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あの5人が歌う夢なら、また信じてもいいと思えたんだ

夢って、何なんだろう。

「夢を叶える」というフレーズがひとり歩きし、「夢グループ」なんていう笑ってしまうようなテレビショッピングまで見かけるようになった。

そんなに夢って叶えなきゃいけないものなの?
普通の暮らしがあればそれでいいじゃないか。

運営しているWebマガジンの記事でも「夢や目標がなくてもいい」という話を書いた。
誰よりも「夢」をうっとおしく感じるようになってしまったのは、自分自身だった。

そんな私がもう一度、夢を信じようと思えた出来事があった。

5人組のアカペラボーカルグループ・The Gospellers(ゴスペラーズ)が、今年デビュー30周年を迎えた。

YouTubeの公式チャンネルでは30周年を記念し、過去のPVを定期的にアップしている。
にわかに話題となっているのが、スピッツの「ロビンソン」をカバーしたPVだ。

コメントを見ると「やっぱり歌が上手い」「原曲へのリスペクトを感じる」と、彼らを再評価する声が多く挙がっている。

上手いだけではない。
それ以上に、5人が心を込めて歌っているから響くのだ。

高校生の頃、ゴスペラーズは私の命綱だった。
毎日のようにCDや、カセットテープに録った(MDの時代だったのに)過去のアルバムをとっかえひっかえ聴いていた。

学校で聴こえてくるのは耳障りな喧噪、浴びせられるのは汚物のような言葉。
ゴスペラーズの5人が奏でる澄んだハーモニーが、あの頃の私にとってどれだけ救いだっただろう。

彼らへの思いは、過去記事にも綴ってある。

話を戻して、YouTubeの企画はPV公開に留まらない。

9/20~21、さらに9/27~28と、24時間限定で10周年以降の記念ライブを配信してくれるのだ。
LINEで教えてくれた妹には心底感謝している。

先週末、10周年と15周年のライブ映像を2日連続で観た。
最初のうちは映像を流しながら歌やMCだけを聴いていたのだが、両日とも途中からはライブの模様を食い入るように観ていた。

ゴスペラーズのライブを生で観たのは2回だけだ。
片方は地元の野外フェス。クレイジーケンバンドなど、複数のアーティストとの合同ライブだった。
もう片方は新曲のインストアライブ。吹き抜けの会場に、大勢の人がガラス張りの柵に貼りついていた。

ゴスペラーズのツアー、しかも周年ライブは過去に観てきたものと別物だった。
会場を埋め尽くすのは熱心なファンだけ。5人がファンのためだけに歌い上げ、踊り、ときに大真面目にふざける。
ライブ映像を観ている最中、「ずっとニコニコしていた」と夫は述べていた。

懐かしい楽曲に浸るうちに、ふと気づいた。
ゴスペラーズの歌には「夢」という歌詞が多いのだ。

どこまでも続いてく 夢追いかけられる

侍ゴスペラーズ

眠らない夢だけを信じていたい

Vol.

求め続けずにいられない 果てしない夢がある

宇宙へ ~Reach for the sky~

ゴスペラーズの楽曲といえば「永遠に」「ひとり」が代表格だが、それらの曲で売れるずっと前から、そして活動が落ち着いてからもずっと、彼らは「夢」を歌っている。
それこそ夢グループなんじゃないかというくらいに。

ライブ映像の5人は、一人ひとりがまぶしく、イキイキとしていた。

いつ聴いても変わらないファルセット。
かっこつけた、でも場を楽しませようとしてくれるウィットな口調。
奇天烈な格好で歌う流暢なアップテンポのカバー。
清らかな瞳からこぼれた涙。
弾けるような、とびきりの笑顔。

ただ若かったからではない。
彼らはいつでも「ずっと歌い続ける」という夢を見ているから輝いているのだ。

私にも夢は沢山あった。
おもちゃ屋さんになりたい。
漫画家になりたい。小説家になりたい。

実際に叶えてきた夢もある。
だけど大人になると、目の前のこと、現実、もっと切実な先のことばかり考えてしまう。
だから純度の高い夢を見るのが難しくなっていく。

夢が必ず叶う保証だってない。
かといって、叶う前から100%叶うと分かっている夢を見たいだろうか。
もしかしたら、見たいのかもしれない。そんな時代になってしまったのかもしれない。

だけど、ファンのために歌う5人を目の当たりにして分かった。

夢を追うからこそ、常に自分を高め、よき人間であろうとするのだと。
夢こそが、その人の純度を高めるのだと。

彼らのハーモニーがそれを物語っている。

ふと本屋で手に取った、鏡リュウジさんの本の一文が脳裏をよぎる。

自分のなかの高い理想や目標を、見ないふりをするのはもうやめよう。
あなたはあなたのやり方で、必ず理想を現実に変えることができる。

『迷いも君の力になる 天秤座の君へ贈る言葉』より

読んではっとした。
ああ、私は「夢」という言葉を無邪気に口にする人がうらやましかったのだ。

ひねくれた考え方の人を見かけるたびに「自分はこうなるまい」と強く誓っていたのに、私もいつの間にか現実に疲れてしまっていたのだ。悔しいけれど。

心のもやを取っ払って見る夢は、キラキラしている。
大きな星が、無数の瞬きを放つように。

私はもうすぐ、大きな夢のひとつだった「自分の本を出す」を叶えようとしている。
Kindleの自費出版でも、れっきとした自分の本だ。

これからの私が描く夢は、何だろう。
人から見た私じゃない、自分を基点に描く夢。
大義とか、名声とか権威じゃない、純粋にやりたいこと。ほしいもの。
まだすぐには浮かばないけれど、ゆっくり考えていきたい。

ひとついえるのは、ひたむきに夢を追う人は、同じ夢を見たいと思わせてくれることだ。

ずっと果てしなく 夢を見ていたい

ゴスペラーズ「言葉にすれば」


※ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。

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