 だけど、
 本気だったあの頃、
 人生を、
 制して、
 世界と、
 戦う気でいた中三の、、」
治「僕は!」
全員「舞台は北海道札幌市
 雪の降る2月
 中学三年生男子 
 高校受験の季節 
 これは、
 ごく普通の、
 14歳の物語」
治「今日の昼間、滑り止め私立鬼尻高等学校合格発表」

 音楽あがり、消える

03■ナメ切ってたらすべり止め落ちた~~!

 2月末合格発表の日、朝9時
雑踏音「ざわざわざわざわざわざわ」

治「受験番号は124番。他の私立みたく郵送でくれりゃあいいのに。そう思いながら自分の番号が張り出されるであろうボードの一番前でその時間になるのを待った。」

治「110、111、112、やっぱ落ちないんじゃないかこんな学校。120、121、122、123、125。よし、帰るかー。」

 去ろうとして異変にきがつく

治「 110、111、112、やっぱ落ちないんじゃないかな。 120、121、122、123、、、125」

 自分の番号をみる

治「124」

 もういちど

治「 120、121、122、123、124(自分の)、125。なんだ。あるじゃないかー。124。こっちにはないけど、、、、、、あれ?」

 歯が抜けのみるからにバカ(ゲスト枠)が受かっている。

馬鹿「やったあ!いえい!!108番108番!やったあ!ダブルピース!」
治「おいそこのバカ、一緒にみてくれ」
馬鹿「オラもうみただに!ダブルピース&ダイナマイト」
治「だまれ!一緒にみろ!」
馬鹿「 122、123、125」
治「これ、124ではない?」
馬鹿「125」
治「125って124と違う?」
馬鹿「あたりめーだに、バカか」
治「あああああああああああああああああああああ」

 崩れ落ちる治

馬鹿「鬼尻落ちたのか?」
治「ナメ切ってたらすべり止め落ちた~~!」
馬鹿「俺受かったいえーい」

 馬鹿の受験票をもぎとり

治「こんな高校受かって嬉しいのか!」
馬鹿「うれしんだもんにー108番だにー」
治「おまえ、今までどう生きてきた?」
馬鹿「え」
治「おまえ、今までどう生きてきたんだよ!」
馬鹿「えっと、、最初は*********************。
 それで*****************ってなって
 じゃ、**************って軽い気持ちで、今、ゲストで」
治「えい」

 破り捨てる

馬鹿「ああああ!!」
治「おまえなんか!」
馬鹿「取り消されたらどうするだに!」
治「バカのくせにっ」
馬鹿「返すだに!」
治「くそお!!」

 そでに投げる

馬鹿「ああ!待て!合格!」

 馬鹿退場

治「三年間まっすぐ家に帰った。テレビもみなかった。ゲームもしなかった。夜更かしもしなかった。風邪もひかなかった。遊びに行かなかった。部活も入らなかった。 友達も作らなかった。
クラスで一人、しゃべらないで自習してきた!教科書の中身は全部覚えてる!これは、何かの間違いだ。あんな歯抜けが受かって僕がおちるはずがない!左手で書いた名前が不真面目にうつったのかもしれない!僕が校庭を眺める様子がもしかして、カンニングと勘違いされたのかもしれない。そう思って僕は」

04■2点答案、家出

 10時、私立高校の事務室
ドア「ガラガラガラガラ』
 グミ食ってる先生登場

グミ「名前も書いてあったし、カンニングとも思われてなかったよ。」
治「ネットでぐぐったんです!こんな滑り止めのEランクの私立落ちた奴なんて一人もいません!」
グミ「うち滑り止め高校だから合格者の10%しか通ってこないんだよ。みんな本当は来月の公立狙ってるから。うちとしては生徒来ないとつぶれちゃうから、入ってほしいわけ。だから10点くらいあれば合格。毎年不合格者って全体の2%もいないんだ」
治「2%」
グミ「内訳はまず、欠席。気が変わって来ない奴もいる。これが1%」
治「もう1%は?」
グミ「この後君、公立の受験控えてんだろ?」
治「、、、まさか」
グミ「察しがいいね。君、頭いいよ。たぶん、何かの間違いだ」
治「もっかい受けさせてください」
グミ「いやいやそういうわけいかないだろ」
治「なにかの間違いです!」
グミ「がんばんなよ、志望校」
治「いや、このままじゃ無理です」
グミ「終わったことなんだから」
治「まってください!」
グミ「閉店。がらがら」
治「がらがら!」
グミ「しつこいなー」
治「答案をください!コピーでいいから!」
グミ「だめだよそんなの」
治「おまえらにとっては!!」
グミ「、、」
治「おまえらにとっては毎年の!年に一度の!年中行事!仕事の一貫のルーティンワークかもしれないが!僕にとっては一生の!一生を棒にふるかどうかの瀬戸際なんだ!コピーでいいから!コピーでいいから!!!」
グミ「、、、、、」

 グミ先生、退場。

治「やばい、、、、やばいぞ。なんか。やばい」

 先生、答案のコピーを渡す

治「僕の答え!英数国3教科」

 ひったくり、一心不乱に答えを見る。

グミ「食べる?」
治「、、、、、、」
グミ「(ためいき)私が渡したって言わないでよ?」

 先生、退場する

治「、、、、、、、」

 治、答えを眺めるうちに、じょじょに答案にうずもれていく治

治「ひーっひ、ひーっひ、ひーっひっひっひ、、、、、ひ、、、ひっく、、ひっっく
 答え合わせ、しなくてもわかる。ひーっひっひっひ、
 答え、、、、、、まちがってる。合ってない、、ひとつしか
 初めて見た。これは正真正銘の、、、、2点の答案だ!!!」

 音楽"月の光明るいVer."

05■自宅

 11時、自宅に戻る

治「、、、、、、、」

 治、テキパキと家出の準備をはじめる。
 お金をもち、参考書をもち、学校鞄にいれ、
 書き置きを書き。
 鏡を見て
 誰もいなくなったことを確認し

治「そして僕は、家を出た。中学完全卒業前に、この黒い過去、黒歴史を揉み消さなくては」

 部屋の扉を開ける。
 照明が変わり音楽が、上がる。
 雪国走法を開始
 同じく雪国走法で通りすがる中学生や先生

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 競争しているようにも見える雪国走行タイム
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05■伏見中学、鮫島

 音楽消え
 12時、治の中学の廊下
 SEチャイム きーんこーんかーんこーん

治「卒業式まで学校になんか来るつもりなかったのに」

 男子123登場。学ランや開襟シャツ

1「これはこれは」
2「学年トップの」
3「山田治さんじゃああーりませんか」
治「だれだっけ」
1「佐藤!」
2「伊藤!」
3「佐藤!」
治「あー」
3人「わすれんなよー!」
治「察するに、きみらはクラスメイトってことかな」

 鮫島登場。リーゼント。

鮫島「週刊少年ジャンプ最新号買ったもの挙手!」
1「佐藤!」最新号出す
2「伊藤!」 最新号出す
3「佐藤!」 最新号出す
鮫島「鮫島!」 最新号出す
123「鮫島くん!」
鮫島「ういー」
123「ういーー」
鮫島「高校行ったらバラバラだ、ジャンプのみせあいっこも今日で終わりだな」
123「そっすねー」
治「バカか」
123「あああ?!」
鮫島「おい待て、俺たちをバカするからには、わけがあるんだろうな」
治「同じの買わないで4種類買えばいいのに」
123「?、、??」
鮫島「おい、意味のわからねえことを言うんじゃねえ」
治「はぁ(ためいき)」
123「やろお!」
治「(1に) 週刊少年ジャンプ (2に) ヤングジャンプ(3に)グランドジャンプ(鮫島に)Vジャンプ」
4人「、、、、、あああ!!」
鮫島「そいつはすげえや!!」
1「集英社少年青年コミック部門完全制覇まで残すは最強ジャンプとウルトラジャンプとジャンプSQ!」
2「毎日がジャンプ読み放題だ」
3「おまえ天才か!?」
鮫島「いつからあったんだ、その案」
治「1年の1学期」
5人「、、、、、あああ!!」
1「おれたち」
2「気づかなかった」
3「三年間」
鮫島「早く言えーー!」
治「そんな暇ない。僕は君らと違うんだから」
1「ふん」
2「友達甲斐のないやろーだ」
3「ともだちじゃねえよ」
治「僕、ちょっと急いでるんだ」

 治退場しようとする
 鮫島、指差しビシ!

