ミズーリ州、晴れ、風呂

 土曜日から水が出ない。

 正確に言えば冷水が出ない。ボイラーを介した熱水は出る。

 推測だが、ダイレクトに私の部屋に配管されているヴァルヴが何かのまちがいで閉じられ、ボイラーに行く水だけが来ているのだと思う。

 この一件で、水道のヴァルヴがvalveだと知った。最初bulbかと思ったがぜんぜん違った。

 ただ、電球がbulbであるのに対し、真空管が(英英語では)valveだというのを見てまた若干混乱した。

 私は高度好熱菌ではない。私の酵素の至適温度は37℃を超えない。

 酵素よりも毎日のシャワーのことを考えなくてはいけない。

 仕方ないのでバスタブに湯を張った。ちんちんのお湯を張った。ちんちんでは入れないので、暫く放っておいて冷ました。

 また湯だけでは水量が足りないので、ひたひたぐらいにしか湯が張れていない。

 さいわい180cmの体をよこたえる長さはあるのでそれでドネルケバブになった気分でぐるぐる回っていた。

 ひたひたにしか湯が張れないのは180cmの体を横たえるぐらいの長さがあるからだと思った。

 運転したいと思って同僚の助けを借り研究所の駐車場で練習していた。

 先日の一時帰国で国際免許を帯びてきたので決して異邦とて違法というわけでもなかろうと自分に言い聞かせている。

 日本で運転したのは5年から7年も前の事であろうと思う。

 日米の自動車運転の大きな違いは左右が逆ということだ。

 このブランクはかえって日本での運転の因習をいい頃合いに抜いて、フレッシュな気分で運転できるのではないかと思っていた。

 甘かった。

 何が甘いかというと指先三寸だ。具体的に言うとウィンカーとワイパーが逆なのである。

 ワイパーが左、ウィンカーが右にある日本。

 ウィンカーが左、ワイパーが右にあるアメリカ。

 左に曲がろうとしてウィンカーをクリック……右手が動いていた。

 そうして深く驚いた。

 筋肉のレベルで運転というのが存在する。

 結局、米国初練習は物凄い要らぬ力を入れて運転して、前日にきまぐれにやった腕立て伏せもあって何か腕にズンと来た。

 今晩は崩し煮豚ラーメンを作りたいと思う。

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