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突発的、そう思えば……の旅

 「3年ぶり3回目。」甲子園の話ではなく、職場のシフトを見た時の私の嘆き。1回目は3年前の9月前半に突然の4連休。2回目はその3ヶ月後にまたもや4連休。そして今年3月、またしても急な3連休という、勝手に大型連休が3年ぶり3回目としてやって来たのであった。
 このご時世、しっかり休みをもらえるのは有難い(って考えているのがちょっとマズいのかも。)とはいえ、月末に急に、しかも今から1週間後に連休があると提示されたところで、どう過ごせば良いというのだろうか。
 初めて連休を急にもらった時のことを思い出す。上司が冗談交じりに「旅行にでも行ったら?」と言われて、ならばと思い、東京行の航空券を握りしめて向かったのが約3年前。1日目は東京観光して、2日目は沼津にまで行って聖地巡礼をしたのであった。そして3年が経った今、(細かく言えば2年と半年前なんでニネンブゥリって言いたいところ)また私は沼津に向かったのであった。

 3月6日、羽田に着いてすぐさま品川駅へ。集団疎開かってぐらいの人ごみにビビりながらも、人生二度目の新幹線に乗り三島駅に到着。滞在時間約2時間の東京旅行は初めての経験であった。そこから電車に揺られて沼津駅に降り立つ。約3年……いやここはもうニネンブゥリの沼津。「ただいま」である。

 2年前に初めて沼津に来たときは、1期の10話あたりが放送している時期。当時はSUN!SUN!サンシャインカフェも無かったこともあり、街灯に群がる虫のように吸い寄せられて店内へ。沼津に行ったらやろうと思っていた「沼津まちあるきスタンプ帳」を購入して、駅周辺のスタンプ実施店を回ることに。
 周辺を歩いて思ったのは、2年前よりもAqoursの存在感が確実に強くなっていること。2年前では見なかった場所からでも彼女たちを見つけることが出来て、彼女たちがゼロからイチにしたことを肌で感じる。そして、
「紅白出場おめでとう!」というお祝いの言葉もよく目にして、とても嬉しくなった。街の人たちも応援していて祝福してくれているということが、アニメの世界に居る彼女たちとの壁を、街の方々の温かい言葉でだんだん溶かしているように感じ、彼女たちをとても身近に思えた瞬間であった。

 1日目はそれから、まちあるきスタンプを中心に歩き回った。2年前では時間の都合上で沼津バーガーまでしか回れなかった分、初めて訪れることが出来た「沼津港大型展望水門びゅうお」はその大きさと、やっと来られたという気持ちもあって、感動もひとしおであった。
 いやデカい。びゅうおデカい。ドゥオモじゃん。行ったことないけど。

 もう外は真っ暗になり、ドゥオ………びゅうおを後にし、丸天さんへ。実は前回の巡礼では深海魚バーガーぐらいしか「らしいもの」を食べていなく、今回初めてアジとシラスに桜エビを頂けて、こんな時、日本酒とか飲めるオタクなっていればな……と自分の下戸具合を恨む。でもそれも良いか。静岡のお茶美味しかったし。静岡産だったのかは分からないけど。

 その後は、ちょっとやってみたかったことであった、劇場版ラブライブ!サンシャイン!!を沼津で鑑賞。ちょっとなんて軽い気持ちでいたことを後悔する(笑)
 さっきまでいた場所の風景とスクリーンに映る風景が重なるたびに、変な声が出そうで大変だった。お勧めするけど、気はしっかり持った方が良い。

 宿は南口側だったので、北口側にある映画館から、あまねガードを通って帰ることにした。するとそこには地元の学生たちが描いたであろう絵が壁面に描かれていた。祭りの風景や沼津の海など、どれも地元の好きなところや、自慢できるものを描いたのかと思うと、素敵な絵ばかりだった。そしてその内の一枚がとても細かく、丁寧に沼津の街を描いていた。

  細かく描かれた街ひとつひとつにそこに住む人々が居て、住む人々の想いがあって、それが一つの絵に集約しているようにみえて、私はしばらくこの絵を眺めていた。それに自分が好きな作品の舞台となったところが、やっぱり地元の方も好き(もちろんですが)なんだと再認識できた気がして嬉しくなった。
 ちなみにあまねガードの名前の由来は明治の思想家「西周(にしあまね)」の屋敷が近くにあったことからと、「あまねく」皆さんに利用してほしいという想いからこの名前がついたという。県外から失礼しています。おかげで素敵なものが観れました。


 3月7日、2日目。この日は初めて淡島を回ることにした。ありがたいことに、こんな私の旅にお付き合い頂き、車まで出してもらったフォロワーさんには感謝したい。本当にありがとうございました。
 淡島に回る前にまずは腹ごしらえ、コレを食べたいがために、前日は丼を我慢して、寿司にしていたのだ!アジうめぇ。アジフライふわっふわ!

