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求人広告のボディコピー vol.1

毎週月曜日に求人広告制作者に向けて書いている…という触れ込みの連載だったはずが、ここ数回はターゲット広めで書いていました。なので今回からしばらくはグッと絞り込んでみます。

求人広告のコピーライターに向けた技術的な話

を何回かにわけてしようとおもいます。

ぼくは前職の求人サイト運営企業で制作部門の責任者を任されていました。できあがった組織のザブトンに座ったのではなく、部門立ち上げから。会社自体がリクルートの代理店からスピンアウトして生まれたベンチャーだったので、ほぼ何もない状態に近かったんですね。

当然、人もいないし、ノウハウもない。掲載規定すらありません。

ほぼ未経験者しかいない中で、なんとか一人前の求人広告コピーが書けるメンバーを育てる。これはなかなかヒリヒリした経験でした。だって毎月アホみたいに営業マンが増えていくんですもの。

当時はいまのように広告制作の手引き本も少なくて、鈴木康之さんの『名作コピー読本』をベースに、求人広告のエッセンスを盛り込みつつ、手探りでメソッドを作るしかありませんでした。

そうやって完成した「教え」は、意外なことに普遍的な内容がほとんど。つまり、いまでも通用するんじゃないかな、と思ったんですね。

リクナビやらdodaといった求人サイトの文案を見ると、少なくともまだニーズはありそう。実際にいくつかの企業から求人広告に関する講習の依頼を受けて、それを強く感じました。

また、求人広告制作に絞ったメソッドがテキストでまとまっているものの存在も現時点では確認できず…リクルートの渡邉嘉子さんが執筆された『人も企業も動かす求人広告パワー最前線』というのが一冊あっただけかなと。

そんな感じであんまり求人広告制作者に追い風が吹いてなさそうなので、せっかくだからこの場で文字に残しておこうというのが企画の主旨です。

しかしなぜ、ある程度のマーケットはあるのにこの手の本が出版されないんでしょうね。売れないからか?人事や採用担当は知っておいたほうが良いと思うんですけど。まあいいや。

それでは、さっそく。第一回目は「求人広告のボディコピー」です。

求人の場合、キャッチ<ボディ

えっ?いきなりボディコピー?キャッチからじゃないの?

そう思った方はとてもまともな感覚の持ち主です。広告といえばキャッチコピーがいちばん花形と考えるのは当たり前。だったらそっちから…という意見に異を唱えるつもりはありません。

しかし、求人広告の場合、より大切なのはボディコピーのほうです。

なぜなら一般の広告と違って「インパクトのあるツカミ」で「一瞬でも認識してもらう」ことができれば御の字、ではないから。むしろインパクトはいらない。それよりも募集している企業や事業、仕事内容について興味関心を持ってもらい、いくばくかの理解をしてもらうことが求められるのです。

それには10文字~30文字ぐらいのキャッチコピーでは足りません。

いや、中には糸井重里さんのように『サラリーマン、という職業はありません。』といちどきに募集企業への興味関心を持たせるキャッチをこさえる天才もいるかもしれません。

しかし、残念ながらというか当然というか、いまこのnoteを読んでいるあなたも、書いているわたしも、ごく普通の一般ピープルなはず。だとしたら天才のマネはしないほうがいいでしょう。

と、いうことでボディコピーを大事にしましょう。

ボディコピーは求職者への手紙

はじめに考え方を書いておきます。

求人広告のボディコピーは、求職者への手紙と思って書きましょう。手紙である以上、読み手がいます。しかも、相手のことをかなり高い解像度で理解しているはずです。いや、理解は言いすぎかな。想像のほうが正しいかもしれません。とにかく、相手に対する“想い”がある。

それは「私たちの仲間になりませんか?」という想い。

で、あるからこそ、手紙の相手のことをしっかり想像し、ひとりに絞り込むこと。そりゃそうでしょう、たくさんの人に向けて書くラブレターってありますか?およそほとんどの手紙はたったひとりに向けて、想いを伝えるために書くものです。時候の挨拶で終わるのは葉書です。

