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「脱 監督ガチャ」ができるクラブ できないクラブ

J2ジェフ千葉がついに監督を解任した。

先々週我が軍(アルビレックス新潟)が4ー1で勝利した相手がまさにジェフ千葉だった。

2015年に前田社長が就任し、2016年からエスナイデル監督がクラブを率いていたわけで経営では4年目、監督の指揮は3年目だ。

一方の新潟。

散々なシーズン2018年。
J2に降格してきた降格組なのにJ2で全く勝てない。
あまりにも勝てず、何も生み出すことができず監督はもちろんのこと、社長・強化部長・取締役がシーズン中に変わった。

はっきり言って全とっかえだ。

蓄積のあるクラブと「全ガチャ」をしたクラブ。

これだけ蓄積があっても「社長ガチャ+監督ガチャ」をしたアルビレックスにジェフ千葉は惨敗してしまった。

問題は監督ではなく、監督を選ぶ人ではないか

というわけでジェフ千葉はエスナイデル監督を解任し、ヘッドコーチの江尻氏を監督に昇格させることにしたのであります。

ではそれで問題が解決するのかというと。。。。

残念ながら僕にはそうは思えない。

ジェフで「当たった監督」と言うと2006年まで率いていたオシム監督まで遡る必要がある。

誤解を恐れずに言えば、その間ジェフ千葉は監督を外し続けてきた。

これはジェフだけの話ではなく、「当たりの監督」を連れてくる能力があるクラブの方が少ないのではないだろうか?

Jリーグクラブが監督を連れてくる3種類の方法

Jクラブが監督を連れてくる方法は3つある。

<リユース式>
1 ミシャ式  (広島、浦和、札幌が採用)
2 風間革命軍  (川崎、名古屋が採用)
3 定期的に実績あり監督(クルピ、ネルシーニョ)を連れてくる (セレッソ、柏が止むに止まれず採用)

<監督ガチャ>
3 その他 (多くのクラブが採用しているが再現性に乏しい)
4 OB監督路線 (新潟、G大阪、磐田、今回のジェフなど多くのクラブが採用し結構な確率で・・・)

<それ以外>
5 レジェンド監督 (岡田監督路線) (金のあるクラブが採用 今は神戸が採用中)
6 スピリットオブジーコ (鹿島が採用)

実は多くのクラブが実質的には監督ガチャをやっている状態だ。

OB監督はあまり監督として成果を出した実績がないケースがほとんどで、実質的には「監督ガチャ」と言える。

成功するにはリユース戦略をとるのが一番低リスクだ。オリジナリティを必要としない。そこに金さえかければいいのだ。

リユース型しか成功しない理由 普通の会社の経営者では監督を評価できないのではないか

リユース型しか成功していない理由はなんだろうか?

それは「サッカー監督を選ぶ」ということがとても難しい仕事だからだろう。

自分のクラブの立ち位置、Jリーグの立ち位置、世界のサッカーの動向と行く末。この辺をいろいろ天秤にかけながら「どんな監督をとるべきか」が決まる。

そしてその前に「自分のクラブはどのように成長していくのか」という前提となる経営戦略がないと、採用すべき監督(経営戦術)は決まらない。

電車の会社や鉄の会社から来るちょっと偉い人は果たしてハーフスペースの使い方やエントレリアネス(ライン間の動き)とかコントロールオリエンタードとか一回でも考えたことがあるだろうか?

いや、わかったからといってすごいわけではないし、分からなきゃいけないのかというとそうでもない。

でも「つなぐサッカー」とか「ハイラインのサッカー」とか「名波監督だから」とかで評価するのは違うと思う。

これ、科学と擬似科学ぐらい違うのではないだろうか?

花粉を分解して水になるマスクはインチキだし、水を吹きかけただけで野菜から農薬が取れる液体もインチキだ。

こんなもの、科学をちょっと勉強すればわかるんだけど、残念ながら一流メーカーが「マイナスイオン」とか「プラズマクラスター」とかを売ってしまうので理解が難しくなってくる。

監督選びはなぜ難しいのか 名監督は事後評価で決まる

監督の選び方が難しい理由。

それは何と言っても監督業は超高度な専門職であるにもかかわらず、経営側に監督業の理解者が圧倒的に少ないことが原因だ。

例えばアルビレックス新潟を事実上運営しているNSGグループという企業体は母体は学校法人や医療法人・社会福祉法人だ。

人と人が触れ合う場をコーディネートする能力は高いかもしれないけど、S級ライセンスを保有する監督を評価する能力は別に高くないはず。

オリジナル10と呼ばれるJリーグがスタートした時のクラブは「車メーカー」や「インフラ企業」や「重厚長大型産業」が母体になっていることが多い。

おそらくプロサッカークラブの監督を選ぶことが得意な経営者はいないのではないだろうか?


アルビレックスの例で考えてみると、アルビレックスは社長がGMを兼ねるという形態をとっている。そのため、監督の選定は社長の選任事項になりがちだ。

おそらく、ここに課題がある。

例えば名古屋グランパスが小倉氏をGM兼任監督に決定した時も社長の鶴の一声で決まったという報道が出ていた。

多くの苦労をしてきたであろう経営者は監督の人柄を見抜く力は強いかもしれない。

しかし残念ながら監督業は超専門職であって、人柄最優先では上手く回らないはずだ。

圧倒的な選手からの人望でチームをまとめる監督はもちろんいる。しかし、選手からは嫌われてる名監督もかなりいる。後になって「誰々監督には感謝している」と言われるパターンだ。

特に弱小クラブの場合はエキセントリックな監督や選手に自己犠牲心を強いる監督が成功を収めるパターンもある。

監督業はアーティストではないか

通常のマネジメントで監督選びが難しい理由。

それは監督業がアーティストだからだと思う。

優れたアーティストを連れてくるには2つの方法がある。1つはお金をかけて実績のあるアーティストを連れてくる方法(リユース戦略)。もう一つは目利きにお金をかけて「これから来るであろう未来のアーティストを連れてくる方法」だ。

どちらの方法も取れないと「監督ガチャ」になってしまう。

アーティスト発掘システムのような力がないと脱ガチャは不可能なのだ。

祖母外さんがオシム監督を連れてきたり、現山口監督の霜田さんがハリルホジッチ監督を連れてきたのがまさに「目利き」の仕事。

監督選びは難しい。


脱 監督ガチャ ができているかどうか

弱小クラブが脱監督ガチャができているかどうか。

それはアーティスト発掘システムを持っているかどうかで判断できる。

リユース戦略は「成功した監督」を採用するわけだから当然市場価値が高い。

しかしそちらの路線にいけないのであれば「まだ成功していない監督」と契約せざるを得ない。

その目利きを持っているかどうか。

それが脱監督ガチャの鍵と言える。


逆に、その目利きがないのであれば。

監督には割高なお金を払ってでもリユース戦略をとるのが賢いと思う。

監督は「チームに価値をもたらす人物」であり、最も投資対効果が分かれる対象だからだ。ここにお金をつぎ込むクラブが賢いクラブなのだと個人的には思う。

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