 いけす屋さんに向かうまでの車内では、各々のラブライブ!との出会いを話して盛り上がる。なんなら着いた後もしばらく話していた。やっぱり好きなものを話す空間は良いものである。
 さぁいよいよ淡島へ。これまた初めて乗るコラボフェリーの「Aqours丸」に乗って到着。今やアニメと作りが一緒になっている桟橋を通り、まずはとにかく淡島を一周。
 フォロワーさんから「こっからすごいですよ」と言われ、多分ホテルオハラのモデルとなった外観が見えるんだろうなと思ったらコレである。

 思わず息をのむ。口が「おぉ……」の口の形のまんまでトンネル内へ入る。トンネル内に響く声。3年生の3人は一体何度この道を通り、その度にどんな感情を響かせたのであろう……。そして私は口の形が「おぉ……」のままトンネルを出たのであった。

 天気が悪かったので、どうなるか分からなかったのだが、何とか晴れ間も見えたので、私のわがままで淡島神社まで登ることに。(本当ありがとうございます)
 噂には聞いていたが確かにあれは階段状の坂であった。しかも路面が雨で濡れて少し滑りやすいという最高のコンディション。頂上に着いた後の下り道が真骨頂である。あのね。怖い。手すりに捕まらないと一気に転がって、駿河湾へダイブいい感じ!である。ちょっとまだ爺ちゃん婆ちゃんとの再会のハグは待って欲しい。しかし楽しかった。また登ってみたい。

 淡島を回った後は松月さんなどにお邪魔した後、三の浦案内所さんへ。3月ということもあって、誕生日と4thシングルセンターでおめでたいこと続きである花丸ちゃんの拡大ポスターがお出迎え。

 素直にえっちだ……。こらこら。案内所の意味を履き違えてはいけない。ここは聖地だぞ。私は今、聖地を巡礼しているのだぞ!と気をしっかり持ち中へ入る。腹が良いですね。

 2年前と比べるとすっかりラブライブ!サンシャイン!!だらけになっていた。前はもう少し文豪ゆかりの地でもあるので、太宰治のコーナーもあったはず。これが需要と供給である。
 あるかななんて思って交流用ノートを探してみる。2年前にコメントを書いた8冊目のノートも、今や20冊目以上になっていた。記念に一言書いて、今度はどこからやってきたかをシールで貼って表す地図の前へ。さすがに2年も経つと地図は新しいものに変わっていたが、前回は一番乗りで貼った(もしくは案内所に訪れたけど貼ってなかった人もいるかもしれない)地元の地図に、いくつかのシールが貼られていて、嬉しくなった。沼津から遠く離れた地元でも、Aqoursは広がっていることが分かったのであった。

  ある程度回ったので「逆にフォロワーさんが言ったことないところありますか?」と聞いてみて向かったのが2期8話の舞台となった西伊豆スカイラインの土肥駐車場。ちなみに道中の車内から見える景色はこんな感じ。

  何も見えない。雲なのか、はたまた霧なのか。どちらにせよ何も見えない。こんな道を免許取りたての女子高生が8人も乗せて、夜に走っていたのかと思うとなかなかのチャレンジャーである。さすが小原鞠莉。ロックだ。

  頂上からの景色に感動して、帰る途中に襲ってくるのは車酔い。乗せてもらっている身であるのに本当に申し訳ない。そして向かったのは、げんこつハンバーグの炭焼きレストランさわやか!これまた私のわがままだったのだが、まぁ美味かった!!!車酔いしてたから小さめでいいかな。なんて思った自分を鉄板にぶち込みたい。大きいサイズを頼めばよかったと後悔したほどであった。
 球状のハンバーグを見た感じ、ふっくらした柔らかい食感だろうと思っていたら、つなぎありきの柔らかさなんて全く無い100%ビーフの肉々しさたるや!あんなにも大きいのにしっかり焼けていて、肉の味を感じるハンバーグは初めてであった。いやぁ美味かったわぁ……。

