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【岩手/グルメ】正しい昭和のデパート食堂〈マルカンデパート大展望大食堂〉

岩手県花巻市にある〈マルカンデパート大展望大食堂〉が、本日2016年6月7日をもって閉店してしまいます。

耐震診断で大規模修繕の必要があると判明し、それにはかなりお金がかかるので継続営業は困難という旨の発表が2016年3月7日にあり、地元である花巻を中心に閉店を惜しむ声があがっていました。

昨日6月6日に、マルカン百貨店の代表電話に電話して聞いてみましたが、「存続の話も出ているみたいだが、詳しくはわからない。明日でデパートも食堂も閉店する」という話で、存続の話は出ているけれど、まだはっきりとしたことは明言できないようでした。

地元メディアの河北新報の記事によると、運営引継ぎに名乗りをあげた空きビルのリノベーション会社が存続を検討中で、順調に進めば2月に再オープンするというのが、現時点の状況です。

河北新報2016年6月1日の記事より引用

八画文化会館では2013年5月に訪問して、2013年8月発売の本誌『八画文化会館vol.3 特集:廃墟の秘密。』の「WAITING FOR THE 終末観光」というコーナーでも紹介しましたが、改めて大食堂を訪れた際の様子を、記録として残しておきたいと思います。

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【目次】

1. 花巻の街を「銘都」にしていたのはマルカンだ
2. 「常食」としてのデパート大食堂
3. 八画文化会館3号より
4. 名物の箸で食べる10段巻きソフトクリーム
5. 閉店までの経緯をまとめると

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1. 花巻の街を「銘都」にしていたのはマルカンだ

花巻。もしもニッポンの銘都ランキングが開催されたら、断然上位に入るだろう。花巻は、終末都市の理想的な姿だった。

心に残ってしまう街というのがある。それは必ずしも、世界遺産や国宝などの伝統ある場所が残っている、最先端の集客施設がある、などのハード面だけで評価が決まるのではない。心象に残る街というべきか。

その町の一般的な観光スペックとは違うモノサシで測られる、“なんだかいい街”が全国各地に残っているのだ。そこを歩いているときには、「ここはとてもいい雰囲気の街だなぁ」というぐらいの、淡くぼんやりとした味わいなのだが、銘都は旅が終わったあとに真価を発揮する。

ふとしたときに思い出したり、意識していなのに話題にあげてしまったりする。そして銘都の価値がはっきりとわかるのは、その銘都を銘都たらしめていたものが、なくなるときだ。

▲上町商店街は花巻駅からは離れた場所にある繁華街

マルカン百貨店は、花巻市の中心市街地であり、上町商店街の中央に位置する名物デパートであった。同じ商店街にあったエセナ(旧花巻デパート)が2010年に閉鎖してからは、今にも消えそうな商店街の灯を守っていた。


▲2016年6月7日で43年の歴史に幕を下ろす〈マルカン百貨店〉


2. 「常食」としてのデパート大食堂

花巻の街は人通りもまばらで、寂しかった。しかしマルカンデパートに入るときに、中学生ぐらいの少年たちが5人ばかり、エレベーターに滑り込んできた。「混んでるかな?」「アキラいるかな?」と、友達同士でおしゃべりに夢中だ。

ドアが開く前に、大食堂のざわめきが聞こえてきて「あっ混んでる!」と言って、少年たちは食堂の入口にあるメニューの展示されているガラスケースに飛び出して行った。

メニューの前で、みんなでどれにしようかと選んでいる。注文の仕方がわからずにまごついていると、少年たちが口々に食券の買い方を教えてくれた。

自分たちの日頃のたまり場が誇らしそうであり、じつに楽しそうでもあった。


▲約580席の大展望大食堂

閉店時間ギリギリでも繁盛していた。この日が特別だったわけではなく、花巻市民の「常食」として日頃から人気のある食堂だ。

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