治「?!」
鮫島「小学校までおまえ親友だったのにな」
123「鮫島くーん!」

 鮫島退場

治「暑苦しいんだよ不良!何が親友だ。マンガの読み過ぎだ!
 、、、あいつら、滑り止め私立鬼尻高受かっただろうか。あの能天気な顔、たぶん受かったに違いない。
 とすれば、僕は、あいつらより、、、、、」

 頭ぶんぶんぶん!!

06■美術準備室

 13時、美術準備室

治「担任のヒゲダリ!!早くしろ!」

 担任のヒゲダリが来る。爆発系白髪ヘアー

担任「こまったなぁ」
治「この答案自体がこの世に存在し無かったことになればそれでいんです」
担任「だって現にここにあるわけだ」
治「それはコピーです。本体は別にある。先生は担任としてなんらかの圧力をかけ、僕があんな低脳な私立にそんな答案を残さなかったことにしてくれればいいんです。大人なんだからできるでしょう」
担任「できねーよ」
治「美術教師なんかなんの役にも立たないな」
担任「体育教師だって無理だろ」
治「体育なんてこの世からなくなればいい!」
担任「むちゃくちゃなこと言うね」
治「だいたいあんたたち教師は身勝手だ。ああしろこうしろ言うわりに肝心なところは本人の自主性に任すだの」
担任「君は頭が良すぎるよ」
治「学年トップだの全国何位だのちやほやしたのはだれだ」
担任「私はちやほやしてた覚えはないぜ」
治「僕は騙された気分だ。こんなにがんばってきたのに、最後の最後、こんな仕打ちを受けるなんて」
担任「吸うかい?」タバコをさしだす
治「先生はテレピン油とシンナーで頭がおかしくなってるんだ!」
担任「まさしく、そうかもしれんねえ」
治「僕の世界は今壊れかけている」
担任「お父さんにでも相談したらどうだい治くん」
治「僕に父親なんかいません!そして僕を下の名前で呼ぶのはやめてください!頭がおかしくなりそうだ!」
担任「そりゃ悪かったな。悪いけど美術室じゃタバコは吸えないんだ」
治「学年トップの教え子の相談よりもタバコをとる」
担任「こりゃご挨拶だな。 君が私の教え子だったことが一度でもあるか?
私の教員人生の中でも君ほど私の教え子じゃなかった生徒はいなかったろうよ。
君はいつだって国語やら数学やらの本を美術室に持ち込んで、うつ向いてぶつぶつやっていたじゃないか。」
治「それでも教えるのが教師ってもんじゃないですか」
担任「知ったことかい。教師なんざ飯の種だ。」

 担任退場する

治「ヒゲダリ、教師の風上にも置けないな。
 父さんもああいった種類の人間だったに違いない」

 頭ぶんぶんぶんぶん

治「あああ!そんなことはどうでもいい。じゃあ、どうする。この汚点をぬぐい去らなくちゃSランク偏差値72公立札幌光北高校に合格するための来月3月3日の公立高校試験なんて出来やしない。考えろ考えろ。学年トップの僕に考えつかないはずがない」

07■綾小路麗子

 14時、自分の教室、3年2組
 SEチャイム きーんこーんかーんこーん
 クラスのセーラー服女子12がいる

12「くすくす、くすくすくす」
治「はっきり言って女子なんて生き物を教室に置いておくということ自体、根本的に間違っている。こいつらは勉強の妨げにしかならない。言動行動思考その全てが不可解で理解不能。常に小さな集団で蠢く女子という生き物は常にめざわりだ。小学校まではまだ話せたような気もするが中学になってからはもう脅威でしかない」
12「くすくす、くすくすくす」
治「見るな!!」
12「みてませーん」
治「忌々しい。少しは綾小路麗子のような明朗快活さを見習うがいい」

 治が想いを寄せる綾小路礼子がくる

麗子「山田くんチェケナウ!どうだった?」
治「あ、あ、あ、あ、」
麗子「あちしと同じ鬼尻高校だったでしょ滑り止め」
治「あ、あ、あ、あ、綾小路麗子」
麗子「受かってたポ!」
治「そう、良かったポ」
麗子「どんな馬鹿でも何もしなくても受かるようなEランクの滑り止め高校だけど」
治「(吐き気)うえ」
麗子「番号があるっていうのは素晴らしい。麗子ちょー感激しまくりんこ」
治「よかった」
麗子「山田君はそりゃ受かってんべ?ガチゆるぎなくねえ?」
治「あ、えと、うん」

 麗子、治の手を取り

治「あ」
麗子「お互い、本命滑ったら、一緒に通おうな!」
治「う、うん」
麗子「あ!吉田くんチェキ!あちしも鬼高受かったポーの感激椎名林檎!」

 麗子、退場

治「手、、、、いや!今は、それどころじゃない!!」

 女子123がくる

123「やーまだー♪」
治「消えうせろ」
1「ちょっと見てたんだけどー」
2「やばくなーい?」
3「山田ってむっつりくん?」
治「消えて、うせろ、話しかけるな」
1「普段しゃべんないぶんエロスためこんでっしょ」
治「会話に意味が感じられないんだお前ら女子!」
2「綾小路麗子も女子なんですけどー」
治「お前らと一緒にするな宇宙人め」
3「うわコレ告ったに等しくねえ?」
12「等しくねえ?」
治「え?」
3「綾小路麗子と話しているときチョーきもいんですけどーん」
1「山田チョーえろいから綾小路好きなのモロバレなんですけどーん」
2「鼻の下のびまくりんこ」
治「僕が?!」鼻を隠す
123「やーまだー♪」
治「消えろ!」
123「ぴゅーーん」

 女子123退場

治「、、、なに言ってるんだ。
 僕が、綾小路麗子を、好きだって?
 、、、なに言ってるんだ。
 僕が、綾小路麗子を、好きだって?
 、、、なに言ってるんだ。
 僕が、綾小路麗子を、好き」

 頭ぶんぶんぶんぶん!

治「何言ってんだ何言ってんだ!女子の言うことだ!ばかばかしい!それどころじゃない!僕は忙しいんだ!えーと。どうするんだっけ。そうだ」

 懐から2点の答案を出す

治「かんがえるんだ。これを、無かったことにする方法。考えろ、邪念をすてろ」

08■相原誠

 15時、学校の外
 セーラー服の地味メガネ女がくる。

誠「ふ、ふふ、ふふふ。こんにちわ」
治「なんだよ」
誠「いそがしかった?」
治「お前らバカと違ってな!」
誠「ふ、ふふふ。話すの初めてかも」
治「そうだね、そして最後だ」
誠「握手しよう山田治くん。ふふふ」
治「どこまで意味不明なんだおまえら女子は」
誠「今までのお互いの健闘を称えて」
治「もういい消えろだれだおまえ!」
誠「相原誠」
治「、、、え」
誠「ふふ、ふ。あなたと学年トップを争った」
治「争ってなんていないさ常に僕が優位に立っていた、、、女子だったのか、」
誠「ふふ、ふふふ。あたし影うすいから」
治「相原誠」
誠「握手、ふ、ふふふ、ふふふ」
治「、、、、、は」

 治、握手を受ける

治「、、、、」
誠「山田治くん?」
治「、シャンプーのかほり、、、いや!なにやってんだ僕。まずい。不合格になってから、どんどんバカになってきている。あああ、消えたい。消したい。畜生!こんなに頑張ってきたのに!三年間まっすぐ家に帰った!テレビもみなかった!ゲームもしなかった!夜更かしもしなかった!風邪もひかなかった!遊びに行かなかった!部活も入らなかった!友達も作らなかった!クラスで一人、しゃべらないで自習してきた!教科書の中身は全部覚えてる!僕は頑張った!僕こそ頑張ったんだ!!」