この「相手を絞り込み想像する」と「自分の想いを伝える」をまず最初にやる。そして次にやるべきことは相手にとっての利益を考える、です。

ただ一方的に自分の想いだけを書き連ねてある手紙を想像してみてください。暑苦しい、というかちょっと恐い?情念のようなものを感じてしまい、ちょっとその先の展開が考えられなくなりかねませんよね。

だから、自分の想いをより相手に伝わりやすくするためにも、相手の立場で何が利益なのかを考える。これがボディコピーの核となるのです。

メリットとベネフィットの違い

よく新人に「ターゲットにとっての利益を考えてみよう」と投げかけると、たいていこんな答えが返ってきます。

「未経験歓迎」
「地下鉄駅からダイレクトイン」
「勤務時間が選べる」

うん、それはそう。それはそうなんだけど、ぜんぶメリットでしかないですよね。ターゲットにとっての利益、つまりベネフィットになってない。

と、いうことで口を酸っぱくして伝えていたのが、メリットとベネフィットの違いです。これは新卒で入社したメンバーに最初に教えるんですが、なぜか最後まで教え続けるテーマだったりします。

では、コホン(というほどのことはない)

メリットとは、特徴を指します。
ベネフィットとは、手にすると得られるいいことを指します。

もうちょい簡単に言い換えましょう。

メリットは、なるほどね、となります。
ベネフィットは、それはいいね!、となります。

わかりますでしょうか。もうちょい補足するとメリットは他人ごとであり、ベネフィットは自分ごとである。

「未経験歓迎」はメリット
キャリアデビューできるはベネフィット
「地下鉄駅からダイレクトイン」はメリット
雨の日でも濡れずに出勤はベネフィット
「勤務時間が選べる」
→子育てしやすい(※)はベネフィット

これがメリットをベネフィットに転化した例です。ちなみに※はターゲットによって内容が変わってきます。習い事ができるという場合もあれば親の面倒を見ることができるという場合もでてくるでしょう。いずれにしても手紙を書く相手にあわせる必要があります。

これがメリットとベネフィットの違いです。凡庸な求人広告はメリットをそのまま書いています。頭一つ抜けて求職者に届く求人広告はベネフィットを伝えています。

精読性の高さに甘えるな

媒体によって異なりますが、求人広告の場合、ボディコピーはだいたい500文字~1500文字ぐらいが標準です。ぼくが携わっていた媒体はボディコピーは450文字と決まっていました。いまはどうなんでしょうね、特に法律もルールもないのでリニューアルのタイミングで増えているか、それとも。

まあ、文字数は大した問題ではありません。なにせ求人広告は広告の中でも特に精読性が高い分野です。なんといっても転職ですから、一個50円のガムの広告とはわけが違います。読み手の人生がかかってますからね。

その、精読性の高さに甘えてはいけない、と思います。

読み手に対するサービス精神を忘れないこと。誰に向けて何を伝えるのかが決まったらあとは実際に文章に落とし込むのですが、いかに表現するかは求人広告コピーライターの真骨頂であり仕事の醍醐味のひとつである、と言えるでしょう。

ここで読み手に対するサービス精神をあらわす技術をいくつか紹介します。

①一文一義…ひとつの文章にはひとつの意味しか載せない。いわずもがなです。これを心がけることで一文が短くなり、読みやすくシャープな文章になります。

②語尾でリズムを…語尾のバリエーションで緩急をつける。念押しや体言止め、倒置法などを適度に散りばめて。(←こんなふうに)文章全体をリズミカルに仕上げましょう。

③書き出しは大事…凡庸な書き出しは意地でも避けましょう。求人広告といえども、いや、求人広告だからこそ一行目は二行目を、二行目は三行目を読みたくなるものを。

④文末にこだわる…書き出し同様、求人広告だからこそ読後感の残る結びを。「お待ちしています」「ぜひご応募を」「一緒にがんばりましょう」を撲滅すべし。


1回ワンテーマでの連載を考えていたのですが、どうやらいきなり文字超過しそうです(3000字を目安にしています)。もちろんテーマによっては1回で終わることもあると思いますが、そのあたりはあんまり厳密にするとしんどくなるのでゆるく続けていきたいとおもいます。

と、いうことで、求人広告のボディコピーの書き方、もう少しお伝えしたいことがあるので次回しつこくvol.2をお送りいたします。楽しみにするような類のものではないかもしれませんが、一応、お楽しみに。


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