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家族プレーで「東京一」かつ丼

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000001958

遠い記憶呼ぶ雰囲気
西村仁美
2006-10-02 08:08

 思えば、子どもの頃、筆者の生まれた新宿の、大久保のアパートの一階は食堂のようなところだった。まだ幼なかったため、当時の記憶はおぼろげだが、茶碗蒸しのことは忘れない。できたては、ガラスの容器もアツアツで、中味も口がしびれるほどだった。可愛がってくれた店のおばちゃんと、そこの飼い犬のダックスフンドと共にいつも思い出す。

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坂本屋
撮影者:西村仁美

 「ここのかつ丼は東京一うまい!」と知り合いが教えてくれた「坂本屋」にも、なぜかそんな遠い昔の記憶を喚起する雰囲気がある。JR西荻駅の北口を背に、右手の大通りをまっすぐ青梅街道に向かって歩く。すると二つ目の信号の、十字路の左手角に白いビルがある。一階の赤いビニール屋根の店が「坂本屋」だ。家族経営でやっていて、客席は15席。

 「おじいさんが駄菓子屋で店を始めて、わたしで三代目なの。屋号の坂本屋はおふくろの名前。おふくろは川端に嫁に行ったんですけれども、跡を継ぐのがいないんで、そのまんまおやじとおふくろが“坂本屋”をやっている」

 店主の川端敏雄さん(48)はそう語る。噂のかつ丼が人気になったのは、自分の代で、途中から客の注文がくるたびに一つ一つ揚げるようになってからだそうだ。

 「料理評論家の山本益博(ますひろ)さんがある日、ふらっと店にやって来て、わたしは最初、まとめて揚げてかつを出していたんだけれど、ほかのお客さんが来たとき、ちょうど揚げた。それを見ていた山本さんがいつも揚げたてを食べさせてもらえませんか?というので、いいですよといって。それで翌々日ぐらいにそれを食べに来たかな」
 
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坂本屋のかつ丼
撮影者:西村仁美

 次の来店のとき、色紙にサインをしてもらった。山本さんは「揚げたてのかつ丼のうまいのなんの」と書いた。それで結局、毎回、揚げたてを出さざるを得なくなった、と笑う。なるほど、お店でかつ丼を注文すると、たいがい醤油味のダシにたっぷり浸された、全体的にベタッとした感じのかつが出されることが多い。だが、ここのかつは外のパン生地がカリカリっとしていて歯ごたえがある。

 川端さんによれば、「揚げたて」を出すには、家族の協力なくしてはなし得ないという。かつを揚げる川端さん、揚げたてを切って卵にとじるお連れ合い、それを即座に席に運ぶ先代のお父さん、洗いものをするお母さん、接客やレジ担当のお嬢さん--。家族三代の連携プレーあってこそのかつ丼だから、どこか昔、懐かしいものを感じるのだろうか。「東京一」に納得。

(にしむら・ひとみ=ルポライター)

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは4件。

4 ネコヤナギ 10/02 22:43
たしかに荻窪界隈では、おいしい店ですが。
東京一と言い切っちゃだめでしょう。

3 たままん 10/02 19:13
良いですね。非常においしそうです。

2 大福餅 10/02 15:21
(*^_^*)
ほんわかほわほわ。
心の中に楽しい風景が残りますね。

1 SHEN 10/02 11:51
写真からカツ丼特有のあま~い香りが漂ってくるようです。
カツ丼が食べたくなりました。
料理ってちょっとした手間を惜しまない事が大切すよね。また、その手間を支える家族の力に「ごちそうさま」と言いたいです。


「東京一」と言い切ってくれたほうが読後感は良いと思います。そもそも記者さんの「東京一おいしいカツ丼だった」との満足げな感想を否定する理由もありませんしね。おいしい料理は褒めすぎるくらいでちょうどいいんですよw

胃液が逆流しそうなまずい料理はどうだろう。ボロクソに書いたからといって少しでもおいしくなる要素は出てこないだろうし、マズかったとだけ書くだろうと思います、わたしは。