 頭ぶんぶんぶんぶん

治「女子に触ったの今日二度目かも」

 頭ぶんぶんぶんぶん

治「なし!なし!今のなし!」
誠「?」
治「用が済んだらどっかいけよ。メガネとったら美人かも相原誠」

 頭ぶんぶんぶんぶん

治「なし!なし!今のなし!」
誠「山田くん」
治「なんだよ」
誠「全部聞こえているよ」
治「くわ、か、くわ、か、こ」
誠「え?」
治「くわ」
誠「大丈夫?」
治「おてーーーーん!!!!!」
誠「なんていったの?」
治「また汚点~~~~!!!!!」
誠「???」
治「なにやってるんだ僕は本当は馬鹿なんじゃないのか消えたい!消えてしまいたい!死にたい!ガリ勉のメガネのネクラとは言え、女子の前で!これは二つ目の汚点だ!忘れて!忘れて!ああ!!神様!仏様!悪魔でもいい!これも聞こえてる?!」
誠「うん」
治「ああああああああああああああ」

 治、ひきつけを起こす

治「くわ、か、くわ、か、こ。こわっ。くわ」
誠「ひきつけ?!」
治「くわ、か、くわ、か、こ。こわっ。くわ」
誠「忘れる!忘れるから山田くん!」

 相原の胸に抱かれる形になる山田

治「うっがああああああ!中学だからまだ未成熟だけどこれは確かにおっぱいいーー!助けて!!僕が壊れるう!だれかあ!!うわあ!突然の雷!」

 SEごろごろごろぴかーーーーー!!!
 中学校の応援歌がかかる

治「バリバリバリバリビリバリプスン!!」
誠「雷なんて落ちてないよ!」
治「応援歌やめろよ!僕は言われなくても頑張ってきた!!」

 合唱部と応援団とおりがかり、くちずさむ

治「僕に歌いかけるのをやめろ!」
誠「山田くん!気をしっかり」
治「ああだめだ応援歌がおしゃれに聞こえてきた!僕は、ほんとに、頭が悪くなったのかもしれない!僕が、綾小路麗子を好きだなんて!しかもそれが、バレてたなんて!!」
誠「え?」

 曲あがり、照明変わり

 女子合唱部(綾小路麗子)と男子応援団(鮫島)と母とヒゲダリ登場
 手にボンボンをもってる。母、チアガール

 ■■■■■■■■■■
 歌い、踊り、応援する
 曲間に「ガンバーレガンバーレ」
 ■■■■■■■■■■

 <札幌公立伏見中学校 応援歌No.1>
  作詞/牧尾 ひろ子 作曲/先崎 貴代子
  編曲/すがの公

   1、風よ吹け 我ら北の子
   きたえたる くろがねの
   若人にみなぎる血潮 いま鐘はなる
   ふるいたて伏見 いざ伏見

   2、雪よ降れ 我ら藻岩子
   みがかれし しろがねの
   青春に沸きたつ力 勝ちどき高し
   いざゆかん伏見 いざ伏見

治「応援しないでーーーー!!!」

 合唱部だった綾小路
 森のギリシャ人みたいなのになる。
 緑の犬を持っている。

治「あ、森のギリシャ人!」
誠「何が見えてるの山田くん!?」
治「森のギリシャ人みたいのがみえる」
誠「山田君おもしろい!」

 暗

09■夢1・太宰治との思い出

 暗の中

治「そして、僕は夢を二つ見た。1つ目の夢はこんなんだった」

 音楽がかかる
 " ベルガマスク組曲 - 3. 月の光" クロード・アシル・ドビュッシー

 懐中電灯を持った、父が現れる。

治「ものおき」
父「かーさんには内緒だぞ」
治「うん」
父「いくつになった?」
治「8歳」

 月の明かり

父「おっきくなったな」
治「父さんは?」
父「うーん、だめだな」
治「だめ」
父「だめだな。てんでだめだ」
治「ふーん」
父「人生うまくいかないもんだ。治」
治「なに?」
父「父さんには、これがゴミに見えないんだよな」

 カセットテープレコーダー
 ここから曲が流れている。

治「うん」
父「それでちょっとまぁ、普通とちがってな」
治「太宰治?」
父「よく知ってんな」
治「かーさんが言ってた」
父「だったら良かったなぁ」

 間

父「いい曲だろ。これはだな。えーと、ドビュッシーの、ベルガマスク組曲 - 3. 月の光だな。わかるか?」
治「わかんない」
父「またくるわ」
治「どこいくの」
父「いいところいいところ」

 父、カセットテープを持って、月明かりに消える。

治「そして、もう一つの夢はこんなんだった」

09■夢2・森のギリシャ人会議

 会議前、ざわついている

エロース「久しぶりー」
アフロ「あ。どーも」
エロース「髪切った」
アフロ「ちょっとだけね」
エロース「あ、パチプロだ」
ガイア「ちっす」
エロース「勝ってる」
ガイア「全然っす」
エロース「男ほしーねー」
アフロ「エロい」
エロース「まだまだ」

 サイクロプス議長登場

サイクロプス議長「おはようございます」
全員「おはようございまーす」
ゼウス「定例会議をおこないます」
全員「よろしく御願いしまーす」
サイクロプス議長「議長のサイクロプスです。では、出欠とります」
全員「おねがいします」
議長「アフロディテさん」
アフロ「はい」(アフロのづら)
議長「ガイアさん」
ガイア「はい」(パチプロ)
議長「エロースさん」
エロース「はい」(えろい)
議長「サンタさん」
全員「、、、」
議長「サンタさんは?」
ゼウス「今日来るっていったろー」
議長「ちょっと遅れてるみたいなんで」
ゼウス「今日来るっていったろー」
議長「ええ、来るとは思うんですが」
ゼウス「今日来るっていったよー。聞いたよなー?」
議長「ええ、聞きましたが、、」
ゼウス「聞いた人ー!はーい!ええ?俺だけー?おまえ聞いた人でしょー?はーい」
議長「ゼウスさま」
ゼウス「ん?」
議長「えー。ちょっと集まりが悪いんですが、始めます」
ゼウス「ただでさえ人少ないのに」
議長「ゼウスさま」
ゼウス「プレゼント配りでいそがしいんだ、あいつ」
議長「えー、本日の議題はメンバー募集です」
ゼウス「勧誘してる?勧誘」

 黒いサンタ登場、まるでサタン

サンタ「遅れました」
ゼウス「遅刻」
サンタ「すみません」
議長「では、会議をはじめます」
全員「よろしく御願いしまーす」
議長「本拠地、ローマ、オリュンポスでもですね。神の人気が落ちて、久しく。人気をですね。回復したいということです。報告御願いします。アフロさん」
アフロ「アフロディテです。たとえば、えーと
 *******************したいと思います」
ゼウス「だめだなーそれは。それじゃ人は増えない。髪型のことばっかだもんなアフロはなー」
議長「ガイアさん」
ガイア「はい***************します」
ゼウス「だめだーだめだめ。増えない。それじゃ神、増えないよー。パチンコ。」
議長「エロースさん」
エロース「はい**************です」
ゼウス「だめだなー全然だめ。エロイ。エロイよ。服を着ようよまず」
議長「サンタさん」
ゼウス「子供にプレゼント配ってるーとか、クリスマス主催してカップル増やしてるーとか、結果出生率あげてるーとか、そういう話しじゃないよ」
サンタ「帰っていいですか」
ゼウス「なんでよおお」
サンタ「帰るわ」
議長「あ、サンタさん」
サンタ「だめ無理帰る」
議長「お願いします」
サンタ「なんだあいつ」
議長「ゼウスなんで、すいません」
ゼウス「余裕あるからなあキリスト系はさー」
議長「ゼウスさま。ちょっと控えましょう」
ゼウス「いいたいこと言うよ私は」
サンタ「ちっ」
ゼウス「舌打ちとか、帰るとか、やることがいちいち子供っぽいよ」
議長「ゼウスさま」
ゼウス「まず座ろうか。ねえ」
サンタ「、、、、、、、、、、、」
議長「御願いします」
サンタ「、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

 サンタ、座る

ガイア「まぁまぁここは、押さえて押さえて」
アフロ「若いなあ、サンタくんは」
エロース「若いときはわかんないこと、あるのよ」
議長「私も若い頃はそうでした。わかります」
ゼウス「いやいや、若いときはね、こうじゃないとね」
5人「あっっはっははっはっははっっは」

大人の雑談が始まる。ざわざわぺちゃくちゃ。天気だの、ニュースだの、教育だの、人生だの、子供だの大人だの、飲み会だの、男だの、女だの、野球だの、サッカーだの。

サンタ「どーでもいい」
5人「、、、」

 静寂

サンタ「どーでもいいんだよお前ら」
議長「ちょっと」
サンタ「おまえらになにがわかる」
ゼウス「君ねえ」

 サンタ、ゼウスを悪魔の槍で刺す
 SEザシュウウウウウ!!
 音楽、一定のリズムの音楽

サンタ「おまえらになにがわかるんだよ」
エロース「き、きゃあああああ!!!!!」
サンタ「おまえら大人が今までしいてきたレールに文句も言わずに乗ってきてやったんだ。覚えたくもないことも。おまえらの都合で全部。教科書通りに丸暗記 して。こんな無駄な点数レースを続けてきてやったんだ。おまえらは終わった人間かもしれないが。僕はまだ始まってもいないんだ。この第一歩が僕の人生を決 めるんだ。そう思っていまの今までおまえたち大人の言うことを聞いてきたんだ。おまえたちにも若い頃があって。このよくわからない季節を経験したというな ら。僕の苛立ちを少しくらい理解してくれてもいいじゃないか」
アフロ「け、警察!」

 サンタ、アフロディテを悪魔の槍で刺す
 SEザシュウウウウウ!!

