見出し画像

仕事場とBGMの幸せな関係

音楽が流れるオフィスって、いいですよね。サーッという空調音にパチパチ、パチッ、ターン!みたいなタイピング&エンターキーサウンドだけの会社って集中できそうで実はストレスフルな気がします。

ぼくの場合、幸いなことにほとんどの職場で音楽が流れていました。そしてそれぞれの職場ごと特徴がありました。どんなんだったか会社別に思い出してみましょう。ぼくの職歴というかプロフィール代わりにもなりますね。ならんか。

一社目:ドアーズorポリス

ぼくが最初にお世話になった目黒にある求人広告代理店。大鳥神社の近くにあった古い雑居ビルの一室が最初の仕事場です。そこに置かれた小さなCDラジカセから延々と流れるのはドアーズの『ハートに火をつけて』でした。

とにかく朝から晩までエンドレスにレイ・マンザレクのローズとオルガンが響きわたるわけです。そのうち若手女性コピーライターが半ばノイローゼ気味に「モウヤメテ!」と叫びます。すると今度はポリス『グレイテスト・ヒッツ』がヘビロテされる始末。

おかげでいまでも『Can't Stand Losing You』を聞くとリクルートや学生援護会のことを思い出します。南無。

二社目:エフエム東京

次にお世話になったのは神楽坂にあった小さな制作プロダクション。とっても家庭的で、あったかくて、やさしいおもいでしかありません。そう、思い出をわざとひらいて書きたくなるぐらいに。 

そんな、神楽坂仲通り沿いの末よしビル一階にあるデザイナー中心の会社で流れていたのが『エフエム東京』。なんともいえないローカルな雰囲気が会社にはマッチしていましたが、個人的には「?」でした。

昼に流れる井村屋の肉まんあんまんのCM(ニックとアン)とか毎日夕方にやってた『カタクリコホットライン・ゴールドラッシュ』とか、いったいどうしたらこんな野暮ったくなれるんだよ、ここは東京だぜ、と、ひとり氷室ったものです。

三社目:J-WAVE

神楽坂のやさしいプロダクションを半年で飛び出して収容されたのは業界でも有名な六本木のアウシュビッツこと、星★事務所。先輩に誘われてふらふらと金谷ホテルマンション503号室に足を踏み入れたのは11月のある夜。

そこはまさに小林製薬『サワデー ギョーカイの香り』で満ちあふれていました。BGMはそう、前職ではまったく周波数の合うことがなかった憧れの『J-WAVE』です!もうその時点で強制収容は決まったようなものです。

しかしそれから時をおかずして24時間ずっとJ-WAVEを聞き続ける生活になるとは。いまでも朝5時のSingin'Clock「オハヨゴザイマス」を耳にすると当時の「ああ、また朝か…」というどんよりした気分を思い出します。

四社目:FEN(現AFN)

アウシュビッツから逃走し、兵役を逃れた私が飛び込んだのは西池袋の居酒屋。大手チェーンの歯車にはなれない、と自覚があったからか、個人店でアルバイトをはじめます。

そのお店は絵もない花もない歌もない飾る言葉すらない典型的な居酒屋でしたが、仕込み中はガンガンにラジオを流していました。それがあなたFENだったんです。ご存知ですかFEN。いまではAFNと呼ばれてますが、いわゆる米軍放送です。

なので全編英語だし、なんなら日本では聴けないバージョンの曲が流れたり、まだ輸入されてない曲がかかったり。これで相当、洋楽鍛えられました。当時いちばんCD買ってたし。

五社目:空調音(時々営業マネジャーの怒号)

縁あって某Web求人メディア運営会社に拾ってもらったのは30歳の誕生月。質実剛健、不撓不屈、剛毅木訥を旨とする社風ということもあり「音楽などは人生の無駄也」みたいな環境でした。

その会社の親方はよく「仕事できん奴を観察しとると大体わかるわな。朝からウオークマンして出勤しとるヤツなんか典型だわな」という今ならウオハラで訴えられるような洗脳トークで場を和ませていたものです。

しかしそんな会社も上場し、順調に規模拡大するにつけ、どんどん普通の会社に脱脂していきます。社内バンド合戦みたいなことも長らく続いていたりして、ずいぶんと文化水準が上がりました。

でも極私的な見解を述べれば空調音&タイピング音、時々営業の激詰めプンプン丸サウンドの頃のほうが活きが良かったし粋だった気がします。すみません老害の戯言でした。

六社目:USEN・Sound Design for OFFICE

約13年間お世話になった前職を辞め、渋谷ベンチャーに混ぜてもらうことになりました。ここではUSENが提供するオフィスBGMが流れています。

メンタルヘルス効果とかマスキング効果とかいろいろあるみたいですが、最初はちょっぴり違和感が。しかしそれも気づけばすっかり馴染んで、音楽が流れてないオフィスにお邪魔すると逆に緊張するほどに。副作用?

定時の19時になると切れるのですが、なんか落ち着かなくなって今日も早く帰っちゃおう、という気になるので働き方改革にはガチで有効なのかもしれません。

番外編:相撲甚句

そんなぼくがもし独立してオフィスを持ったらきっとBGMには相撲甚句を流すことでしょう。いや、間違いないです。相撲甚句、めっさ癒やされます。

なんなら社名を有限会社相撲甚句にしてもいい。特に大納川憲治の名調子はかの大横綱双葉山に引けを取りません。合いの手の「あーどすこいどすこい」なんて気分がいいとつい口をついて出てしまうほど。

実はいまでもこっそりヘッドホンで聞きながら仕事しています。会社のヤングたちはまさか俺が相撲甚句聞きながらコピー書いてるとは夢にも思わないだろうよ。

いかがでしたでしょうか、職場音楽遍歴。歌は世につれ世は歌につれ、という言葉もあります。ところ変われば音楽変わる。なんでも◎通信という会社ではロッキーのテーマをBGMにして営業電話をかけさせている、とか、いないとか…会社の体質のようなものが耳から入ってきそうですね。

■ ■ ■

この駄文はナラ・レオン『Meus Sonhos Dourados』をBGMに書きました!

(おしまい)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?