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「文学フリマ東京36」で買った本

去る5月21日(日)
文学フリマに出店しつつ、
買った本の紹介コーナーです。


ちょうど一年前に、お客として初参加したとき、買いすぎた。1万7000字

今回は事前にWebカタログ(1400ブース超)を全部見る(!)という狂気を冒してみたんですが、
やっぱりそこまですると処理しきれなくて、「気になる」押してそれっきりが増えてしまいました。。。

今回6000字。


第一展示場


やまおり亭『〆切七転八倒』(C-05 山折書亭)

同人活動における〆切エッセイ集。
いつのまにか「〆切は増える」…イベントごとに新刊を出したい……
「〆切を金で買う」…間に合わないから特急プランに……
執筆環境としての「憧れの缶詰」……
……そして「脱稿祝い飲酒」まで。
自分はまだよく知らないけれど、同人活動家の方々は共感・うなづきヘドバン必至のはずな一冊。へぇ~うわぁ~ひゃ~~~。と読みました。

あとこれは知り合いの本なため、献本強盗(※献本で相手の申し訳なさにつけこみお返しを貰う、誰も使ってない言葉)でもらい、「買っ」てない。
いきなり、買ってない本から始めてしまった。

(2021年11月 第二版発行)


庭鳥草紙『旅してすあま食べ比べ』(F-27)

ハンズの値札は…?

「すあま」のレビュー本!
北海道~大阪までのうち17都道府県を調査・発見した すあま に関して、製造者・原材料名・感触や味のレビューが書かれています。
大分類に「かまぼこタイプ」「鶴の子餅タイプ」とある時点でもうこちらは知らんかったの連続・・・。それから紅白以外の色バリエーション、緑色のよもぎすあま、黄色いすあま、昆布とクルミを混ぜたすあま等々・・・。
実はこの研究2冊目で、前作は2016年発行で4都道県だったのが、「旅して」一挙にエリア拡大となったようです。

文学フリマに1ジャンル屹立している、自由研究本
こういうのがほしかった。

※ちなみに自分のすあま初認知は、小学生の頃「たれぱんだ」の好物としてです。

(2018年12月発行)


S『ゲームブック 消えた相棒』(J-35 XS)

ゲームに使う付録のほか
ブックカバー・しおりもオリジナル

すばらしい仕上がりのゲームブック。

和の国の武士である主人公。異国の地で出会った冒険家ショーンと旅を続けていたのだが……ある朝、山小屋から相棒が消えた。
あてもなく森、川、崖のフィールド探検&狩猟の冒険がはじまります。

「バッドエンドのないぬるま湯系」と自称してますが、付録にダイス(サイコロ)2個、冒険記録用紙、折り紙、さらにシャッフルして使う洞窟探検カード!つき。星印のついた段落を通ると時間経過し、一定数で日暮れ、山小屋にもどる、とか、”この道具が使えそうな局面を見つけたら、その段落番号に30足したところへ行ってみよう”とかの隠し段落・・・。
フル装備で、ゲームブックの楽しさをギュゥと詰め込んだ一冊

ChatGPTのお遊びでゲームブックを出してしまった者として、本当にすみません……面白かった……。

ブックカバーは金・ピンクの2種から選べ、ポストカードを買うと残りの方もついてくる親切仕様。
いやーゲームブックって本当にいいもんですね。(水野)

(2023年5月刊)


「スタンドテイルズ ~お品書き~」(無料配布 J-38)

小説投稿サイト「カクヨム」で主にやられているというサークルさん。
長編『妖魅夜暁』『銃拳使いと自動人形』『竜斬の理』の試し読み+おまけエッセイ(?)『三画ばばぁのこと』収録。
…こんなにガッツリタダでもらっていいのか…!? と思いつつ、しかも目を通したのは閉会後になっちゃうし、申し訳ない。

プロフィールに「赤色が好き」。と書いてあるとおり、ホチキスが赤!


