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近況報告&日本人とモロッコ人との日本の方式での婚姻についてのメモ

最近全く投稿していませんでした。本日と明日は国際私法学会です。また、来月号の戸籍時報に渉外家事事件(準拠法としてフィリピン家族法が問題となる事件)の評釈を掲載してもらいます(またノートでお知らせします。)。


日本人とモロッコ人の日本での婚姻についてのメモです。

日本において日本人とモロッコ人が婚姻する場合の方法

1  方式(何の手続をしなければならないか)について
→日本国内での婚姻の方式は,日本法でよいので、市役所への届出でよいことになります(通則法24条Ⅱ)

1-1 日本での必要書類について
(1)日本人→戸籍謄本
(2)モロッコ人→次の①か②のどちらかとなります。
①在日本モロッコ大使館発行の婚姻具備要件証明書
②モロッコにおける独身証明書+重婚でないことの宣誓書
(3)その他…役所で配られている婚姻届。

1-2 日本で婚姻が受理されたら
モロッコでも有効な婚姻にする場合、モロッコ人の一方が日本で婚姻したことを3か月以内に在日本モロッコ大使館に届出る必要があります(モロッコ家族法(ムダウワナ)15条以下)。

婚姻具備要件証明書は大使館で発行されています。ですので、それさえ得れば受理はされるでしょうし、2以下は検討が要りません(実務的には…)。

2-1 婚姻の要件(何歳から結婚できるか,結婚できない場合は何か等)
→日本人は日本法、モロッコ人はモロッコ法による(一方的要件双方的要件の問題は割愛します。通則法24条Ⅰ)。

2-2モロッコ法について
モロッコでは、婚姻につき以下の通りになりますということになります(モロッコ国籍法3条柱書及び同条1ないし3号)

①ユダヤ教徒→モロッコヘブライ身分法
②ムスリム→ムダウワナ
③非ムスリム→ムダウワナ+ただし、一夫多妻はダメ、授乳に関する規則は適用されない、離婚手続きがムスリムと異なる(裁判による宣言が必須)点で違います。

2-3ムダウワナによる場合
①18歳以上
②婚姻時に財産を妻に渡す
③2人の証人の前での合意
④夫がイスラム教徒の場合,妻がイスラム,キリスト,ユダヤ教徒のいずれか
⑤妻がイスラム教徒の場合は夫がイスラム教徒

しかし②は財産契約なので婚姻の要件としては考慮されないのが戸籍実務です。③は方式の問題です(方式ではなく要件としても婚姻届に2名証人書くのでまあ…)。

また、④⑤(ムダウワナ第39条4項)は、公序で適用が排斥される可能性も考えられます。

シーア派はそもそも④についても、イスラム教徒以外はダメかもしれません。しかし、モロッコはスンニ派のうちマリク派とフェミニスト、ベルベル人固有法の長年のバトルの結果、ムダウワナができているので、まあこうなっているものと考えられます。

4 結論
①要件具備証明さえもらえれば簡単にできる
②もらえない場合、独身証明と重婚でない宣誓書(これは作れるはず)によることにはなる思われますが、要件具備証明を提出しない場合、戸籍で即受理されるかは不明で、法調査については弁護士が関与できることがあるのだと考えられます。







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