「オンラインカジノで使った」という暗愚
私は堅実な性格だ。というよりも単なるケチなので、人生においてギャンブルの類はほとんどやったことがないし、まったく興味がない。「真面目一本槍だった人がギャンブルで身を持ち崩す」という話はゴロゴロしているだけに、「君子危うきに近寄らず」でやってきた。
山口県阿武町の給付金誤送金問題で、4630万円の返還を拒んでいた男が逮捕された。「電子計算機使用詐欺」の疑いだという。
それにしても、罪に問われずに逃げ切れると思ったのだろうろか。阿武町側に実名まで公表されて、実質的な“全国指名手配”状態になっていた。「たかが4600万円」のために、汚名は一生ついて回ることになる。
「オンラインカジノで使った」という容疑者の供述を各社が伝えている。警察の発表なのだろう。
オンラインカジノか。まがりなりにもインターネットやスマホに毎日接続する生活を20年以上続けてきた私だが、どこでどうやれば参加できるのか、想像すらできない。きっと広告などは出ているのだろうが、アタマに残らないということは、存在していないことと同じだ。
ギャンブルには“期待値”というものがある。ざっくり理解しているところでは、投下された資金のうち払い戻しに充てられるものの割合だ。競馬などの公営ギャンブルはこれが75%くらいになっている一方、宝くじは約45%。あとは胴元の取り分や売店のおばちゃんの給料だったりするわけで、つまり「ギャンブルは必ず負けるようにできている」のだ。
それでも公営ギャンブルや宝くじなら、まだいい。あからさまな不正が起きないための措置はしっかりされていることが期待できるし、主催者側が逃げ出してしまうこともない。
しかし、どこで誰が運営しているのかも定かではないオンラインカジノ。そこそこ払い戻しがあるから広まっているのだろうが、本当に公平に運営されているのか、期待値は公表されているのか。中には期待値がゼロ=完全な詐欺もあるではないのか。4630万円の着服よりもこちらのほうがよっぽど割がいい犯罪だ(あくまでも可能性の話)。
息子に「周囲にオンラインカジノやっている人なんているか?」と聞いてみたが、やはりまったく知らないという。
もしかすると容疑者は金をすでに別の場所に移動したうえで、「オンラインカジノで使った」と隠蔽しているのか。しかしそんなものは捜査ですぐにバレることだし、それを使用すれば詐欺罪以外に民事で返還を請求される。日本の警察はこの容疑者よりも確実に優秀だ。
結局のところ「通帳に記載された4630万円の数字を目のあたりにして、反射的にトンズラした」「オンラインカジノでさらに増やそうとした」という短絡的でアホらしいトコロが真相だったのかもしれない。
容疑者の絶望的な愚かさに、こちらまで暗然とした気分にさせられる。
(22/5/19)
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