サンタ「何が私のような大人になるなよだ!無責任なこと言いやがって!」
ガイア「た!助けて!」

 サンタ、ガイアを悪魔の槍で刺す
 SEザシュウウウウウ!!

サンタ「何があなたのために言ってるのよだ!ふざけるな!」
エロース「や、やめて御願い」

 サンタ、エロースを悪魔の槍で刺す
 SEザシュウウウウウ!!

サンタ「何が好きなことをやったらいいのよだ!思ってもないくせに!
 お前らみたくなってたまるか!なるもんか!
 俺は!お前らなんかよりずっとすごい神様になってやるんだああ!」
議長「悪魔、、、悪魔あああああああ!!!」
サンタ「、、え?」

 音楽あがる。暗

10■保健室

 16時、保健室の瀬釜先生。おかまにしか見えない。

誠「突然倒れました」
瀬釜「うーーん(のび)第二次成長のせいかなぁ」
誠「違うと思います」
瀬釜「まさか中学生なりの性の知識でお医者さんごっこ」
誠「してません」
瀬釜「先生もそうだった。生殖器のことばっかり」
誠「考えてません」
瀬釜「山田くん。先生のことを性の対象として観てた、そんなとこ?」
誠「違うと思います」
瀬釜「私なんてきっと男子生徒の妄想でめちゃめちゃよ」
誠「ヒゲ生えてますよ」

 瀬釜、鏡を見て、ヒゲを手で抜く

瀬釜「ふん!」
誠「!」
瀬釜「きれいになったかしら」
誠「いえ全然」
瀬釜「あんた嫌い」

 起きてくる治

治「夢、二つ見たけど後ろのが奇抜で一つ目忘れた」
誠「オサムー(手をふる)」
治「(無視)僕、どうしたんですか」
瀬釜「どれちんちん見せてごらん」
治「どうもお世話になりました」
瀬釜「あらもういっちゃうの?」さわる
治「さわるな!」
瀬釜「あらぶってるのね。わかるわその気持ち。ずっとここに居てもいいのよ」
治「そんなわけないだろ」
誠「おかま」
瀬釜「おまえ今ついでになんか言ったろ」
治「どっか行ってくれませんか」
瀬釜「ここあたしん家よ」
誠「保健室でしょ」
瀬釜「保健室」
治「ここにいると具合が悪くなる一方だ」
瀬釜「つぎいつ来る?」
治「もう来ないです」
瀬釜「第二次成長まっただ中の中学生は、人生において最も性欲が昂る時期なのに?」
誠「不良の鮫島くんが先生探してました」
瀬釜「ごめん!ちょっと期待に答えてくるね」

 瀬釜先生退場

治「おまえ勝手なことべらべらやめろよ」
誠「え」
治「ベッドで聞いてたよ。僕のこと、友達とか」
誠「ふふ、つい嬉しくて」
治「いつ友達になったんだよ」
誠「握手したし」
治「あとは」
誠「胸さわった」
治「さわってない!」
誠「ふ、ふふふ」
治「胸さわったら友達になるのか!おかしいだろ」
誠「ふ。ふふ。友達以上?ふ、ふふ」
治「おまえ気色わるいぞ」
誠「人と会話普段しないもので」
治「え」
誠「勉強してたから」
治「三年間?」
誠「そう」
治「それは僕も同じだ」
誠「ほんと?」
治「本当」

 間

誠「オサムー(手をふる)」
治「名前で呼ぶな!」
誠「親しみをこめたい」
治「とにかく名前で呼ぶな。その名前が嫌いなんだ」
誠「友達にはなってくれる?」
治「、、、、、まぁ」
誠「ほんと?!」
治「、、、、、あ!」

 頭ぶんぶんぶんぶん

治「相原誠。志望校はもちろんSランク光北高校だろう」
誠「うん」
治「魂胆は読めた。僕を弄んで不合格に陥れ、自分の合格を確実にしようという魂胆だな」
誠「、、」
治「どうだ!」
誠「ふ」
治「ぬ」
誠「ふっふふ!はーっはっはっは!ばれたか!さすがは宿敵山田治だ!こうも早く私の作戦を見破るとは恐れ入ったぞ!敵ながらあっぱれだ」
治「薄汚いやつめ。じゃあな」
誠「待てぇ!ばさああ!」
治「!」

 相原、赤い、毛糸玉で山田を巻く

誠「♪すっきすきすっきすっきすっきすきすーきすき♪」
治「なにやってる!巻くな!なんのうただ!」
誠「♪すっきすきすっきすっきすっきすきすーきすき♪綾小路麗子♪」
治「ゾクぅう!!」
誠「綾小路麗子との運命の赤い糸でしょ!?馬鹿だけど元気いっぱい学園のマドンナ綾小路麗子が好きなんでしょ!?」
治「しまっったああああ」
誠「ふふふ、うふふふふ」

 瀬釜再登場

瀬釜「鮫島ってガキあたしの事なんて言ったと思う?!」
誠「先生胸毛出てますよ」
瀬釜「うそ!今朝剃ったのによ!」

 瀬釜退場

治「くそ!くそ!くそ!」

 赤い糸をほどく。捨てる

治「じゃ。僕は忙しいから」

 治退場
 相原残る

誠「、、、、、、、」

 暗

11■ペルセポネー

 17時、道ばたに座っている治

治「寒い。お腹も空いた。まず。コンビニで手袋買うか。そうだ。この辺に24時間の牛丼屋があったような」

誠「(そぉっ)ふっふふふ。ふふふふ」

 誠、治の様子を見てる。
 治、ふりかえる

誠「!!」

 隠れる。

治「くそ、まだ見張ってる」

 学校鞄をあける。ジャラ銭が入っている感じのぶたの貯金箱
 ふってみる。ぎっしり入ってる様子。

治「所持金。毎月のこづかい。中1でひと月700円、中2で800円、中三で900円を使わないで貯めてきたから三年間で合計28800円、ひくことの、 3月4月分で27000円。中学になって今まで勉強しかしてこなかったから、小遣いなんか気にしたことなかったけど、これ、何日もつんだろう」

 間

 向こうからなにかが歩いてくる。

治「なんだ?」

 ■■■■■■■■■■■■■■■
 緑をかぶったパグ犬が歩いてくる。
 ■■■■■■■■■■■■■■■

治「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

 パグ犬止める。

治「、、犬?」

 酔っぱらった森のギリシャ人みたいな女が釣り竿、ワンカップを持ってやってくる

ペル「ああ良かったケルベロス!」
治「地獄の番犬?」
ペル「待ってって言ったのりー」
治「森に住むギリシャ人みたいな人」
ペル「ちょっと!ないてるから!」

 森、パグ犬をひったくり止める

ペル「今、つるからねー。鴨々川で、鯉釣るからねー」
治「、、、」

 治、何も言わずに居なくなろうとする

ペル「こおら!」
治「え」
ペル「なんもなし?」
治「やばい人かなって」
ペル「冥界のハデスの嫁、ペルセポネーです。ひっく」

 居なくなろうとする

ペル「なんか言って!」
治「酒」
ペル「夫の冥王ハーデスは妖精メンテーと浮気、嫉妬に狂った私ペルセポネーは『お前など雑草になってしまえ』とメンテーを踏みつけて呪いをかけました。これがミントの始まりです」と、草を食べる
治「こわ」
ペル「さみしい。スカートなっがい」
治「寒くないですか」
ペル「オリュンポスとは大違いねー。ひっく。あ、無くなった。腹減ったなぁー」

