探索方法

【07:裸玉の探し方】( ˘ω˘ )っ🍩 19.12.13.

他の人はどのような裸玉の探索方法を採っているのかは知らないけれども、自分の場合は説明するのがバカらしくなるほど単純だ。探索ソフトは脊尾詰、探索記録はExcelを用いて行う。ルーティンは下記の通り、ひねりも何もないただの一人ローラー作戦だ。

①:直感で思いついた持駒で探索しまくる
②:脊尾詰が導いた詰みの手順数が10未満になったら、周囲を探索する
③:望み薄になれば別の領域を探索する
④:①に戻る

探索方法

これは2五玉裸玉の探索ルーティンの記録の一部である。左7列は持駒の組合せを表し、そこから順に脊尾詰が解を導くまでにかかったおおよその時間(m=分)、詰みの手順数、詰みの手数範囲、詳細手順という感じで並んでいる。

全くキズのない完全作の場合は手順数が1になるはずだが、そんなことは探索を始めてから一度も見たことが無い。表中の黄色(上側)で示している飛飛金4歩歩は確かに手順数は1だけれど、ここで喜ぶのは余りにも早い。使用するメモリの量を増やして再び探索してみたら手順数が3に増えた。その際、3手順の手数がバラバラとなったことで完全作の可能性は潰えた。裸玉探索においてこんなことはザラで、手順数が1であること自体にはまだ何の意味もない。

今までの経験からすると、完全作の可能性があるのは手順数が5以下、かつ手数範囲が単一(最悪変同の余詰2手長くらいまで)になった場合だ。さらに言えば、作意手順以外が単一駒非限定と変同で構成されていると完全作の公算はとても高くなる。飛飛金3桂桂(表中の黄色下側)は手順数2、手数範囲が単一になったものの残念ながら9手目に余詰があるので完全作ではなかった・・・と、いつもはこんな風に探索を行っている。

ちなみに、1五玉裸玉を発見した際は手順数が3、5九玉裸玉の場合は5もあった。だから、手順数が多いからすぐにダメだと判断してしまうと完全作を見逃してしまう危険性がある。微力ながら、最後は人間の目がモノを言うのだ。

手順の見極めも大事だが、自分が最も裸玉探索で肝心だと思っているのがルーティン①の直感だ。たまに寝てる時の夢の中で出てきた組合せを試すこともあるが、ほとんどは直感で決めている。現に、1五玉裸玉も直感だけで掘り当てた。実のところ、たった3回の組合せを試しただけで発見したので上掲のようなリストは(1五玉に関しては)作成していない。余りに呆気なく見つかったため、既に誰かが発見していて単に発表していないだけなのだろうと思ったほどだ。

こういうことがあったから、コンピュータの処理速度が不十分な環境下での裸玉探索は今のところ勘と運に頼るしかないな、と感じている。もし、一般人がスパコンや量子コンピュータなどの処理速度を扱える時代が到来すれば、裸玉の解明はもっと加速するし、天王山裸玉の有無も簡単に分かるだろう。

ところで、裸玉は手順に人の手を加えることができないという面白い特性がある。下図のように好手・好手順・趣向の3種で詰将棋を分類すると、裸玉はエリア④に位置する。好手・好手順は必ずしも望めず(✕)、唯一初形趣向だけが該当する(〇)。

キャロル表+

一般に美しい詰将棋として取り扱われ、また世の中で評価されている作品は好手を含む緑色のエリア①②⑤⑥のものだけだ。なので、これらの詰将棋に慣れた常人にはエリア④の作品は異物に見えるし、「こんなのは詰将棋ではない」と考える人さえいる。人は異物を好まない生き物だから、自分とは異なる価値基準を持った人や作品に対しては目を背ける。当たり前の反応は詰将棋の世界においても同じことだ。

だが、裸玉も価値基準を変えれば面白く見えてくる。「本当にあるのか?それともないのか?」という未知に対する憧憬、好奇心は探索のモチベーションとなるもののそこには何の価値もない。好手も好手順も望めない代わりに、裸玉は存在すること自体に高い価値が見いだされる。その理由は、詰将棋400年余の歴史で発見された完全作裸玉はようやく40に届こうかというほど極少だからだ。それに、まだ発見されていない玉の配置マス目も数多く残されている。

常人は手順中に好手を含めるべきという創作上の暗黙の了解みたいなものに叛逆する行為を嫌うのかもしれない。その価値基準で裸玉を測るとほとんどが凡作以下の評価になってしまう。このように凡作と見るか、違った角度から見て価値ある作品と見るかは個人個人に委ねられている。だから、2つの見方は「どちらが正しいか?」ではなく「どちらも正しい」のだ。

しかし、自分にとっての当たり前の見方を変えてみるといつもとは違った光景が見えてくる。裸玉は詰将棋の常識から外れた存在であり、それを面白がっている酔狂(はる筆線屋)が詰将棋界の草葉の陰から見守っている、というただそれだけの話である ( 'ω' ).。oO(🍩食べたい


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