 店内でハンバーグを待っている間、店員がドリンクを持ってきて「当店ではドリンクを注文して頂いたお客様に、乾杯の音頭を取らせて頂いているのですが如何なさいますか」と聞いてきた。このサービスはフォロワーさんも知らなかったらしく、どうしようかと思ったのだが、せっかくの機会なのでお願いしますと言ってみる。「では『〇〇に乾杯!』と音頭を取るので、〇〇の部分は如何なさいますか」と店員は続ける。これは悩む。私とフォロワーさんの関係性をどう説明したら良いものか。(ここで去年の4thライブで一度お会いしているので、「久しぶりに会ったんでそれでお願いします」と言えば良かったのに、テンパってお会いしたのが初めてだと思っていたのがこの日最大のミステイク)ずっと悩んでいたら、店員がしびれを切らして「それでは出会いに乾杯!(多分出会いにだったと思う、こっちはテンパってたので覚えてない)」と明るく言い放った。笑顔の店員、苦笑いの僕ら、グラスの当たる乾いた音。それもまぁ良い思い出。

 半日近くお付き合い頂いたフォロワーさんにお礼を告げ、ホテルに戻った後に気づく。一個大事なところに行ってない。そのままもう一度外に出て、ある場所へと向かう。

  2期5話で善子が犬を拾う場所。多分今までずっと一人でこの作品を楽しんでいたら、行こうと思っていなかったであろうこの場所。ラブライブ!サンシャイン!!が好きな方々に導いてもらった場所と言っても良い。

 今目の前で、それとも遠いどこかで起こっていることは、何も繋がりのない事象で世界は成り立っているのかもしれない。それでも「そう思えたならば素敵なんじゃないか」という気持ちひとつで、近くても遠くても繋がりを感じることは出来るのではないか。その気持ちひとつで繋がりを感じたことで、また明日も頑張ろうって前に進む活力を見出せるんじゃないか。なんてことに気づかせてくれた場所である。今度ここに訪れるときは、いつになるか分からないけれど、少しそんな気持ちに何か確証が持てたらいいななんて思ってあとにした。少なくともこの時は。

 3月8日、3日目。ここ数日の曇り空が嘘のように晴れていた。ホテルの部屋からは念願の富士山も覗かせてくれて、素晴らしい天気。
 3日目も駅周辺のまちあるきスタンプを求めてウロウロ。この日はかなりの数のお店を急ぎ足で回ったので、特に印象深かったところをあげてみる。

  劇場版でスポットが当てられた、だいこくやさん。店内に入った時は店主さんと常連であろう男性客とお話をされていて、本当にお邪魔しますという気持ち。今川焼き食べたいけどあんこはなぁ……(犬繋がりでいえば怒られそうだな)と思っていたら、カスタード味も発見。おひとつ頂くことにした。レジに向かうと、常連さんとの話を止めて「どこから来たの?」と気さくに話しかけてくれる店主さん。
 店主さんの優しさに甘えてお話をさせてもらい、ここはひとつと、スタンプ前にあった花丸ちゃんのお誕生日カードって頂けるんですか?と聞いてみる。「持って行っていいよ。そのスタンプの前に……あらもう無くなってるね。ちょっと電話してみるわ。」とのこと。お手を煩わせてしまってすみません。
 50~60代のおじさんが「ラブライブの……」って言ってる姿、聖地ならではだろうなと思っていたら「ちょっと刷ろうね!」とレジ後ろにあるプリンターに向かわれた。なんだか大ごとになってしまい、感謝でいっぱいになりながら、出来上がるのを待つことに。
 待っている間、また常連さんらしきご夫婦がご来店。「今日も荷物置いちゃうねー」とおばさんはレジを横切って荷物を置かれた。その間店主さんとちょっとした世間話を始める。
おばちゃん「映画観たよ!凄いねー。あんな大きく映っちゃって!」
店主さん「いやほんとにね。うちの母ちゃん2回目観に行ってたよ。今川焼きも売れて、間に合わなくてねー。」
おばちゃん「あなた(私)も映画観てから??」
店主さん「沖縄からだってよ」
おばちゃん「まぁ~ホントに!私の娘○○大学よ!(私の地元にある大学)」
私「え!?そうなんですか!?」(みたいな会話)