 森の人、ねっころがり、眠る。

 ■■■■■■■■■■■■■■■
 ケルベロスがペルセポネーに向かっていく
 ■■■■■■■■■■■■■■■

治「、、、、」

 治、退場

ペル「、、、、、、、、、、、ぐー。ぐー」

 治、やっぱり戻ってくる
 暗

12■すき屋

 18時

ペル「いやー。おいしかったわ。あれ何?」
治「牛丼メガ盛730円です」
ペル「ケルベロスが食べたのは?」
治「山かけまぐろ丼710円です」
ペル「捨てたもんじゃないわ日本」中瓶をラッパのみ
治「サッポロラガービール中瓶600円」
ペル「あんたいい奴だね」
治「ユーロしか持って無いっていうから」
ペル「返す返す返す返す絶対返す。ひっく」
治「別にいい」
ペル「これお礼」

 森の人、お礼に巾着ぶくろをくれる

治「なんですかこれ」
ペル「たまあげる。たま。」
治「たま?」

 袋の中をさぐると
 小さいおっさん人形が出てくる

治「なんだこの人形、気持ち悪い」

 袖になげる。

おっさん(声「(小声)いって!ちっきしょ」
治「え?」
おっさん(声「しまった」
治「なんか声」
ペル「ねこでしょ」
おっさん(声「にゃー」
治「猫かなぁ」
ペル「3玉(さんたま)入ってる」
治「ボール?僕は運動得意じゃないから」
ペル「だいじょぶだいじょぶ。ぶつけるだけ」
治「ぶつける?」
ペル「ぶつけられた人はぶつけた人の言うことを聞くのよ」
治「へ?」
ペル「そういう魔力のこもった、たま」
治「魔力?」
ペル「誰か暇そうな通行人Aが通りかかるのを待とう」
治「そんな都合よく通りかかり(ますか?)」
通行人A(声「暇だなー」

 通行人A通りかかる

通行人A「暇だから、ここ通行しちゃおうっと」
治「きた」
ペル「えい!」

 何か、魔法のような音がする。
 SE魔法ズしゃーーーンンン!!
 通行人A雷に打たれたような顔になりストップモーション

ペル「****のものまねをしろ」
通行人A「、、、」

 ****ものまねををやる

3人「、、、、、、」

 SE魔法ズシャーーーンンン!!
 通行人A退場

治「ほんとに言うこと聞いた!」
ペル「ケルベロス、とってこい」

 ケルベロス、とりに行く

ペル「一度命令のこもった玉はまたつかえるから」
治「****のものまねの?」
ペル「うん。使うでしょ?」
治「いや。使わないと思います」

 ケルベロス、もってくる

ペル「ほら!ケルベロスがせっかく持って来たんだから!」
治「あ、ありがとうー」いったん受け取る
ペル「おーよしよし」ケルベロスを抱きかかえる
治「(小声)いらねーや」

 すきを見て相原のいる方に捨てる

ペル「じゃあね少年」

 ペルセポネー、巾着袋を渡して、行こうとする

治「これ」

 音楽、悪魔

治「なんでも言うことを聞く?」

 ペルセポネー、ふりかえり

ペル「な~んでも、言うことを、聞くよ(悪魔のにやり)」

 治、玉をひとつ取り出して、魅入る

治「なんでも、、、」

 ペルセポネー、満足そうに見ている。

治「これがあれば、、、無かったことにできる」

 ケルベロス、うごめく。
 ペルセポネー、可愛がりながら退場する。

 曲あがる。
 その様子を見ていた相原、
 ものまねの玉を持って登場

誠「おさむくん」
治「その名前で呼ぶな!!!!」
誠「!!」
治「おまえも、、、消すぞ」
誠「、、、え」

 相原を残し、治、行く

誠「治くん」

 曲消える。
 心配そうに治の方を見る相原

おっさん「ちっ、参ったなぁ」

 人形そっくりなおっさんが人形を持って出てくる

誠「え」
おっさん「あいつも悪魔に魅入られたぜ」
誠「しゃべった」
おっさん「しゃべるよ」
誠「生きてる?」

 おっさん、自分の人形を動かす

おっさん「生きとる」
誠「動いてる」
おっさん「動くよ。ほらほらほら!」
誠「わあわわわわわ!」
おっさん「こんなことも!こんなことも!」
誠「うわあああ」
おっさん「おれはだな」
誠「きもちわり!」

 袖になげる。

おっさん「投げるなあー!」取りに行く

 戻ってくる

おっさん「人間を投げるな!どいつもこいつも!」
誠「ちいさいおじさん」
おっさん「聞くかい。ちっさいおじさんの、過去」
誠「いや、いいです」
おっさん「おいい!!聞けよ!食いついてくれよ!俺、ちっちゃいだろ!でももう50歳だぞ?不思議だろう!」
誠「別に」
おっさん「まさかだ!まさかだな!こぉーんな小さいおじさんしゃべって動くよ!?これは、そうそうあることじゃないと思うよ俺は!」
誠「はあ」
おっさん「質問ないか!ほら!答えちゃうぞ!」
誠「、、、、就職してますか」
おっさん「ほんとに聞きたいかそれ!?」
誠「いえ」
おっさん「聞きたいこと聞けよ!なんで小さいんですかとかさ」
誠「なんで小さいんですか?」
おっさん「そうさなぁ、聞くかい。小さいおじさんの、過去(相原いない)うそだろ!まさかだな!」

 おっさん追って行く。

13■無かったことにするために

 SEチャイム きーんこーんかーんこーん
 治、たまを一つもって、人間を選んでいる

治「冥王ハーデス、ペルセポネー、ケルベロス、地獄の死者。
 、、、、父さんが残していった本で読んだ。
 まずあたりさわりの無い人間で、ためそう」

 保健の瀬釜

瀬釜「もう下校時間とーっくに過ぎてるのに先生を待ち伏せ?」
治「、、いや、ええと、はい」
瀬釜「さっきは女の子がいたから言わなかったんだけど」
治「なんですか」
瀬釜「あなたうわ言で、『いいところ』って言ってたの。心当たりある?」
治「(ある)ありません」
瀬釜「先生セラピストの免許も持ってるの。悩み事、先生に話してみたらどう?もちろん秘密は守るわよ。男と男の約束よ。うふ」
治「悩みなんてないです」
瀬釜「治くん」
治「名字で呼んでください」
瀬釜「どうして?」
治「下の名前が嫌いだから」
瀬釜「それはつまり名前そのものが気に入らないのかしらそれとも名付けた人との確執かしら誰がつけたのかしら(治「やめて」)お父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃん中学生の男子が肉親に対しての嫌悪感をいだくというの(治「やめてください」)はとても正常なことなの多くの中学生は親と口を聞かなくなっ たりするわねそれは思春期の照れもあるけど生物学的に(治「やめろ」)自立していこうという生き物としての葛藤でもあるの(治「やめろ」)親と子の確執が産まれるのは歴史的にも必然ましてこの高校受験(治「やめろ」)という人生初めての難関で」
治「ほっといてくれ僕にかまうな消えろ!」

 玉を、なげつける。
 暗
 SE魔法ズシャーーーンンン!!

