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Y染色体ハプログループ・語族・人種第3章『C系統 北方遊牧民と太平洋先住民』

 Y染色体ハプログループは男系遺伝子でY染色体にあるので男性にしかなく男性に受け継がれる遺伝子です。
 場合にもよりけりですが言語系統、つまり語族の分布とある程度の一致が見られるため合わせて語ります。


ハプログループC


 C(-M130)系統は、約10万年前にA1b2(B2)からBとCTに分岐→CTから北東アフリカで7万年前にCFが誕生→CとFに分かれるという形で誕生したグループで、人類が出アフリカを果たした直後の西南アジアで誕生し人類の移動に合わせて各所に散らばっていったと考えられ、非常に広く分布し北アジア、オセアニア、北米の先住民の間で特に多く見られます。

 変異していないC*(基型)はヨーロッパ進出以前のオーストラリアの先住民(アボリジニ)の間で低頻度(最大2.7%)に存在していたことが推定され、インド亜大陸、スリランカ、東南アジア、そしてスペインのカタルーニャにて数例の報告があり、Cの拡大に合わせて共に拡散したことがわかる。

C1a1

 5万年前、CはC1(C-F3393)とC2に分化、C1は西アジアで誕生したと推定され、そこから生まれたC1a(C-CTS11043)の中でもC1a1(C-M8)は現在の日本で5%前後見られる系統で現在でも一定数存在し特に沖縄と四国では1割近く確認され、おそらく縄文前の旧石器時代の日本の系統であると推定される。

沖縄の港川人の復元図

C1a2

 C1a2(C-V20)はオーリニャック文化という4~3万年前頃のヨーロッパの文化の人骨から多く発見されていて、ヨーロッパ最古のホモ・サピエンスの系統であるものの現在ではC1a2aがヨーロッパで、C1a2bが北アフリカで非常に稀に検出される程度になっている。

オーリニャック文化

C1b1

 一方、C1から出たもう一つのC1b(C-F1370)の基型はロシアのヨーロッパ部分のKostyonki–Borshchyovo遺跡から発見されていて、そこから出たC1b1は各所に非常に稀に見られる系統で、C1b1a1aは南アジア、中央アジア、西アジア、C1b1a1bはアラビア、C1b1a2は中国南部、ボルネオ、フィリピンのアエタ(先住民)、マレーシア、C1b1bはブルネイのドゥスン族にそれぞれ数例確認された。

アエタ

C1b2

 C1b2(C-B477)ではC1b2a(C-M28)はパプア内陸の山岳部(ラニ族・ダニ族)で10割から9割、クック諸島で8割、サモアで7割、タヒチ、スンバで6割、マオリで4割、トンガやフツナで3割、モルッカ、フィジー、沿岸のパプア人、フローレス、ツバルなどで2割程度とメラネシア、小スンダ諸島、ポリネシア、メラネシアで広く観察され、一方でC1b2b(C-M347)はオーストラリア先住民で6~7割程度の高頻度で観察され、オセアニアの先住民を特徴付ける系統となっている。

アボリジニ

C2

 C2(C-M217)、旧称C3はアルタイ諸語としてまとめられるツングース語族、モンゴル語族、テュルク語族の三つの北アジア系の語族の話者に多く、他にも東シベリアの小さなユカギール語族、チュクチ・カムチャッカ語族、アムール語族、さらに北アメリカで大きな勢力となっているナ・デネ語族にも比較的多い。

C2分布

 ツングース系ではオロチョンで6~9割、エヴェンで1~7割、エヴェンキで4~7割、ウリチで7割、満州で3割など、モンゴル系ではブリヤートで6~8割、モンゴルで5割、ハザーラやダウールで4割、テュルク系ではカザフで4~7割、ウズベクで4割、キルギスで2割など、シベリアではニヴフで4割、コリヤークやユカギールで3割など、北米ではシャイアンやアパッチで15%前後など、その他、東アジア圏でも漢民族で5%~20%、ベトナムで4~12%、朝鮮で6~26%、そして日本では特に西日本で5~10%ほど見られる。

モンゴル人
カザフ人
シャイアン族


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