文画師Gani ポストカード(S-25~26)

文豪や偉人の肖像を、その人の作品や言葉で書く(描く)という「文画」。
これはホンモノすぎるよ…! ビビります。
たくさんあるなか、宮沢賢治「春と修羅-序-」を買ったんですが。

おわかりいただけただろうか。
読めば「春と修羅-序-」。眺めれば宮沢賢治の肖像画・・・!

なんですかこれ???

すごすぎて何も言えなくて・・・春 でした。

カリグラファーのかたなので文画だけでなく、梵字のグッズや、作品たくさんあるようです。


ragan books『Cover Boys First Photo Book』(U-05~06)

これはくだらない

ネットを中心に活躍する「カバーボーイズ」の初写真集。あれですね、雑誌がネットに掲載されたときに表紙を飾る彼らですね。わかります。タイムリーな事務所の……あれですね。

思いつきも仕上がりもバツグンで、っていうか自分がやりたかったなぁーコレ。という羨ましさみたいなものがありつつ、でもこんなスッキリした喉ごしの仕上げは自分はでけん。
さりげなくランダム生写真1枚も封入されてたり、巻末にミニインタビューがあったり。

メイキングを伺ったら、フリー素材から人物部分を影絵に加工してるとのこと。うまいわー。

ragan booksさんの他の作品もぜひ見てください。

(2019年7月刊)


dec『待ち合わせはミツワビル前でお願いします。』(U-13 青春の成れ果て)

秋葉原のメイド喫茶「あっとほぉ~むカフェ」での、メイドさんとの交友録。
3年前、ガチ恋のメイドさんを喪った著者のそれからと、あっとほぉ~むカフェのムードもわかるライトなエッセイでございます。

ブースで作者さんに「今回の本は、あそこまでは…」と言われたけど、あんなこと毎回やってたら死んじゃうよ!

ちなみにミツワビルというのが、あっとほぉ~むカフェ本店のあるビル名。ちなみに自分はアキバ住まいだけど、まだ行ってない。。。

(2023年5月21日刊)


『季刊性癖 2023春 vol.51』(U-14)

名前そのまま、性癖をテーマにしたオールカラー冊子(12p)。最新号は無料配布!という豪儀さ。
特集は鬼畜系AV監督の太田みぎわさんロングインタビュー。
性癖のはじまり(「ポケモンスナップ」のリザードで…)から、女優さんの人となりを聞いて台本を作る繊細なものづくりの現場(「SNSで女優さんが笑顔で安心」by著者 水の人美)、でもNG出された女優さんも・・・等々。
水のさんのベスト4作品も載っているので導入はこちらから。

ほかに記事は、女性の尿道・おしっこの飛び方マニアの 22000さん、樹海の死体マニアのKG”小平”中村さん。

どれもとてもフラットな視点というか、驚いたり関心するけど過剰に面白がらない態度が、とても読みやすいのです。

(2023年春 刊)


上中下「上中下通信 2023.05」(無料配布 W-23~24 花森&上中下)

恋バナをフルカラー4コマにした「ボツ恋」ではお笑いコンビ「一粒万倍」さんのエピソード2本。と、作者さんのコラム。相槌がうまくなった結果、ひとの演説と化した喋りを聞かせられる・・・という話には、なんだか共感する。


川名潤『出版とデザインの26時』『出版とデザインの27時』(W-32 川名潤装丁事務所)

ブックデザイナー川名潤さんのコラム集。ご自身がデザインを担当する『文藝』での連載を主に収録。
※大間違いしてました。『群像』です!!!
 大変失礼いたしました。

川名さんの装幀のファンなので(間違えてるけど) 文学フリマで販売します という報を見たとき狂喜して、同時に「列、列、列やないか……」と思ったけど、買えました。14時ごろには売り切れたそう。
 ※その後5/24いっぱいまで受け付けて受注生産。

自分が初めての同人誌出すとき、まずカッコいいと思う本を本屋でドドドと見ていって、そこから川名さんの名前を認識して、いや先に存じ上げてたけど改めて作風を詳しく見て、あれも・これもという感じで、今に至る。
『ピーナッツ全集』のローカライズも川名さんだしなあ。ええなあ。

