身からでた誤字・誤読
かつて「株式会社ズーム」という社名を「株式社会ズーム」と誤字ったまま入稿し、雑誌に掲載してしまったことがあります。
当時はまだまだのんびりした時代。営業の努力、クライアント様のご厚情もありお咎めなしだったのですが、いま思い出しても冷や汗もののミステイクです。
そんなわたしも年を重ね、いまじゃすっかり誤字脱字発見マシーンへ。Facebookにうつつを抜かしていた頃はしょっちゅう街中や雑誌で見つけた誤字脱字をアップしていたものです。
たとえばこれとか。
どんな怪力のギャルが手にされるアイテムなんでしょう。ダンプかな?ブルかな?それとも最近メキメキと頭角を表してきたスターライト・キッドあたりか。
あるいはこれとか。
よくエンジニアやWeb界隈の技術系、あるいはコーポレート部門の人が口にする相槌に「ですです」がありますが、それのアウトドアバージョンですね。
あるいはご利用で済ます…?なバカな。
オフラインでこんなですからオンラインなんて目も当てられません。
確率とかグルーブとか活等といったミスタイプもやれやれですが、日本の音楽シーンに“テクノ”というジャンルを「確立」したのは電気ではなくYMOです。いい加減にしなさい。
まあ、Webの世界には「校正よりスピード」に重きを置く風潮がありますからね。正確性より情報発信の速さが大事なんだよ、とその昔、ネットベンチャーに転職した時に先輩社員に教えられたものです。ホントかよ、と思いましたけど。
いくら談話だからと言って一文が長すぎるし、スポード感やら思うがやら随所に香ばしい誤字が散りばめられていて、そもそも伝えたいことが頭に入ってこないですわ。
そんなわたしの誤字脱字蒐集癖はいつ芽生えたのか、というと、幼少期にまでさかのぼります。実はわたしの祖父がすでに口頭ベースで誤字、つまり誤読をやらかすプロだったのです。それからも家族や上司、あるいは同僚たちによってわたしの生活周辺には常に誤字誤読の類が潜んでいた、と言うのが今回のテーマです。
大好きだったおじいちゃん
幼少期といえば毎年夏休みの度に一ヶ月単位で放り込まれていたおじいちゃん家。末っ子の長男、しかも初めての男の孫ということでたいそう可愛がってもらいました。
そんなおじいちゃん、目に入れても痛くない孫の前で誤読はばかりません。新聞のテレビ欄を見ながらこんな技を繰り出してきます。
「こんやヒロくんの好きなマッハジーオージーオーやるよ」
「ええと、夜7時からは、ゲゲゲのオニたろうだって」
「夕方からマガジンZの再放送があるね」
他にも『待てジャイアンツ』『ハリスのしっぷう』『空手バカーヨ』など数々の傑作で英才教育を施してくれました。わたしの誤字や誤読に関するセンスはここを源流としているのです。
ダディからの影響も
一方、そんなおじいちゃんから生まれたわたしの父親もたいそうな誤読マンです。やはり血は争えないといいますか。あれこれやらかしてくれました。その一部をご紹介します。
「おい、聞いたかスピーディワンダーの新曲」
「ええなあ、エリックプランクトン」
「カラオケでは微笑みにさよならが十八番」
彼は歌う時も一癖ありまして、説明するのが難しいのですが譜割をめちゃくちゃにするんですね。例えば
わたしは ないた ことがない〜
を
わたしは ないた こっとっがなっいー
と妖怪人間ベムのようなフシで歌ったり
わたしはないたーことがないー
と長音多めで歌うなど曲の原型をことごとくなくすのが得意でした。もうぜんぜん別の唄やん、です。
ボスも誤字っていた
わたしをゴミ虫扱いして憚らなかったコピーライター事務所のボスも、実はこっそり誤字ってたんです。おいら知ってんだ。
ある年の瀬、事務所の大掃除をしていたとき。ラックの奥の方からカセットテープがたくさん出てきました。時代はすっかりCD/MDだったことからカセットを再生する装置もなく、埃をかぶっていたんですね。
その中の一つにこんなものが。
“サイモントガーファンクル”
確かにカセットレーベルにボスの字でそう、書かれていたのです。
「社長、このカセットどうしますか?」
「ああ?そんなもんいらねーよ、やるよ」
「ありがとうございます」
いつかゆすりのネタにでも、と思いながらとっておくことにしました。が、夜逃げしたことであまり意味をなさなくなり、何度目かのお引越しの際に捨てました。
居酒屋時代の同僚は
コピーライター事務所を夜逃げしたわたしは居酒屋のお兄さんとして元気いっぱいいっぱいぱーいのラオックス♪と働いていました。
そのときの同僚も音楽好きで意気投合。仕込み中にラジカセでかけるカセットテープをおたがい持ち寄る仲でした。
そんな同僚が持ってきた一本のテープには
“心の族”
と書いてありました。ぼくがオフコースはいいね、と言った翌日にこれもいいよと持ってきてくれたチューリップのベスト選曲テープのタイトルでした。
族と言えば漢字に弱い族もいる
暴走族っているじゃないですか。彼らってやたら画数の多い漢字を書いたりしますよね、スプレーで。仏恥義理とか羯徒毘璐薫'狼琉とか鏖とか。習字かよとか思うんですよねいつも。
でもですね、わたしが発見したスプレー習字はひと味違ってました。
あれは練馬区の谷原のあたりか。目白通りから谷原の交差点を超えて練馬インターにつながる陸橋の柱。四角く灰色のコンクリートでできた大きな柱にですよ
谷原R.S、今ここに消印
大泉方面からクルマで走ってきたわたしは二度見しましたね。しかし当時はまだスマホなどない時代。携帯電話も贅沢品で傾奇者しか持っていませんでした。いまなら速攻で写メってTwitterで笑いの種を提供するところです。
おそらくですが谷原(土支田だったかも)レーシングというゾッキーがいて、対立するチームにぶっちめられたんでしょう。そしてぶっちめたチームの人間が墓標として上記スプレー習字を陸橋の脚にした、と。
封印、っていいたかったんでしょうね。郵便局員かよおまえら。
最後に、最新の拾いものを
ここ数年、発作的にオムライスが食べたくなります。それもニュー新橋ビルの1階にある『むさしや』のオムライスが。創業明治十八年、バターの香りが食欲にターボをかける伝統の味。おいしくておいしくて毎回感涙するです。
そんなむさしやさんはいつも長蛇の列。もちろん笑顔で並ぶのですが並んでいる間に注文しなくちゃいけません。そのためにじっとメニューを見つめていると…
ま、ま、まさかのド○イカレー!クンタ・キンテが涙ながらに食した…という伝説でもあるのでしょうか。それにしてもなんという誤字。このナーバスでセンシティブなご時世では放送禁止間違いなしです。
あと、なんで「自家製煮込みハンバーグ!」だけ「!」がついてるんでしょうか。謎を詮索しつつ列にならぶ、というのもまた、むさしやの楽しみ方のひとつといえましょう。
と、まあ誤字や誤読をあれこれ取り上げてまいりましたが、みなさんの周りにもとんでも誤脱やうっかり誤読はころがっているはず。
昔の『宝島』のVOWじゃありませんが、こっそり拾った誤脱をどこかにコレクションできるといいなあ、と思います。
と、思います、
と書いてふと思い[宝島 VOW]で検索したらあらびっくり!どっこい生きてたよVOW!
これからはここに投稿することにしようっと!
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