治「、、、、あ、、ははは」

 明

治「消えた、、、、ほんとに、ほんとに消えた。あはは!おかまが消えた!」

 たまを掲げる
 音楽"博士の曲"

治「僕はもう、怖いものなんか無いぞ。
 これで。
 このたまで。
 僕の失敗を知っている奴を
 消していけばいい。
 僕をバカにする人間は
 消してやればいいんだ
 簡単だ!」

 退場する。
 その様子を見ているペルセポネー
 黒い、マントを羽織っている。
 聖書を開き、読む。

ペル「また,悪魔はイエスをとりわけ高い山に連れて行き,世のすべての王国とその栄光とを見せてこう言った。『もしあなたがひれ伏してわたしに崇拝の行為をするならば,わたしはこれらのすべてをあなたに上げましょう』」

■おっさんの過去

 おっさんと相原がくる。

誠「それじゃ、小人じゃないの?」
おっさん「こんな夢のねえ小人がいるかよ」
誠「それじゃあ」
おっさん「もとはまともな人間だった。お前らと同じくな。いまじゃあ小さいおっさんになっちまった」
誠「どうして」
おっさん「俺、出来は良かったんだ。中学高校大学首席で卒業して、いい会社入った。どういうわけか頭がおかしくなった。結婚して二人の子供いたんだがな」
誠「頭って」
おっさん「書き置きして家を出た。『死んでやる』ってな」
誠「どうしてそんなこと」
おっさん「それがわかれば、小さなおっさんにはなってねえ」

 ワイシャツネクタイの男(=治)が登場する

おっさん「これ、若き日の俺」

 セクシーで派手な医者登場する

おっさん「これ、精神科の先生」

 劇中劇がはじまる

男「治りますか先生、僕の自殺願望は」

 医者、患者を見ずに望遠鏡をのぞいている。グラサン

男「先生グラサンで望遠鏡のぞいていますね」
医者「好きなんです」
男「そういえば先生の顔、見たことがない」
医者「こんなです」

 ジュディオングの切り抜き

男「ジュディオングですか。先週はアグネスチャンでしたね」
医者「占いでも行ったらどうですか」
男「またそんな」
医者「私、薬を切らして体調が悪いんです」

 占いの館ペルセポネー、黒いサンタの格好をしている

男「占いの館『ぺるせぽねぃ』」
占い師「過去に動物を殺したような経験は」
男「小さい頃飼ってた、カエル、金魚、ジュウシマツ、犬。あれは僕が殺したようなもんだ」
占い師「この住所にいけば、あなたについた悪いものを取り除いてくれるでしょう」
男「なんかついてるんですか僕」
占い師「そうねー」

男「薬屋『さんたま』北海道666番地444号、随分と縁起の悪い住所だ」
薬「アルヨアルヨイロンナクスリ
 ビックリメンタマトビダスヨ」

 薬屋『さんたま』薬売り、黒いサンタの格好をしている。

男「あのう」
薬売り「これをあげましょう」
男「くれるんですか」
薬売り「この薬をお飲みなさい。でも、ここぞとういう時にですよ」
男「さん、たま」

 男、一人で街をあるきはじめる。

男「仕方が無い会社に行くか」

 転ぶ

男「北海道の人はどうして転ばないんだろう。いけない、さんたまが落ちた。(拾う)」

 会社、上司

上司「なにぼさっとしとるんだ」
男「生活、仕事、趣味、勉強、考えてみればここぞってときはないもんですね」
上司「書類を片付けてまず身の回りをだな」

 秘書

秘書「部長お電話です」
上司「むん」
男「うるわし聖子さん」
秘書「3年努めて初めて話しかけられた」
男「ここぞだ」

 さんたま薬を一包呑む

男「僕と結婚してみませんか」
秘書「でもあの彼が」
男「そりゃしかたがないな。部長」

 部長もどってくる

上司「ぬ?」
男「張り合いが無くなりました」
上司「仕事とはそういうもんだ」
男「ここぞだ」

 さんたま薬を一包呑む

男「会社やめます」
社長「は?」
秘書「ちょっと」
男「この薬はたいしたもんだ。ここぞで呑めば勇気が湧いて、不思議と何でもできるような気がする」

 男、走り出す。街の中

男「ここぞ、ここぞ、ここぞ、ここぞ」
やくざ「けっけっけっけ」

 男、やくざ1にぶつかる

男「どん」
やくざ1「人身事故や!救急車や!」
やくざ2「一生治るかわからんで?」
男「ちんぴらかー」
やくざ12「なんやとこらあ!」
男「ここぞだ」

 さんたま薬を一包呑む

男「喧嘩してみよう」
やくざ2「やくざパンチ!」
スロー音「ち、ち、ち、ち、、」

 全員スローモーション

男「こういう輩だって毎日だれかを殴っているわけじゃないだろうからそんなに強いわけじゃないのかもしれない。実際、よく見れば避けられないこともないけど、いちお当たってみよう」

 SEボグ!男なぐられる

男「うーーーん。思ったより痛くない本気でこれですか?」
やくざ12「きしょくわる!」
男「下っパじゃ話にならんな」

 ボス

ボス「どないしたんや」
男「あなたボス?」
ボス「せやなぁ」
男「ヤクザの世界はここぞって時ばかりですか」
ボス「そうでもない」

 さんたま薬を一包呑む

男「いっぺんに来い」
やくざ1「なめくさって!」
スロー「てぇてぇてぇてぇてぇてぇ」
やくざ2「いてまうど」
スロー「どぉどぉどぉどぉ」

 スローモーション、
 男、ふたつのパンチをよけるついでに
 ボスの顔面にパンチを誘導する

よける音「ふぁじゃふぉう」

 SEボグ!ボスなぐられる

男「ここぞ、ここぞかぁ、もう恐れることは何もない。ぼくは文学でもやってみようかな。」

 男、退場

ボス「目の奥に、、、悪魔が見えたで」
12「ひぃ!」逃げる

おっさん「そして俺はその薬を持って世界を放浪した。韓国、マレーシア、アフガニスタン、インド、パキスタン、ドイツ、フランス、イギリス、ロシア、アメ リカ、メキシコ、ブラジル、チリ、ブラジル、メキシコ、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、パキスタン、インド、アフガニスタン、マレーシ ア、韓国、、そして数年後」

 男、ヒッピーになってもどってくる。グラサン、髪飾り、首飾り、ちびギター。
 膝で歩くのですごく小さい。

男「10年後、俺はジャパンに戻って来た」
誠「すごい感じ変わってるんだけど」
おっさん「ヒッピーをかじった」
男「世界中で危険な目にあったがこいつのおかげで乗り切った」

 転ぶ

男「やっぱり雪の道はサイケデリックだな。おっと。大事なさんたまが」

 拾う。あることに気づく

男「こいつは面白い。長い間持ち歩くうちに文字が変わってる」

 さんたまの散薬包みの文字が変わっている

誠「、、、魔王、、サタン」

男「この薬を呑むたびに俺の身体が縮んでいるような気がしていた」
誠「え」
男「立ち膝くらいに縮んだ気がしていた」
おっさん「気のせいじゃなかった」
誠「ほんとだ」

男「ひさしぶりの札幌か」
おっさん「とその時!」
医者&秘書(声「たすけてえ!」
男「なんだ!」

 ボスが医者をひきずってやってくる

ボス「昔は漢を通した俺も今じゃ下請けヤクザときたもんだ」

 秘書と医者、首だけ出す

秘書「薬をちょうだい!」
ボス「金を返してからだ秘書」
医者「薬がなきゃ仕事にならんのだよぉ」
ボス「じゃあ内蔵を売り飛ばすか精神科医」
男「おい!ラブ&ピースだ!」

 立ちはだかる

男「おまえは、、」
秘書&医者「兄さん薬もってないかい」
ボス「ヤク中の女はすっこんでな」と錠剤らしきものを投げる
秘書&医者「わん!わわん!きゃん!くーん!」退場
ボス「覚悟しな。ここで合ったが10年目だ」

 ボス、ナイフを構える

男「ここぞか」

 袋に手をやる

男「最後の一袋。ん?包みに、なにか書いてある」

 空になった包み紙をあけると裏になにか書いてある

男「この包みの中の薬を」

 薬売り、占い師が顔だけだす。

薬売り&占い師「この包みの中の薬を全部呑みきった時に、薬の本当の効能が現れます。最後のひとつつみを呑んだ時、薬の魔力が自分の望む姿に変えてくれるでしょう。キヒヒヒヒ」
誠「自分の望む姿?」
ボス「おらああ!」

 殴る音ボガーーン
 倒れる男。
 一気に飲み干す男

ボス「このやろう!」

 ボス男、襟首をつかむ

男「うおおおおう!!」
ボス「なんや!なんや!」

 暗

おっさん「そして気がつけば俺は」

 明。

 ボス、小さなおっさん人形を持っている

ボス「人形に、なっちまいやがった」

 人形を捨て、ボス、いなくなる。
 音楽が消え、回想が終わる

おっさん「俺の望んだ姿がこれだったどうか、それは俺にもわからん。人間をやめたかったり、大人になりたかったり、人間でいたかったり、大人になりたくなかったり。そんで、こんなんなっちまったんだろうなぁ」
誠「、、悪魔」
おっさん「やつらは手を変え品を変え、弱みにつけこんでくる」
誠「ちいさいおじさん」
おっさん「目つけられたってことよ」
誠「この玉を使い切ったら、治」
おっさん「そういうことだ」
誠「わたし!」