 地元のリアルな反応と井戸端会議に加えてもらい、嬉しい気持ちになった。確かに自分の店がスクリーンに映るのって嬉しいよなーってか大学マジですか!?世間って狭いな!
 この数分間の感情の揺さぶられ方にはビックリした(笑)店主さん、また今川焼き食べに行きますね。

 そしてつじ写真館さんへ。つじ写真館さんと言えば、黒板アート。この日描かれていたのは1年生の3人。

 スタッフの方に「良かったら中へどうぞ!」と招いてもらい、お茶まで頂いちゃうことに。写真館なのにお茶も頂けるとは……。

 開店直後にも関わず、これまた気さくにお話しをしてくれました。

「どちらから?」
「沖縄から来ました。」 
「あらぁ遠いところからわざわざ!沖縄良いところよね!この前ね、私たち家族も沖縄行ったのよ!ベイスターズのキャンプを観にね。うちの息子が野球部でさぁ……」

 スタッフさんのなかなかのマシンガントークっぷりに圧倒されながらも自分も大好きな野球の話をさせて頂いた。すると3人家族の方々がご来店。おそらく息子さんや娘さんに連れられて、自分と同じ聖地巡礼中だと思われる。
 だいこくやさんのパターンと同じく「この方沖縄から!」の流れでご家族ともお話しできることに。ご家族はお母さんがずっとスタッフさんとお話しされていて、息子と娘さんは店内を見渡している感じ。自分の位置をちょっとどいて色紙とか、もっと近くで見たいかもなと思ったけれども、スタッフさんのマシンガンが冴えわたり、どうした方がいいかなという状態。そうこうしていると、ご家族は帰られていった。特に不満そうな顔ではなかったと思うが、息子さん大丈夫だったであろうか。
 そしてその後もスタッフさんとお話しを続けていた時であった。

「ホテルもいいとこあるのよね!私あそこのホテル好きなのよーあのほら!あそこ!○○!」
「えっ!?」

 驚いた。そこは僕が働いているホテルである。地元にあるホテルなんていくつあるか分からない。その中で馴染みしかない名前を聞いたのであった。

「僕そこで働いています!ホテル内のレストランとか利用されましたか?」
「あら!そうなの!?レストランは全部回ったよ!」

 この方ともしかしたらお会いしているかもしれない。職場で。今はこうして私がもてなしてもらっている側だけれども、この方にもしかしたら私自身がサービスしたことがあるのかもしれない。

 その後も私の働いている場所の良いところを聞かせて頂いた。聞いている内に思ったことは、大好きな作品に携わっている方から今、自分の汗水垂れ流して働いている場所を好きだと言ってもらえている事実。
 以前伊波さんのラジオを聴いたときに感想として、こんなことを私は呟いていた。

 「w」を付けて砕けた感じで呟いていたし、そう思えたら素敵だよななんて笑っていたけれど、まさか実際に起こっているなんて。好きな作品関わっている方が、自分の仕事で少しでも役立ってくれているなんて。偶然といえばそれまでだけど、気持ちひとつでこの場に繋がりが生まれている。こんなこと嬉しくならないわけがない。恥ずかしながらお話を聞いている途中に涙が零れてしまった。

「すみません突然。僕はこの作品が大好きなんで、それに少しでも関わっている方の役に少しでも立っているのかなんて思ったら嬉しくて……。」
「何言ってるの。良いところじゃない!ブランドよブランド。」

 そう言って笑ってくれたあなたの笑顔、忘れません。

「また来ます!だから、また来てくださいね!」と私はそう言って店を出た。しばらく歩いていたが、まぁぶっちゃけ放心状態であった(笑)そしてボーっと上を向いた空はとても晴れやかで青かった。うわの空とはよく言ったものだ。

 ボーっと歩き回っていたら、写真館でお会いしたご家族にまた遭遇した。軽く会釈を交わしてすれ違う。大丈夫。息子さん不満そうな顔じゃなかった。

 思い出を背負って私は地元に戻った。思い出がたくさんありすぎて後ろに倒れそうだ。もしかしたら世界は広いけど、人と人が繋がり合う世間は、自分が思っているよりも狭いのかもしれない。一度結びついた繋がりがあれば、巡礼中のご家族に会えたように、もう一度また会うことが出来るかもしれない。

 今度会える日は私の職場なのだろうか。しばらくは「いらっしゃいませ」に気合が入りそうだ。何だか仕事のモチベーション上がってきたな。これ多分、活力かもしれないな。だって……

そう思えば、素敵じゃない?


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