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五月三日、キノコ狩り、ハンドサイン

一週間前。金曜日の昼下がり、図書室でソファにくつろいで論文を読んだりRSSを消化していると、ボスがやってきて言った。

明日、キノコ狩りに行くが、行くか。

私はforageというのが採集のことだと学んだ。

翌日、セントルイスから西に自動車で30分ほど行ったところにある自然公園に朝7時に、ボス家族と同僚たちと出発した。

ブーツ、長袖長ズボン、スーパーの紙袋、ナイフ。

私が達成したのは長袖長ズボンだけであった。紙袋はボスに借りた。

ボスは説明して言う。これから探すのはmorel(アミガサタケ)だが決して簡単に見つかるわけではない。ただし根気よく探せば見つかるだろう。また、ひとつみつけたらその周りにも出ている可能性が高い。見つけたら教えるように。

そういうわけで6人がある程度の間隔をたもちながら森のなかに展開して捜索を開始した。

しかし、野外でそもそもどのようにあるのか、あるいは歩行者の視点としてその野外の生育がいかに目に映るのかを知らぬ状況ではやはり困難はあった。地面には落ち葉が重なり、朽ちている。

私はその直前にインターネット上で話題になっていた、特殊部隊ハンドサインのことを考えながら、地面に目を凝らしていた。

そしてボスが最初のmorelを見つけた。全員が駆け寄った。

たしかにアミガサタケという感じがする。この雰囲気、感覚を目に焼き付けた。教師あり学習。

採集したmorelは、ナイフを持っているひとは各々石づきを削ぎ落として袋に入れた。私はもいで入れた。

総員で周囲を探索した。これで各人数本ほど得ることが出来た。

しかし、その後の捜索は容易ではなかった。3時間弱歩きまわって、打ち切った。

ハンドサインに関して言えば、キノコ狩りのハンドサインは、容易ではない。皆、下を向いているからである。必然的に音声に頼ることになり、ハンドサインが等閑視されることになる。

料理のやり方はみなわかるか、とボスが言った。他は誰もわからない。ということでボス宅にておやつにしてしまおうということになり、一路ボス宅を目指した。

戦果はこうなった。

決しておなかがいっぱいになるというわけではないけれど、おやつ程度の量にはなっていた。

これをボスはぶつ切りにした。エシャロット(細長めの玉ねぎ)を輪切りにして、morelとともに、バターとオリーブオイルで炒め、さらに白ワインを加えて煮詰めてソテーにした。そしてラスクに添えて食べた。素朴な香りがあって美味しかった。

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