 ちっさいおじさん人形をひったくり

誠「ちいさいおじさんと結婚なんて嫌だ!」
おっさん「そうか」
誠「だって」
おっさん「青春だねえ」
誠「きもちわるいから!(投げる)」
おっさん「(とんでく)まさかだな!」

14■4歳上の姉とヤクザの旦那

 音楽KARA "Mr."
 19時、ヤクザ、ヘッドバンキングして登場

ヤクザ「今ちょっと!今ちょっと!今ちょっとぅ!忙しんだ俺!なんだこんな!なんだこんな!なんだこんなぅ!夜中に!近所迷惑だらあ!ああ♪!ああ♪!ああ♪!」
治「静かにしてください」
ヤクザ「にーちゃんK-POP!にーちゃんK-POP!にーちゃんK-POP好き?!」
治「わかりません。姉はどこですか」
ヤクザ「やっぱKARAがいいよ。カン・ジヨン抜けて正解だよ。ホ・ヨンジでいいよ。ホ・ヨンジがいいよ。4人でKARAがんばろうよ」
治「姉はどこですか?」
ヤクザ「今風呂だ」
治「風呂」
ヤクザ「上がるまで俺とKARAの話ししようぜ」
治「無理です。なんの事やらさっぱりで」
ヤクザ「今の中坊KARA知らねえのか大ジョブか」
治「テレビ観ないんで」
ヤクザ「え!じゃあ♪!え!じゃあ♪!え!じゃう♪!何観るんだよ家で!」
治「参考書教科書百科事典辞書」
ヤクザ「ガ、ガチ?♪!ガ、ガチ?♪!ガ、ガチュ?♪!本当ですか!?」
治「静かにしてください」
ヤクザ「(KARAの本を出す)いいか?これがKARA!パク・ギュリ、ハン・スンヨン、ク・ハラ、去年脱退したカン・ジヨン。で、(別の本)代わりに入ったホ・ヨンジ21歳」
治「ガイジン?」
ヤクザ「うおい♪!うおい♪!うおう♪!アイゴー、セサゲー!♪(まあ!なんて世の中だろう!)」
治「何語ですか?」
ヤクザ「おまえ世間を知らんな」
治「ぼくが?!」
ヤクザ「おまえどこファンだよ」
治「え?」
ヤクザ「野球野球!サッカーでもいい」
治「テレビないんで」
ヤクザ「なくても知ってるだろう」
治「いくつあるのかも知らないです」
ヤクザ「おまえ相当頭わるい?」
治「ぼくが!?」
ヤクザ「一般教養だぞ」
治「そんな科目ないし」
ヤクザ「ひょう♪!ひょう♪!ひょい!♪!気色わる!」
治「ぼくが?!」
ヤクザ「顔色悪いぞ大丈夫かおまえ」

 ヤクザ退場

15■色々

治「今日、、、色々あって。色々。」

 たまを出す。
 なんだか気味の悪い玉に変色している。
 音楽"悪魔"
 暗。音楽あがり、明。

グミ「なんか変な生徒きましたね。ええ。いやあ、日本の教育は根本からまちがっとる。ひさかたぶりにひしひしと感じましたね。まぁ、すべりどめ最低ランクの私立高校教師に戻れば、それどころじゃないって感じなんですが」
治「(登場)おい」

 暗。音楽あがり、明。

男子1「学年トップが、あんな高校落ちるとはなー」
男子2「いい気味だいい気味。」
男子3「本当は馬鹿なんじゃないのー?」
男子1「俺たちはうまくやったよなー」
男子2「やったやったーやったよなー」
男子3「だってなあ」
3人「おれたち、カンニングで受かったもんなあ」
治「(登場)おい」

 暗。音楽あがり、明。

ヒゲダリ「よーし中学最後の授業だー。と言っても受験に忙しい貴様らは美術の授業なんて受けにくるはずもなくー。えー、誰もいないから言っておく!先生はお前らが嫌いだ!先生は来年からアジア放浪の旅に出て現実逃避に入ります!」
治「(登場)おい」

 暗。音楽あがり、明。

綾小路「鮫島くんチェキ!」
鮫島「お、綾小路帰ろうぜ」
綾小路「保健室のおかまちゃんに襲われたってぽ?」
鮫島「心配すんなよ俺は麗子ひとすじさ」
綾小路「麗子、ランク落として一緒の学校トゥゲザー通いまくりんこ」
鮫島「おまえこそ治に告られたってな」
綾小路「あんなちびのガリ勉関係ないメロディ」
治「おい」
女子123「くすくすくすくすくすくすくっす」
治「だまれ!!」

 曲消える
 治、たまを構える
 暗

治「消えろ」

 SE魔法ズシャーーーンンン!!

16■戻る

 明
 治、グロテスクな玉を見ている

治「僕が悪いわけじゃない。
 あいつらが、不必要な人間だっただけだ。
 僕が悪いわけじゃない。
 あいつらが、不必要な人間だっただけだ。
 僕が悪いわけじゃない。
 あいつらが、不必要な人間だっただけだ。」

ヤクザ「ねーちゃん風呂あがったぞう。」

 姉、大きなお腹で登場する

姉「弟あんまいじめないでやってー。治、勉強の虫なの」
治「、、、、、、、、、、、、」
姉「あ、言ってなかったっけ」
治「おまえ何歳だよ、、、4つしか違わないだろ」
姉「18でしょ?違う?」
ヤクザ「しらん」
治「なんだよそのお腹」
二人「こども」
治「、、、未成年だろ?」
姉「法律的にはオッケーっしょ」
ヤクザ「安心しろ。ホ・ヨンジも最初は19歳だったんだぞ」
治「何言ってんだよ」
ヤクザ「松本伊代はまだ♪16だから♪」
治「何言ってんだよ!!」
二人「はははははは」
治「笑い事じゃない!!!、、母さんこれ知ってるの?」
姉「産んじゃってから言おうと思ってんの。内緒にしてよ?」
ヤクザ「頼むぜ、ブラザー」
治「、、、」
姉「何しにきたの」

 治、出てこうとする

姉「ちょっと!」

 腹でどつく。こける治

姉「なしたの」
治「家出してきたんだ」
姉「あ泊まってきなよ」
ヤクザ「おい俺んちだぞ」
姉「殺すよ」
ヤクザ「一緒のふとんでKARA全部覚えんべ」
治「結構です」
姉「おさむ」
治「名前で呼ぶな!」

 玉を出す

治「、、、、、、」
姉「なになに?」
ヤクザ「キャッチボール?すっか?」

 ボールを構える
 暗

 SE魔法ズシャーーーンンン!!

17■冒頭に戻る

 冒頭のリズム音
 雪道走法をしている治が浮かび上がる。

治「足の裏を地面につけたらそのまま固定しずらさない。足の裏全体に重心がくるように面で支える。次の足が地面について固定され重心が移ったら、やっと地面から浮かせて一歩踏み出す。これの繰り返しつまり僕は今急いでいる。札幌市中央区南15条西16丁目電車通りマックスバリュ側を南へ急いでいる。藻岩山ロープウェイ入り口は南19条西15丁目を右折。環状通り沿いに道なりに進み、北海道盲学校手前で左折。山道になる」

 治、もいわ山へ向かう
 舞台に袖から袖へ相原誠と山田治をつなぐ赤い毛糸が張られる。

母「結局バイト早退しちゃったじゃん今月金無いのに。で、この赤い糸。どこ続いてんのよ。もお死にそう」

 ヤクザがMr.と藻岩山への坂道についてを歌いながら治を追ってくる

ヤクザ「らららららーらーららららー♪」
母「ん?KARA」
ヤクザ「なんだっさっかこんなっさっか♪!」
二人「らららららーらーららららー♪」
ヤクザ「なんだっさっかこんなっさっか!」
母「なにそれ」
ヤクザ「KARAと藻岩山への坂道のコラボ?」
母「馬鹿なチンピラだねー」
ヤクザ「お前!とつぜん消えるんじゃねーよさみしーだろがよー!なんかちょっと見ないうちに随分老けたな」
母「栄(さかえ)と勘違いしてない?」
ヤクザ「え?」
母「山田栄はあたしの娘」
ヤクザ「げ、まさかの母親」
母「ま、姉妹みたいな親子って、言うのかしら♪」
ヤクザ「お世話なってます!」