まして、演出助手で関わっている「画餅」の感想ツイートを川名さんがしてくだすってた時なんかもう。

大切に読む。

(「26時」2022年10月初版、11月第二版
 「27時」2023年5月初版)


みぞグミ絵璃『新生活 連載決定から連載開始前夜までの日記』(X-04 かわいいハサミ)

つい先ごろ、アフタヌーンWeb増刊「&Sofa」(アンドソファ)でマンガの新連載が始まった みぞグミさん。その決定の報から掲載開始までおよそ2か月の日記。字日記。
1年前の文フリで絵日記をジャケ買いして、それから追いかけていたらついに連載決定!
いろんなままならなさのなかで頑張るもようを読んできて、こんなうれしいニュースもなく。

日記も連載もかわいい作品なんだけど、苦しさをそれで塗りつぶさず描いてるのが、好きなのかもしれない。

連載「すってんてんちゃんお休み日記 ~休職したって休めません編~」こちら。

今回、絵日記の新刊は売り切れてて買えず。と思ったらその直後
「箱から出てきました!」
というツイートがあった。。。

(2023年5月21日刊)


脳乃あメ「おすすメ記事」(無料配布 Y-27 ノドアメ屋さん)

フリーライター脳乃あメさん(これ変換する手順多いな…)のフリーペーパー。
小5のときのヤケクソなピアノ発表会動画が250万再生。などなど。リンクから記事いっぱい。


笠井瑠美子『製本と編集者』(編集・構成)
『日日是製本 2019』(著)
(Z-11~12 十七時退勤社)

出版社の営業である橋本亮二さんを「社長」、製本会社の笠井瑠美子さんを「副社長」とした自主製作ユニット「十七時退勤社」による本。

『製本と編集者』は、編集者3名を迎えたインタビュー本。
ゲストは、元新潮社で、palmbooksを立ち上げた加藤木 礼さん、「代わりに読む人」の友田とんさん(文学フリマにも参加)、絵本を軸に出版社、編集プロダクションを経てフリー編集者の森本美乃里さん。
とくに加藤木さんの仕事歴に、中原昌也、又吉直樹、岡田利規と「全部読んでる!」「この人がやってたんかー」とうれしい驚きがありました。編集者という存在。友田さんはずっと理系だった人だし、森本さんは人への興味がすごいし(ナンパ師に逆インタビューして懐かせたエピソードが削られかけたとは)、本=著者、だけじゃないことが見えてくるのは、本好きとしてたまらない。
毎回、インタビュー後にはそれぞれの担当した本を「解体する」ワークショップをやったそうで、これはまた物理的に「本はどうやってできあがるか」を理解するあれなんですね。
(2022年11月20日刊)

そのインタビュアーである笠井さんの日記本が『日日是製本』。年ごと出てましたが1冊目を購入。加藤製本株式会社を退職するまでの仕事、同僚のシャイでかつ内弁慶なみなさんの様子などなどが綴られています。
装幀家 菊地信義さんのドキュメンタリー『つつんで、ひらいて』の話とか、担当していた「束見本」(つかみほん)の業務とか、クリープハイプの尾崎世界観さんが昔働いていて、小説の製本に指名したとか・・・。

2冊目は新しい職場での話になるんだなー。買っておけばよかった。

そしてこの本も、ご本人の手製本。
糸で綴じてます。
(2019年11月刊、2023年3月4刷)



第二展示場


GUF『DOGGO』(き-41 オカモトレイコ)

犬と人間の関り、犬種とは何か、そして犬種図鑑を、
犬のドット絵とともに収録した、めちゃかっこいい(かわいい?おしゃれ?なに?)一冊。
手触り、サイズ、重量、印刷、ぜんぶこの本独自の存在感のためにコーディネイトしてる感。
ドット絵シール付き

