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繊維製造工業マーケティングのすすめ。3

先に言います。もちろん技術は大切ですよ。でもそれだけじゃダメなんです。後半で説明します。

『繊維製造工業マーケティングのすすめ』というタイトルで今月は2本書きましたがご活用いただけているでしょうか?
どうも繊維製造工業側からのリアクションがイマイチなのですが、今までこのような情報への投資がされない歴史があるのでなんとなく想像してました。

そもそもこう言った媒体が業界体質に合ってない可能性もありますが、無駄な設備投資や自己欲求を満たす外車や飲み会に出す金額を少し変えるだけで有効な商売の活路があると思うので、使うお金に対する考え方を少しだけ「市場・マーケット」に向けてみるのもいいと思います。
「やってるよ!」と言うお叱りを受けそうですが、本当にそうですか?
WEBサイト作る経費が10万かかるって言われて、「それは高いからやめておこう」ってなってないですか?大丈夫ですか?
メルセデスの車検代より安いですよ、ご存知ですか?
あなたの顧客はどこに向けて何を売っているか本当に理解していますか?
あなたの会社はその顧客に向けて何を提供すべきか本当に理解していますか?

技術を持っているだけのウェイト商売は時代遅れ?

さて、僕がどうして繊維製造工業にもマーケティングが必要と主張しているかと言うと、今までのやり方が既に通用しない構造になってしまっているという事が理由の一つにあるからです。従来(と言っても10年前くらいまで)ファッション業界の川上や川中の企業は、川下への技術提案をする事でその技術が採用され商売として成立していました。下図参照。


しかしご存知の通り、最近は僕らのような中間OEMメーカーや大手商社OEM/ODMの台頭で『完パケ提案』が通例となり、川下アパレルメーカーに対しての提案は今や『工業技術のスポット提案』では響きにくくなっています。

「そうや、お前らのせいやないか!」と怒りを向けられそうですが、実はOEM/ODMメーカーがいたからアパレルメーカーとの商売が繋がってたという可能性はないでしょうか。
直近のアパレルメーカーとの商談を思い返してみてください。
染色工場が特殊加工を開発してアパレルメーカーへ提案しても、テキスタイルとしてどのような仕上がりになるのか想像するのは困難です。準じて、編み立て工場が自社しかできない編み組織ができると言っても、その編み地がどのようなアイテムに適しているかなどのイメージを明確に持てるデザイナーも少なくなっています。ましてや糸の見本帳だけで商売を川下から直接得ることは、よっぽど履歴に頼った商売以外は成立しません。(こちらの課題は別途企画者デザイナー向けに記事を書いています note #丸編み生地製造の勉強 )

洋服になる一つの要素でしかない各工場のそれぞれの技術を誇示したところで、「それらをまとめていくらで売れるの?」という壁にぶち当たります。
技術が高いから高単価なのは理解していますが、それがその顧客の市場にとってその技術と単価が適正かどうかは顧客側が決めます。なのでバランスをとってパッケージングできるOEM/ODMメーカーが重宝されるのです。

もちろん自社の技術開発や研鑽は必須です。
これは技術自体を疎かにして良いと言うことを言っているのではありません。冒頭のイラストと矛盾するようですが、新規顧客獲得のために合同展出展や飛び込み営業をしても、提供クオリティが他社と容易に比較されやすい技術販売はその根幹である技術が低ければ顧客が離れていくのは当然です。
基本はクオリティが高い前提で、次の手を打てているか?ということです。
自社の技術を磨きつつ、最大限に活かしながら、最終製品まで連想できるようなパッケージの編集能力を問われています。
また、生地メーカーや縫製工場の中には中間OEM/ODMメーカーのように自らOEM/ODM提案ができるように協業して商品企画し、アパレルメーカーへ提案している企業もあります。中間マージンをカットしてコスト面で有利になる分いくらか商機は増えたと思いますが、各社がこの方法に乗り出して、今や業者間での消耗戦で経営体力は疲弊しだしています。

現状を打開するために『根性論営業』になっていないか?

トレンドに寄せた技術を盛り込んだ似たり寄ったりのODM企画提案によって引き起こされた商品の同質化はブランド力を低下させてしまい、消費者が離れていき業界全体が下降しているという悪循環が生まれています。これは採択するブランド側にも問題がありますし、効率を考えすぎたOEM/ODMメーカーの功罪でもあり、まとめると控え目に言って斜陽産業であることに間違いはないです。

売り先のパイが減少しているのに、根性で商売を取る動きをしている業者をよく見かけます。
技術に固執した提案要素を模索することばかりしていたり、値段を削る事で他社よりコストメリットがあることを打ち出す提案に頼っていたり、とにかく提案件数を増やして「数うちゃ当たる」的な営業になっていないでしょうか?
これは瞬間的に売り上げをあげたがる製造業経営者の思考がモロに反映されている現象です。
ですが、急ごしらえのメッキはすぐに剥がれます。

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