(*栄は二十四の瞳を書いた壺井栄から父が名付けました)

母「娘の彼氏かー」
ヤクザ「鮫島っす」
母「え?治の同級生?」
ヤクザ「それ中三の弟っす」
母「消えたってどういう事さ」
ヤクザ「栄ちゃんの弟が、栄ちゃん消しちゃってさー」
母「治が?」

 ペルセポネー、
 ケルベロスに小さいおっさんの柄パンを嗅がせる

ペル「ケルベロス!ちいさいおっさんの服!匂いで探して!」
母「なんだこの、森に住むギリシャ人みたいな奴」
ペル「あちょっとそこの人間ども、小さいおじさんみなかった?」
ヤクザ「小さいおじさん?」
母「どのくらい?」
ペル「10センチ」
二人「ちっさ」
ペル「見かけたら冥王ハーデスの嫁、ペルセポネーまで(名刺)。ケルベロス!いやがるなや!」
母「ちょっとあんた」
ペル「忙しんだけど?」
母「中三の男の子知らない?」
ペル「山田治ならもうすぐ三玉使い切って地獄行きだから忘れな」
母「母親なんだけど」
ペル「げ。どろん」

 ペルセポネー、山へ逃げる

母「捕まえろ」
ヤクザ「俺?」
母「잡아라!」[チャバラ!](捕まえろ!)
ヤクザ「韓国語?」
母「ドラマでね」
ヤクザ「気あいそうっすね」
母「서둘러![パルリ](急げ!)」
ヤクザ「알겠습니다![アルゲッスムニダ](かしこまりました!)」

 ヤクザ&母、ペルセポネーを追う

誠「あ、動いた!赤い糸!こっち!」
おっさん「いけ!いけ!うわっとお!」
誠「ちゃんと走って!」
おっさん「地獄は灼熱だから」
誠「どこに向かってんのオサム」
おっさん「この方角は間違いない」
誠「藻岩山ロープウェイ」

 赤い糸の張りがなくなり、
 ふわりと地面に落ちる

おっさん「まずい、乗ったか」
誠「オサム」
おっさん「藻岩山なんてのぼってどうするつもりだあいつは?」
誠「学校中の噂なの、学年トップが滑り止め落ちたって」
おっさん「ガラスの受験生の考えることだ」
誠「まさか」
おっさん「ひょんなこともあるかもしれん」

 二人退場
 先頭の治、赤い糸を捨てる

治「藻岩山、山麓駅ロープウェイ乗り場。上り最終時刻は21時30分。距離にして約1.2km。約5分で中腹駅へ到着。発車まであと。5分」

 山麓駅内を見回す。

治「僕は、こんな所になにをしにきたんだ。小学校のとき、家族で来て以来だな。あの頃は、父さんも居て、姉ちゃんもグレてなくて、母さんは笑ってた。」

 治、たまをみる

治「絶望。この絶望に気づいてしまった事がきっと、大きな失敗だったんだ。父さんもたぶん」

 治。巾着を置き

治「もういらない」

 山のてっぺんをながめて

治「、、中学生、一枚」

 切符売り場へ行く

誠「ついた!ロープウェイ乗り場!あれ?」

 誠、巾着を拾う

おっさん「上り最終時刻21時30分!」
誠「ぎりぎりセーフ!」
おっさん「大人一枚」
誠「中学生一枚」
おっさん「いや、大人なんだよ俺!」

 券売り場に消えようとする二人

ペル「お手柄ケルベロス!!」
ケルベロス「わしゃわしゃわしゃ」
おっさん「くっそう俺のトランクス!!」
ペル「おい!ペットその2!」
誠「おじさんペットなの?」
おっさん「流行ったんだと」
誠「地獄で?」
ペル「はい。素直に渡して。おじょうちゃん。それ、うちのペットなんだから。人のものとっちゃだめでしょ?返して」
誠「どどどどうしよう」
ペル「早くしないと、ロープウェー最終出ちゃうよ?」
おっさん「くそお、おまえだけでも先に行け」

 誠、渡そうとするその瞬間

母(声「人形、ジュセヨオ!!」
誠&おっさん「え?」

 ヤクザ登場

ヤクザ「アラッソヨ!」

 人形をひったくる

ヤクザ「きたねえ人形だな」
おっさん「大事にしろ!」

 母、登場

母「なつかしー藻岩山ロープウェイ」
ペル「ちょっと!どういうつもり?!」
母「あんたこそ何?うちの子たちに何したの?」
ヤクザ「お母さん、どうしますムニダ」
母「ひとまず警察に突き出すか」
ペル「ケルベロス!行け」

 ペル、ケルベロスを投げる

ヤクザ「うわああ」
ペル「くってよし!」
母「わあ!なにやってんのあんた!」
ヤクザ「ああ、ちょっとづつ喰われてるー」
母「しっかり!」
おっさん「俺落ちた!」
ペル「チャンス!」
母「!」

 母、人形を蹴る。

ペル「あ!」
おっさん「おいいいいイイ!」

 そしてペルセポネーの手をふみつける

ペル「ぐぎぎぎぎ」
母「元レディース。ハイヒールの樋口一葉をなめんじゃねえわ」

 母、バイトズボンの裾をひっぱりあげハイヒールちらり

誠「かっこいい!」
ヤクザ「のやろう!血、血でてない?」
おっさん「出てねえよ」

 SEじりりりりりりりり

誠「うそ!もう発車する!」
おっさん「しまったああああ!!」
誠「どうする」
母「投げろ!」
ヤクザ「そうか!」
誠「え?」
ヤクザ母「ちいさいおっさんを投げろ!!」
おっさん「部活は?」
相原「帰宅部」
おっさん&ペル「やめろおおおおお!!」
母誠ヤクザ「うおおおおおおおおおおおおおお」
相原「おおおおおおおおおおおお」

 相原、小さいおっさんを投げる。

18■ロープウェイ

治「真っ白だった。ロープウェイから見える景色は本当に真っ白だった」

 音楽"夢"

治「札幌の真ん中、標高531mの藻岩山からは僕が育ったこの街が一望できる。
生まれ変わったら僕は。。。。。
生まれ変わったら僕は
テレビをみて野球チームやサッカーチームのファンになって、
K-POPのアイドルグループの名前を覚えたり
おんなじジャンプ買って読んだとか読まなかったとか話したり
小説家をめざして空想や妄想や昨日みた夢を書き留めたり
体育館の裏で女子の第二次成長についての秘密を分かち合ったり
好きな子の名前をいっせーので言うときに
わざと一番人気の子の名前にして本命は温存したり
授業をサボって学校の裏の川のとこでごろんと横になって
お父さんのタバコを盗んでちょっと吸って咳き込んでみたり
スキー遠足で結構うまくすべれるところを見せるために練習しといたり
告白されて彼女作って学校でバレないように遠回りしたり
やったことない無駄なこといっぱいやるんだ。
、、、生まれ変わったら」

 おっさん来る

おっさん「死んでないな」
治「見てよ展望台。高くて分厚いフェンス。越えられない壁。のぼれないハシゴ。僕は馬鹿なんだきっと。僕の記憶違いなのか。ここが変わったのか昔はもっと違った」
おっさん「想い出の場所ってのは、そういうもんだ」
治「小さい時に一回来たんだ。
あのときは夏だっけ。
家族4人でここに来た。
そのときはもっと全然ちがった。
もっともっとまわり360度
見渡すかぎり全部、
空とか街とか緑とか
足を踏み外さないように気をつけてたんだ。
空にひっぱられて、
そのまますいこまれるかと思ったんだ。
だから危ないから。
誰かがしっかりつかまえとかなくちゃって
だれかが言ったんだ」

 母が来る
 
治「この世界全部に、
もってかれないように
誰かがしっかりつかまえとかなくちゃって
、、、誰かが言ったんだ」
母「だれが言ったの?」
治「、、、、(父だと思う)、、、、、さあ」

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。