デザイナーのオカモトレイコさん=gshegsさんと、ピクセルアーティストshosaさんのユニット「GUF」による作とのこと。

サークル紹介に「中世動物寓意譚や地獄における動物など、古今東西の「動物文化」をテーマとしたデザインZINEを作っています」とありますが、ほかにあった本は、神話等で地獄にいるとされた動物がなぜそう思われるようになったかの学術的な考察コラム集、みたいなやつ。
そちらの装幀もとんでもない存在感でした。

レベルが違うよーーー。


ゆずりあり『見ている目』『だめだっ手』(き-44)

文学フリマに存在する”自由研究”。中でも特に大好きな「路上観察」だ。

『見ている目』は防犯啓発の張り紙類。歌舞伎の隈取り型をよく見かけますが、これも色んなものがある。そも「見ている目」っていうくくり方の包括性がうまいですわね。
表紙の女の子からインスパイアされた、ご友人による短編も収録。

『だめだっ手』も張り紙で、立ち入り禁止や危険を知らせるためこっち向きに手がグアッっと来ているやーつ。工事現場には必ずありますが、そこで思い出すのは名著『街角のオジギビト』(とりみき著)。ちゃんと言及がありました。対象範囲があちらは「お辞儀・お詫び」、こちらは「(行動抑止の)手」、別物なんです。
おわかり?
こういう、事物への興味のもちよう、おわかりかしら・・・?

10年弱という撮影期間が示唆されつつも、50ページ程度にまとめてくれている。
しかしこのぶんだとまだまだまだ、撮りつづけている「カテゴリ」がありそうだ。

街を、町を、路上を見る目に、こんなアンテナをきらめかせているひとがいる。
四六時中。
それはうれしいこと。

もうひとつ『向かい獅子』というのもあったのに、ケチってしまった…。お祭りでお金をケチるものではないよ。
(どちらも2023年5月刊)


リタ・アレス『うつくしい街 特集ジョージア・トビリシ』(く-29 地下鉄ペチカ)

うつくしい本

旧グルジア、現ジョージアの首都トビリシの写真が大判で楽しめ、ちょっとした観光ガイド文もついてます。

高台の「ナリカラ要塞」から見た景色は、赤屋根の綺麗な街並みと、やたらコンテンポラリーな橋(トビリシは川が走っている)、銀の円筒型な建物、ドーム屋根の教会、その向こうには土そのままの山肌・・・と、
歴史と開発が入り混じってオモテに出たままの姿が面白い。

街の看板はジョージア語と英語の併記が多くって、このジョージア語という未知の存在も気になるー。
既刊はロシアの地下鉄メインなサークルさんで、その目線での地下鉄風景写真も見てみたくなった。

ちなみに「劇団のの」のほかのメンバーも買ってました。

(2023年5月刊)


AI法廷の模擬裁判

ChatGPTを、人類に貢献する使いかたで使っているかたたち!

なんと東京大学にて、五月祭という催しで、ChatGPTを裁判官役にして模擬裁判をおこなったとのこと。
うちのChatGPT本をご購入いただき、名刺をいただきました。
(自分は離席しててすみません…)

内容としては、女性Aが元交際相手の男性Bにつきまとわれ、現在の交際相手である男性Cに相談。
結果、を殺してしまった。
は殺人罪に問われるが、
ここで、
女性は殺人を依頼した罪となるだろうか? という部分が争点。


実際の様子がYouTubeで生配信されたとのこと。

NHKの取材。

ChatGPTへのプロンプト(指令)の具体的な内容。
こう入力すると、こう動いた。ということが情報公開されています。

すごいなー。

こういうことから完全に背を向けたのがわたしの本です。



おわりに

つくづく偏った購入本になりました。
もっと、小説です!ど真ん中!フィクション系?も見ていかないとあきませんね。
未知の領域に身を投げ出していくこと。
今あるものだけではない、空想にも投げ出していくこと。

あとストリップ関係も回りそこねてしまった。


ストリップを今後ともよろしくお願いいたします。



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